運命
※
この物語はノンフィクションの可能性があり
実在の人物・団体・事件などは
一切関係ない事も、ないかもしれません。。。
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-プロローグ-
気怠い朝、月曜。
そしてまた今日から
懲役五日間の刑が執行される。
先週はどこまで仕事を終わらせたかな?
と記憶を辿りながら、りょーへーは
不機嫌にコーヒーを喉に流し込んだ。
俺はいい歳をして結婚もせずに
毎日のらりくらり。
週末の休みだけを目指して
出社するだけの生活。
それをずっと繰り返している。
恐らくこの先もずっと。
人生に意味を求める程
思想も、こだわりも
持ち合わせてはいないが
このままじゃいけない。
そんな危機感の様な感情が
胸につっかえていた。
さぁ!とにかく労働の
刑を全うしようではないか。
つべこべ考えるな。
働いて納税する事が真っ当。
かつ、この国にとって生きた証になるのだ。
俺は今日も生きている。
無理やりにでも
己を鼓舞し
玄関の扉を元気よく押し開く。
駅へと続く道沿い。
陽の光が体内に差し込む。
そして目に映るのは、、、
ユッサユッサ。
地下鉄、北巽駅に向かい
急ぎ気味に小走りで走るOLの女性。
大きな乳房が揺れている。
電車の発車時刻が迫っているのだろう。
長い黒髪を振って
目の前を通過していく。
思わず通過した彼女を振り返って見ると
タイトなスーツパンツから
お尻のラインがクッキリと浮かび上がっていた。
目を細め透視能力を発動しパンティを睨みつける。
薄い水色だ、、、多分。
決してスリムではないが、丁度いい官能的な肉付き。美しい顔立ちは痩せたら、もっと綺麗になるかと思いきや、
スタイル、胸の膨らみ、親しみを感じる可愛らしさ。
全てを統計すると現状のままがベストであろう。
憂鬱な出社前に癒しを与えてくれる。
8:10に家の前を通過した巨乳の天使。
彼女は今日急いでいた。
ならば明日からは8:05ほどに家を出れば
また会えるのではないだろうか。
朝、刑執行日、初日。
俺は生きるってそんなに悪くないなと思った。
そして「運命」みたいなものを
ガラにもなく信じてみたくなった。
-1-
土曜。懲役五日間の労働の刑という名の
お勤めを終え
晴れてシャバに解き放たれた訳なのだが
これといって予定がない。
とりあえずトレーニングジムでルーティンの
筋トレをこなしていると、友人からLINEが入った。
「アタアタしないか?」
「今ジム。終わったら向かうよ。いつものパチンコ店で。後ほど。」
インターバル中に、乱れた呼吸のまま返信した。「アタアタ」というのはスロット、
北斗の拳の新台の略。俺達が身内で勝手に
そう呼んでいるだけだが。
二十年前、社会現象にもなった神台の
リバイバルで従来からの
スロッター達を煽り続けていた。
LINEをくれた友人は中田。
「サンシャイン中田」という名前で
AV男優をしている。
学生時代からの古い仲だが
当時から強く、そして歪んだ性欲をしていた。
直近の撮影では
街でナンパした女性をホテルへ連れ込み
ニューハーフやら黒人男性やら中田達が
擬似ドラッグを摂取して乱交を行う
かなりのハードコアな作品だったようだ。
タイトルはWBC
WB(勃起)C。
今年盛り上がったプロ野球の大会のパロディだ。
性欲の果てに辿り着いた中田は
今、何を想うのだろう。
と、フッと思ったがスロットへ行くと決まると「ムシがワキダシ」
中田の心情への興味は失せていた。
さっさとメニューを終わらせるとストレッチは程々に、
プロテインドリンクを片手に自転車に跨り
パチンコ店へ立ち漕ぎしていた。
-2-
「アタぁ〜!!!」
サンシャイン中田の奇声が
二つ先の台まで聞こえてくる。
900回転ほどハマり単発を引いたオヤジが
台を殴りつけていた。
出メダルも軍資金も尽きたのか
苛立ちながら席を立つと、帰り際中田に向かって、うるせぇ!しばかれんぞコラ!
と、捨て台詞を吐いて去って行った。
それでも中田は気にも止めず
自らがケンシロウとなりきり
相変わらず奇声を発しながら台と向き合っていた。
対して、俺はまだ目ぼしい台が見つからず
ホールをウロウロと彷徨っていた。
中田は言う。
「スイカでササルネン。タブンコウセッテイ!シサもデテル!」
「コノマエはロッカクダシタ!ロッカク!」
「ソノマエはイベントビ!タブンホクトのシマ、ゼンダイ456...」
俺は思う。
大手パチンコ店が存在すると言う事は
パチンコ、パチスロはどうひっくり返っても客側が負けるギャンブルだ。
そんなに多く高設定を入れるのだろうか?
これは中田に限った話ではない。
全てのスロッター達は重度の楽観主義者である。
断言しよう。奴等の謳う設定6は
総じてほぼ設定1である。
俺は、そう簡単に運否天賦の
勝負を仕掛けない。師の伊藤カイジが
何の策略もなく勝負に挑んだ事が一度だってあったか。
俺はスペシャルな幸運を持ち合わせてはいない。
ポジティブやオカルト思考は邪念。
冷静に、慎重に良台が空くのを待ち続ける。
まさにハイエナである。
そして今月は十四万円負けている。
そして三十分が経った。
今日はやけに客が多いな。
何周もホールを彷徨うが台が空かない。
足がダルくなってきた。
パチスロライターが来店しているのも関係しているだろう。
ホールの通路が、小さなお祭りの商店街のように人が混み合う中、
俺の横を女が通り過ぎていった。
長い黒髪と、大きな乳房を揺らしながら。
その瞬間俺はスロット所では無くなっていた。
間違いない。あの子は8:10に出会った
巨乳の天使だ。
-3-
初めて天使と出会ってからは
毎朝会いたくて、俺は秒単位で
家を出る時間を調整していた。
現状、一番ベストだと言える時刻は8:08。
この時間に玄関から出ると50%くらい
の確率で彼女に会える。
もし会えなかっても悔やむ事はない。
むしろチャンスだ。
何故かと説明すると、玄関を出て
彼女の姿が見当たらない場合はその場を動かずにスマホを二分ほど触り時間を潰す。
すると、電車の時間に迫られた彼女が
三つ先の十字路から曲がってやってくる。
まるで八百屋からくすねたスイカを
「二丁」胸にしまっては
走って逃げているのかのように。
激しく乳房を揺らしながら。
その姿こそが、彼女が一番輝く時なのだ。
何故、最近になってようやく天使と出会える事になったかと言うと、俺は朝は今まで大体8:15くらいに家を出ていた。
俺がたまたま早く家を出た日と
彼女が電車の発車時刻ギリギリの時間。
それが8:10。
この日に運命は初めて交わったのだ。
たった五分で世界は変わる。
おかげで今は会社に余裕を持って到着している。ゆっくり煙草などフカしていればいいのだが二年前に禁煙してからは少しの合間の様な時間の潰し方を未だに見つけられずにいた。
-4-
巨乳の天使は喫煙所に入っていった。
煙草吸うんだ。意外だった。
俺はいつの間にか彼女の後ろを
追っていた。
しかし煙草を吸わない俺は
喫煙所前に立ち尽くしていた。
どうしよう。そもそも俺は彼女を付けてどうするつもりなんだ。
これではただのストーカーではないか。
しかし、ここは大阪随一を誇るパチンコ店。
総台数は二千台の巨大ホールだ。
一度見失うと彼女を二度と見つけられない可能性だってある。
そこで俺は
、、、意を決する。変なプライドなんかに
「運命」を途切れさせてたまるか。
俺は彼女の行く先を最後まで追う事を決意する。
喫煙所前で待つ事五分。彼女が出てくる。
少し不機嫌そうな面持ち。負けているのだろうか。
だけど胸の膨らみだけはいつも上機嫌だ。
重力に逆らいながら前に突き出している。
それだけで俺の胸はドギマギし、股間が熱くなるのを感じる。
5mほどの間隔を空けて後ろを付ける。
彼女は慣れた手付きで空き台の履歴データを確認しながら
ホールを見回っていた。
