さぁ何が語られるのか
いつも誤字修正ありがとうございますm(_ _)m
そして、指摘頂いた文書を誤って本文に載せてしまっていたみたいで、大変失礼しました(汗)
ご指摘ありがとうございます。
コランジという地域に、3人の姉弟がいました。
双子の姉妹に、弟が1人です。
コランジは、とても寒い地域で作物が育ちにくいため、人々の暮らしは貧しく厳しいものでした。
3人は、寒さに凍えながらその日暮らしをしていました。
3人は孤児だったのです。
皆自分達の暮らしに精一杯で、あぶれ者に手を差しのべる余裕などどこにもありませんでした。
それ故、その3人を引き取り育てる人は、皆無だったのです。
しかし、そんな暮らしをしているのはその3人ばかりではありません。
何人も、何十人も、下手をしたら百の単位まで、そういう子どもは溢れていました。
その子どもたちの暮らしは、2つに分かれていました。
1つは、子どもたちで群がり、連携して店の物を盗んだり、すれ違う人の財布をすったりして犯罪に手を染めていく子どもたち。
そしてもう1つは、魔法の才能に恵まれて貴族や商人など裕福な家に売られる子どもたちです。
驚かれましたか?
そうでしょうね、人身売買なんて裏社会と関わりがある者でないと知らないことですもの。
さて、犯罪に手を染め、寒さに凍えながらその日その日の食料を求めて飢えているけれど、身の自由はあるのと、裕福な家に売られ、まるで物のように扱われ自由など全くないけれど、衣食住は確保されているのと、どちらが幸せだと思いますか?
ふふ。
難しいですか?
まぁこれはそれぞれの考えなので、一概には言えませんよね。
双子は魔法の才能がありました。しかも、貴族からはかなり重宝される闇の魔法です。
なぜ重宝されるのか、ですか?
それは勿論、政敵や商売敵を暗殺したり、意思を操るのに持ってこいだからです。
闇の魔法使いが敬遠される1つの理由ですね。
でも、弟には魔法の才能は顕現しなかった。
それがどういうことか、分かりますか?
そうです。
双子は売られ、弟と引き離されました。
まぁ、都合がいいと双子一緒に売られたことがせめてもの救いだったのでしょうか。
売られる双子を泣きながら追いかける弟の姿に、双子たちも身を引き裂かれる思いでした。
だから、双子は互いに誓ったのです。
いつか弟を迎えに行って、また3人で暮らせるように何とかしよう、と。
そのためには、何を犠牲にしても構わない。
姉は、魅了の魔法を気付かれない程度に使って、情報を引き出すのを得意とし、妹は自分の存在を認識できないように存在を暈し、闇に紛れて暗殺することに特化していました。
弟と離れて10年。
誓いを胸に走り続けた双子の心を、ふと過るものがありました。
果たして弟は、まだ生きていてくれているのか。
このまま、他人の命や生活を犠牲にし続けて、自分達の願いを叶えることができるのか。
その不安は一度感じてしまえば、それは急速に形を露にしてどんどん大きく膨れ上がっていきました。
そんな思いに押し潰されそうになっていた双子たちに、ある命令が下されたのです。
ある御方の婚約者を抹殺しろ、と。
不安に駆られながらも立ち止まるわけにはいかない双子は、その命令を遂行すべく、暗殺対象の動向を探りました。
そして、満を期して妹が接触したとき、暗殺対象は妹をはっきりと認識していたのです。
存在を暈し、認識できないようにしていた妹を、です。
妹は、動揺しました。それと同時に歓喜もしたのです。
初めて自分の存在を認めてもらえたことに。
それは、自分の使命に初めて迷いを感じるほどに、妹にとっては衝撃的なものでした。
任務を遂行できなかった妹に、姉は激怒しました。
何故なら、任務に失敗したことが知られれば、妹を失うことになるからです。
もう兄弟と引き離されるのは、耐えられなかったのです。
しかし、次第に姉は、妹の存在を認識した暗殺対象に興味と希望を見出だしました。
その暗殺対象が、王家と関わりがあるということが大きな要素とはなりましたが、周囲に惑わされることなく、本質を見極められるその御方ならば、自分達が囚われている闇さえも、払ってくれるのではないか、と。
だから、双子は賭けにでることにしたのです。
暗殺対象であるその御方を危険に晒すことになることだけが気がかりでしたが、そうでもしないと黒幕を討つことは到底無理ですから、致し方ありませんよね?
え、ダメ?
でも、双子は心を決めました。
自分達の誓いを果たすのと、暗殺対象の平穏のためには目的は一緒なのです。
そして双子は、暗殺対象を招き、話をしている間に、暗殺対象に魔法をかけます。
一定期間、意識を閉ざす魔法を。
ええ、闇の魔法使いが得意とする精神魔法です。
意識を閉ざしている間の身の保証、ですか。
それは神のみぞ知る、ですね。
言ったでしょう?
これは賭けなのです。
でも、できるだけ安全が守れるよう努力は致します。
だって、あなたは私たちにとって希望ですから。
「ユリアーナ様、勝手に希望をかけてごめんなさい」
「でも、あなたにとっても悪いことではないはずです。
なぜなら、我らの雇い主は子爵ではなく、アウレス神官長なのですから」
私を見つめるナタリア様とイザベラ様の顔が霞んでいく。
「ルー様…」
薄れる意識の中で、ルビィの温かい体が寄り添うのを感じたすぐ後、私の意識は完全に落ちた。




