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暴かれる悪事

たくさんのブックマークやありがたい感想、ありがとうございます。

そして、更新が亀より遅く申し訳ありません(泣)

ーーー私はね、魔王の復活を望んでいるのですよ。


ーーーそのためには、強靭な器が必要なのです。

魔王の魂を囲えるほどの器がね。

その器足る資格は、莫大な魔力に耐えうる体、彼の人にも負けぬ深い闇を持つ心。

体は天恵だが、心は如何様にも操ることができる。

例えば、幼い頃から周囲から冷遇される、とか、ね。


ーーーあなたが元凶、どころの話ではなかったということですね?

カルマ様のことも、ルー様のことも。


ーーーふふふ、面白いくらいに計画通りに進みました。

あなたが現れるまでは、ね。


ーーーあなたが現れてから、彼の人の器となるべき者は徐々に闇を晴らしていきました。

あれではとても彼の人の器になどなりきれない。

これほど時間をかけて準備してきたというのに…!


ーーーでもね、ふと閃いたのです。

その闇を晴らした者が突然いなくなったら、晴らされた闇は一気に深まるのではないか、と。


「…」


はい、ご明察。

見事にあの場が映し出されています。


グッジョブ、ルビィ。


次はルー様のご尊顔とあざとかわいい仕草を記録してもらうことにしよう。

まさか、かつて喉から手が出るほど欲した念写に代わるものがこんなに近くに存在したなんて。


グッジョブ、ルー様。


心の中で尊い2人を拝む。

そして、黒い目論見を暴かれたアウレスに視線を向ける。


一同波を打ったように静まり返り、誰もがアウレスを息を呑むように凝視する。


しかし、当のアウレスは悪事が暴かれたというのに焦る様子が見られず、どこか気味の悪さを感じる。


「…確か、かつての魔王と呼ばれた者の魂は、神殿預かりであったな?」


陛下が何も感情を乗せずに、平坦な声音で告げる。

しかし、その中に言葉では表せないほど苛烈な感情を押さえ込んでいるのだろうということが察せられた。

なぜなら、膝の上に置かれた拳が白く青褪めるほど握りしめられているから。


「すぐに封印の確認を」


「御意」


陛下の側近である王宮魔術師が魔力を使って封印を確認する。


「…っ、封印は壊されてはいませんが、魂だけがありません。

…だから、気づかなかったのか…っ!」


「!」


周囲が俄に騒がしくなる。

怒号が飛び交い、いつパニックになるから分からないほど、恐怖が周囲を満たしていく。


「アウレスよ、魔王の魂をどこへやった?」


陛下の問いかけに、アウレスはニヤリと下卑た笑いを浮かべる。


「さぁ、どこでしょうね?

私がそれを口にするとでも?」


「…魂」


そう嫌味な声で告げるアウレスの声に混じって、隣からポツリと呟くルー様の声が聞こえた。


何かの記憶を辿るように考え込むルー様。


「…?ルー様?」


不思議そうにルー様を見上げる私の顔に視線を落とし、安心させるように微笑むルー様。


尊い。

あぁ、こんなときでなければルビィに記録を頼むのに!

アウレスめ!!


私の中で更にアウレスへの憎悪が膨らむ中、ルー様が審議官へと声を掛ける。


「神官長へ確認したいことがあるのだが」


「…いいでしょう。貴方も被害者のようですし」


審議官が憐れむようにルー様へ視線を移す。


「アウレス神官長。

その魂というのはこれのことか?」


ルー様が翳した掌から、ぽわっと黒いふよふよしたものが現れる。

小さいわりに禍々しいオーラを纏ったそれに、周囲だけでなく私も息を呑む。


「っ!な、なぜそれを貴様が!!

返せ!!」


初めてアウレスが焦ったようにルー様へ掴みかかろうとするが、椅子に縛り付けられているため動けず、椅子が凄まじい軋みを上げる。


「なぜ、と言われてもな。

ある日こちらを食おうと襲い掛かってきたから、使役してこれの核としたのだが。

まさか、魔王の魂だったとは。」


これ、とはルビィのことである。

え、ちょっと待って。

こんなに可愛いルビィが魔王?


「なんだと!?魔王を使役した!?何てことを!!」


騒ぎ出すアウレスの声を聞きながら、愕然とする私の足元に、ルビィがすり寄り、こちらを窺うようにきゅるんとした瞳で見上げてくる。


「っ!」


か、かわいい。

うちの子かわいい。

最初はルー様に襲い掛かったってことだけれど、使役されてれば今後そんな馬鹿なことはできないでしょうし、この際、魔王でもルー様に危害を加えなければOKよ。

使役されたってことは、魔王でもルー様には敵わないから、服従したってことよね?

何だかいろいろ引っ掛かることはあるけど、それを気にしてたら深みに嵌まって出てこれなくなるわね。

…うん、もう何も考えない。


ルビィを抱き上げ、現実逃避するように頬擦りしていると、横から伸びてきた手にルビィを拐われた。

ルビィの可愛さを堪能していたのに、なぜ。


非難がましい視線をルー様に向けると、とても眩しい笑顔が返ってきた。


「アナ、これは魔王らしい。そう、つまり男。

あまり仲良くしたら魂ごと潰しちゃいそうだ」


「…」


すごいキラキラして眩しいのに、黒い笑顔ってどういうこと?

そしてそれが似合うって何ででしょう?


うん、これもあまり深く考えたらダメなやつ。

愛想笑いを浮かべて、ルビィを取り返そう伸ばしていた腕をそっと引っ込める。


「にゃあ!」


ルビィの薄情者!と言わんばかりの鳴き声が聞こえるけど、許せ。

君のためでもあるのだよ。

先程とは違う意味で心の中で拝む私。


「そもそも、なぜまだ未完成の器を襲うのだ!

あれほど厳重に保管するように言っておいたのに!

どういうことですか、王妃様!!」


恐慌状態のあまり、爆弾発言を曝すアウレス。


え、まさかの仲間割れかつ炙り出し、もしくは芋づる式?


さぁ、あなたはどう出ますか?王妃様。


胸が締め付けられるようなニュースが溢れている中ではありますが、一瞬でも、少しでも、皆様が楽しいと気分が上がるお手伝いができていれば幸いです。

様々な負の連鎖に巻き込まれぬよう、思いやりの気持ちを忘れずに過ごせていけたらと思うこの頃です。

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