時には、ずっと後ろに張り付いてるのも怪しまれるかもしれないと
勘繰って、彼女が通るシマの一つ奥のシマへとわざと向かい
通路を早歩きで通過しては、出口付近でまた合流したりもした。
シマを四つ、五つと
小さな商店街のお祭りほどの群衆と
肩がぶつからない様に気も使いながら歩き続け
彼女の行方だけは見失うわないようにしていた。
そして彼女はコードギアスという台で立ち止まる。
人差し指を履歴ボタンに添えたまま長考する。
真剣な眼差しで液晶を見つめている。
その横顔を、俺が真剣に見つめている。
彼女はコクリと2cmほど頷くと
着席と同時に財布を開けては千円札をサンドに入れた。
一先ず尾行は成功である。
確認出来た事は二つ。
一つは彼女はコードギアスに座った。
しばらくは目を離しても見失う事はないだろう。
もう一つは彼女は今日一人でパチンコ屋に来ているという事。
喫煙所からホールを見回りシマを五つほど物色した後
コードギアスに着席する。
この間彼女は誰とも接触していない。
一度、目を離した間があったが
その時は、わざと俺が彼女が向かうシマの一つ向こうのシマへ行き
その間、俺は少し急ぎ気味で通路を通過した。
そして出口付近で遭遇する。
タイム間的に、その間に彼女が誰かと接触して
足を止めている可能性は低い。
彼女はその間も空き台の履歴データを手際よく確認しては
シマの出口から現れたのだ。
彼氏は居ない。
これは大きな有益情報である。
「あ、りょーへー。どう?良い台見つかった?」
トイレに出向いていた中田と遭遇する。
「スロットはまだ打っていない。だけどある意味今日は設定6だよ。
面白い事が起きた。外に出て休憩しよう。中田!話を聞いてくれ。」
-5-
「ゼッタイイケルヤツヤン。」
「そうそう。どうやら一人で来てるっぽくてさ。彼氏も居てなさそうで。」
「ゼッタイイケルヤツヤン。」
「Tシャツにジーンズ。スニーカー。ラフな恰好をしててさ。でもTシャツから胸の膨らみが伝わってくるのよ。」
「ゼッタイイケルヤツヤン。」
、、、ぜったいいけるやつやん??
事の成り行きを説明しているのだが、
さっきから中田の相槌は一辺倒で、
馬鹿にされているのか、それとも単に中田の語彙力が無いのかどちらなのか。
「それで、その巨乳の天使は今どこに居てるん?」と中田。
「コードギアス。見に行こうか。彼女の後ろを通り過ぎたら腕組みで合図する。
確認してみろよ。」
「コードギアス打ってるん⁉︎
、、、ゼッタイイケルヤツヤン。」
休日のシャバの太陽の光を浴び
束の間の休憩を終えると
俺達はまた、昼も夜も無い騒音鳴り響く
ホールへと吸い込まれていった。
三台並びの真ん中に彼女は座っていた。
両脇には誰もいない。
腕組みの合図をせずとも中田は、どの女が天使なのか気づいていた。
コードギアスは旬な台では無く、人気台でも無かった。
俺も打った事がない。
「中田。どうだ?良い女だろう?」
騒音の中、俺は中田の耳元に近づいて聞いてみた。
「正面から見ないとよく分からないな。
そろそろ戻らないとケンシロウが機嫌を損ねてしまう。また発展あれば教えてくれよ。」
あっさりと中田は自身が打っている北斗の拳のシマへ消えて行った。
彼女はただ、俺が仕事前に時々通りすがるだけの女。そこまで興味を持つ話でもないか。
そして、俺はまた良台求めて彷徨うハイエナに戻ったわけなのだが。。。
4シマ、5シマ。。。
コードギアス。彼女はいる。
2シマ、3シマ。。。
コードギアス。彼女はいる。
乳首で第三停止ボタンを止めようとばかりに
胸を前に突き出して
彼女はコードギアスに、、、いる。
俺は今日ホールでスロットを打つのが目的なのか?それとも運命を切り拓きたいのか⁉︎
気がつけば俺は
コードギアスに座っていた。
巨乳の天使の隣で。
-6-
今までには無い、巨乳の天使との距離感である。近くで見る顔。SEX中はどんな表情で絶頂に達する?
