魔王様、レジを打つ。~皮の盾温めますか?~
故あって──吾輩は今レジ打ちのバイトをしている。
「3点で82Gになります……」
今思い出しても憤死してしまうほどに憎悪が込み上げてくるが、勇者パーティの奇襲に遭い我が魔王キャッスルは陥落した。
「袋、いりますか?」
魔王キャッスルは勇者共の豪遊の場と化し、最愛の魔物達は地下深くで強制労働させられる始末……主としてこれ程の屈辱はあるまい。
「ありがとうございましたー」
ギリギリのギリで落ち延びた吾輩は、顔を知られていないハジマリの村にある武器防具屋兼コンビニでセコセコと魔王キャッスル奪還の為のバイトに励んでいる──という訳なのだ。
「マ・オー、客来てるかー?」
この店の主である女ヒューマンことリッツァが、寝癖も直さず服もだらしなく腹を掻きながら、のそのそとやって来た。
「二人来たぞ」
「で?」
「売り上げ155G」
「すっくね!」
「最弱装備しか置いてない店なんだから仕方あるまいに……」
「だよねー♪」
足早に奥へ引っ込むヒューマンをさておき、吾輩は空いた時間で内職のポールペン組み立てをする。
(ここに来てもう二週間……そろそろ次へ進まねばな)
「自己紹介を適当に」
「魔王である」
「はいはい、マ・オーさんね。前は何やってたの?」
「魔王キャッスルの主を」
「はいはい大家さんね。で、24時間働ける?」
「……今何と?」
「ウチ、コンビニも兼ねてるから、24時間働ける人探してるんだよね」
「……善処しよう」
「はい採用ー」
今思い出しても、適当極まりない面接である。しかし働かねば食ってはいけぬ。
──ガチャ
店の裏に置いたままの棺桶がずらり。中身は我が魔王軍が誇る四天王だ。早く蘇生させてやらねば、ボディが腐ってアンデッドと化してしまおうぞ……!
「いざゆかん……! 教会へ!!」
「おー、休憩は15分だぞー」
「お、重い……!」
棺桶四つを引きずりながら、教会へ向かう。しかし皆の苦労を思えば、これしきのこと何のその……!!
「辛すぎ……もう無理……」
五分かけて村の教会へ辿り着く。息が落ち着いたところで教会の扉を開き、神父を呼ぶ。
「たのもー!」
「はいはい……」
死にかけヒューマンの老人が、よぼよぼと此方へと歩み寄るが、辿り着く前に死にそうで少し心配になる。
「……蘇生ですかのぅ?」
「うむ、金は…………」
豚さん貯金箱をひっくり返し、必死で貯めた320Gを見せる。
「では、どなたを蘇らせようかのぅ?」
「我が魔王軍が誇る、四天王が最強! 灼熱のヴァリアルを頼む!」
「……500000Gになりますのぅ」
「──!?」
──ブンブン
慌ててアホ面フェイスを元に戻す。今、とんでもない値段が出たような気がするが、やはり四天王たるものそれくらい価値が無くてはな……!!
「では、我が魔王軍が誇る、四天王が紅一点! 絶氷のフーリスを頼む!」
「……350000Gになりますのぅ」
「──!?」
──ブンブン
や、やはり320Gでは無理なのか……!
「四天王が一人、万毒のザガァル……」
「200000G」
「オーマイガッ!!」
吾輩はなんと無力な事か……!!
悲しみの涙を必死に堪えるが、これ程の無能を晒しても、誰一人として蘇らせる事が出来ぬとは……!!
「あと一つは200Gじゃ」
「あ、そいつは結構です」
棺桶に蓋をし、再び店に向かって歩き出す……魔王キャッスル奪還まで、吾輩は負けるわけにはいかぬのだ……!!
キンキンに冷えたアブソリュート中華や囓ると爆発するボムまんとか考えたけれど、書けませんでした(笑)