再会
誤字ご指摘ありがとうございます。
修正しました。
「カ、ルマ…?カルマなのか?本当に?」
信じられない、信じたいけど信じて違った時を考えると踏み出す勇気が出ない。
おそらく、陛下の中であらゆる感情が渦巻いているのだろう。
瞬きも惜しむほどにカルマ様の姿を焼き付けている瞳とは裏腹に、足は竦んで動けない様子であった。
その陛下の背後で、気を失ったままの王妃が運び出されていく。
愛を得たいと必死にあがいて、手を出してはいけないものに手を出し、その身を破滅に導いた。
王妃の身に巣食う魔を祓いはしたけど、それが彼女にどんな影響を与えるのかは彼女が目覚めない限り解りはしない。
それに、今陛下には王妃に意識を向ける余裕がないのは一目瞭然。
それらを考慮した配下の指示だろう。
そんなことを回らない頭で考えていた私の横をスッと横切り、優雅に陛下へと近づいていくカルマ様。
一歩、また一歩近づく度に、カルマ様の歩く速さが徐々に駆け足になっていく。
幾筋もの涙が流れては煌めきながら宙に舞う。
まるで、映画のワンシーンかのような光景に胸がときめく。
そして、あと少しで陛下の元へと辿り着く距離になった時、もどかしいとばかりにカルマ様は陛下の胸元へと飛び込んだ。
「…っ!」
たたらを踏みながらもしっかりカルマ様を抱き締めた陛下は、躊躇うようにカルマ様の肩に触れたのは一瞬で。
触っても消えないその肌の温もりを感じた刹那、陛下はカルマ様を覆い尽くすように掻き抱いた。
「カルマ…!」
絞り出すように囁かれた名前に答えるように、カルマ様も陛下の背に回す腕に力を込める。
抱き合ったまま離れない2人の感動の再会に、周囲は何が何だか分からないながらも涙誘われるがままに喜びを分かち合った。
が、人のラブシーンは見ていて居た堪れない。
それを先程自分たちが繰り広げていたというのは、この時の私は気付いていなかった。
うん、気付いていなくて良かった。
そんな雰囲気を察してか、お開きの声を上げる人物が1人。
「皆様、ここからは無粋というもの。また改めて場を開きます故、邪魔者は退散致しましょう」
何を隠そう、私の父であった。
「ルーベ、すまない」
「先生、面倒を掛けるのぉ」
親し気に父へ声を掛ける2人。
「何をおっしゃいます、御二方とも。水臭いですよ。
…私は、またこの役回りができて、幸せなんです」
答える父の声も涙で震えていた。