生で見る、おっぱいはどうなんだ?!
乳輪、乳首の色は?
血行の良い健康的な真っピンクに
違いない。
想像が暴走する。
では、匂いはどうだ?嗅ぎたい。
彼女の匂いを感じたい。
感覚という感覚をフル稼働させて君を感じたい。
俺は、大きく息を口から吐きだすと
お次は鼻から勢いよく
酸素と彼女を同時に吸い込む。
スウウゥゥ、、、
ここは騒音鳴る、パチンコ店。
多少の素行には不審がられない。
スロッターは皆、自身の打つ台に必死なのである。それは彼女だって例外ではない。
だが、、、さすがに何も匂わない。
近いと言えど、まだ彼女との距離は50cmほどある。
きつい香水は振っていないって
事だけが確認できた。
嗚呼、、、いつか君を「0」の距離で感じたい。匂いを、肌感を、弾力を
全てを感じてみたい。
その時、チラりと彼女が俺の方を向いて目があった。彼女は照れて、すぐさま目線を外す。
朝会う度に、全身を舐める様に彼女を眼に焼き付けてきたのだが、
最近は彼女と目が合う事が無くなっていた。
俺の求愛の眼差しに気づいて照れているのだ。
しかし、今確かに目が合った。
これは俺の気持ちに応えたい表れではないか?
行けよ俺!彼女は待っている!運命を今。切り開け!
「失敗した後悔より
挑戦しなかった後悔の方が大きい。」
「チャンスは過ぎた時に最後のチャンスだったと気付くのである。」
自己啓発本の5ページ目に書いてる様な
月並みな名言を心の中で復唱する。
これは朝8:10に道端で声をかけるのとは少し状況が違う。大金を賭けるパチンコ屋のホールという賭場は一種の「吊り橋効果」である。
ギャンブルと、男女間に起こる高揚感は
最高地点に達していた。
ゴクリ。無意識に生唾を飲みこんでいた。
そして、、、
「あの、すいません。
朝8:10頃、北巽駅の電車に乗って仕事に行ってますよね?ずっと見てます。」
運命が交わる。
-7-
ナンパだ。俺は今パチンコ屋でナンパをしている。声を掛けた自分に今びっくりしている。
果たして彼女からはどんな言葉が返ってくるのか。長く感じる時が経過する。長く感じる2秒。。3秒。4秒。。。
返答が無い。
ワイヤレスイヤフォンを装着しているのと、騒音で俺の一世一代のアクションに気付いていない。
もう一度声を掛ける。「すみません!」
気付かない。さらにもう一度。右手を掲げ
ジャスチャー付きで
「あのー、すいません。」
気付かない。
気付かない、、、事なんてあるか。
無視されてるのではないかと疑惑が生まれたが
俺はもう止まらない。
絶対に気付かないとおかしいだろうって距離で
体全体で彼女に訴えかけた。
「あのー。北巽駅から毎朝仕事に行ってますよね!!」
ピク。彼女の肩が動いたのを見逃さなかった。
さらにもう一度、声を張り上げる。
「あのー!すいません!」
彼女はイヤフォンを取り外すと
眉毛を八の字にしながら、遂に応えた。
「はい、、、なんですか?」
初めて聞いた彼女の肉声である。
会話はキャッチボールだ。
俺の全力投球に対して言葉を返してくれた。
印象的には少し山なりのボールではあったが。
「あの!毎朝、北巽駅から仕事に行ってますよね!いつも見てます!あの、、、綺麗な方だなって。」
八の字の眉毛。そして額にシワも寄せながら応える。
「え、、、行ってませんけど。」
思いがけない、返答であった。
「いや朝8:10頃いつもすれ違ってますよ!」
「、、、私じゃないです。」
そして、天使はそっとイヤフォンを装着し直した。
そんなバカな。。。
人違い?同一人物にしか思えない。
正面を向き直しスロットを打つ彼女を
もう一度じっくり眺めて確認する。
それにしても、、、
良い乳をしているな。
まさに「ロケ乳」である。
揉み倒したい。
その乳房に顔からダイブしたい。
「あのー!」大きな声で天使をまた呼ぶ。
露骨にだるそうな態度を示しながら天使はイヤフォンを外す。
「一人で来てるんですか?よく来るんですか?」
天使は答える。「彼氏と来てます。」
マジか!彼氏居てるのか。
喫煙所からずっと付けてたけど
君はずっと一人だったではないか。
だけど、もし屈強な彼氏が現れたらどうしよう。良い女には、喧嘩自慢か金持ちの彼氏がいるのが相場だ。
俺の予想では、天使の彼氏は
色黒のラグビー部。学生時代は仲間とベンチプレスの記録を競い合い、何の意味もなく後輩の尻を蹴りまくる。
TVで格闘技があった次の日は、弱者に技を試す。遠足のバスの席は決まって一番後ろを二席分牛耳る。
そしてお調子者の子分に芸人のモノマネをさせてバスの移動を満喫する。
スクールカースト最上位の番長。
やばい!そんな彼氏が来たらどうしよう。
奴等にしたら、彼女が男に絡まれているのは
漢気を魅せれる絶好のチャンスである。
彼女を救った夜は大層燃え上がる。
くそ!奴等の「夜の発火剤」になんかになってたまるか。溜まったもんじゃない。
俺はメダル取り出しボタンを押して
20数枚ほどのメダルを手に持つと
天使に挨拶もせずに席を立った。
だが5秒後、スマホを台に置きっぱなしの事に
気付いて引き返した。その時にチラリと彼女の方を見たが、彼女は俺の事を気にも止めずにコードギアスを打っていた。
-最終話-
いつもの様に良台を求め
彷徨うハイエナ。
何週も何週もホールを見回る。
彼女は二つの嘘をついた可能性がある。
結局彼女はコードギアスを一時間ほど打っていたが彼氏らしき人物は見当たらなかった。
彼女はずっと一人だった。
そして気がつくと彼女はいなくなっていた。
もう一つの嘘は、やはり彼女は
朝8:10の巨乳の天使なのではないだろうか。
勘違いで声を掛けてこれでは俺はただの馬鹿みたいじゃないか。
この日のスロットは負けた。
だが、それ以上の虚しさがあった。
-月曜-
気怠い朝、そしてまた今日から
懲役五日間の刑が執行される。
またスロットで負けてしまって
金欠だなとカレンダーを覗き、次の給料日までの日数を指折り数える。
8:08、玄関の扉を押し開く。
家を出て右手の方向。
十字路の方を見つめる。
約一分後、巨乳の天使が姿を現した。
コツ、コツ、コツ。
早歩きで俺の横を通り過ぎる。
いつもならおっぱいを中心に眺めるのだが
今日は、しっかりと顔を確認した。
そう、パチンコ屋の彼女とまるで一緒だ。
だけど、、、
身長が明らかに違った。
顔はまさに瓜二つなのだが
まるで別人だ。
巨乳の天使の方が背が高く、
大人びていて年齢も5つ程上だろう。
と、言う事は、パチンコ屋の彼女は全くの別人だ。他人だ。パチンコ屋でまた会う事もあるかもしれないが、もう関わる事もないだろう。
安心した。
声を掛けた日、彼女は露骨に嫌な態度を示した。さすがに痛感せざる得ない程に悪印象を与えてしまったのだ。
だけど朝8:10の巨乳の天使。
あなたと俺はまだ何も始まっていない。
つまりはリセットされたのだ。
俺達はまだ何も始まっていなくて
ここから未来で繋がって行くのだ。
憂鬱な月曜。出社前に癒しを与えてくれる
巨乳の天使よ。
次は俺があなたの癒しになりたい。
未来は自らの手で切り拓き
運命とは結果論である。
必ず迎えに行く。待ってておくれ。
あなたと、俺は
結ばれる「運命」なのだから。
終
-エピローグ-
気怠い朝、月曜。
メイクを済ませてジャケットを羽織りスーツパンツに足を通すとスマホで時間を確認した。
8:04。まただ!急がないと電車に乗り遅れる。
入社したての頃は、電車に乗りながらメイクをしていた事もあったが、私ももう今年で27才。
いつまでも、みっともない真似は出来ない。
あー男が羨ましい。朝のメイクの時間が
億劫で仕方が無い。
6cmもあるパンプスを履くと外へ出た。
幼い顔付きと、身長の低さから
昔から舐められやすい事が多くて
度々、苛立っていたが
スーツを羽織りヒールの高いパンプスを履くと
そのコンプレックスは、ほぼほぼ解消された。
だが「可愛い」から「綺麗」と言われる事の方が多くなった変化の一番の理由はやはり
豊胸手術を施してからだろう。
それからと言うもの
男共は皆、私に気に入られようとしていた。
どんなけ親身で、親切で、優しく接してくれても奴等は隙あらば私の胸を凝視していた。
バレていないとでも思っているのか?
本当に男は馬鹿ばかり。
十字路に差し掛かり、右に曲がる。
そのまま直進で駅に到着する。
はぁ。。私は十字路を曲がった所で溜息をついた。またアイツがいる。
いつも汚い作業着で、スマホを見てるフリを
しながら私を待ち伏せしている。
特に、この男は私の胸を直視してきて気持ちが悪い。
私にバレているのも分かっているでしょ。
その上で、それだけ見るのってセクハラじゃないの?
しかも、この男パチンコ屋でわざと隣の台に座って来てナンパまでしてきた。
オッサン、何才なんだよ。
私とあなたとじゃ不釣り合いでしょ。
分からないの?
気付かないフリをしていたのに、しつこく声を掛けてきた。
だけど彼氏がいるって嘘をつくと、焦って
逃げていった小心者ね。もう近寄らないでほしいわ。
美しいって罪ね。ごめんね。おじさん。
私の美貌は、ナオキ君だけの物なの。
二年前、元旦那とはセックスレスで離婚した。
あいつはSEXが下手くそで、クンニが苦手だった。結婚してからはされた事が無かった。
おそらく汚いって意識があったんだ。
結婚前は、何度かしてくれた事があったが
すぐさま発する言葉は
「もう、入れていいかな?」だった。
いいハズがない。
クンニの終わりは、私をイカす事である。
元旦那の自分よがりのガキみたいなSEXが
嫌いで堪らなかった。
あいつから学んだ事はスロットの打ち方
くらいのもんだ。
離婚してからは性欲が爆発した。
上手い男とやりたい。
いかして、いかして
頭が真っ白になるまで、良い男にいかされたい。そこで、試してみたのが女性用風俗。
「満天堂」である。
韓流のアイドルのような顔付きのナオキ君を、事前にHPで調べていたので指名した。
三つも年下の男に、いかされるのは最高な気分
だった。女の快楽のツボを知り尽くし
元旦那の100倍はSEXが上手だった。
ナオキ君のモノが欲しいと甘い声でおねだりすると、ナオキ君ももう我慢が出来ないかもしれないといつも悶えていた。
その姿も凄く可愛い。ナオキ君の膨れ上がった
アソコを見ると我慢しているのが伝わってくる。
システム上、挿入は禁止だけど、
ナオキ君は言った。
「次、来てくれた時は
俺が我慢出来ないかもしれないです。」と
ナオキ君。今週も会いに行くね。
私達が一つになるのも時間の問題。
あなたと私が結ばれる事は
決められた「運命」なのだから。
-完-
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2023年7月15日
華麗じわ夫「運命」
ありがとうございました。華麗じわ夫
Twitter、noteあります。