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ダブルコンボ

毎度誤字報告ありがとうございますm(_ _)m

今日も今日とてお茶会の後にルー様のところへ顔を出す。

あれからナタリア様と一緒になることもあったけど、ある意味いつも通りの様子で、終始俯いて人見知りを発揮していた。

タイミングを見て、ナタリア様の相談に乗れればと思い、お茶会が一緒になる度に近づこうとするのだが、その度に何故かカレン様がタイミングよく私に話題を振ってくるため、なかなか接触できなかった。

そして、サミュエルに用事があるというカレン様に同伴されて、王宮まで来た次第である。


「それではお姉様。

またご一緒できる日を楽しみにしておりますわ」


何故か達成感を溢れさせながら、笑顔で手を振るカレン様が可愛くて、自然と口元が綻ぶ。


「私もです、カレン様」


手を振り返しながら、同性から受け入れてもらえる喜びが、今更ながらにジワジワとくる。


やっぱり友だちっていいなぁ。


恋とは違う、くすぐったい気持ちを噛み締めながら、私はルー様の元へと向かった。


ーーー


「アナ、これを君に」


徐に差し出されたのは、ルー様に両脇を抱えられ、足をブラーンと垂らし、ビロードのような艶かな黒い毛並みの紅色の瞳を持った仔猫だった。

こちらを伺うように見つめてくる、そのつぶらな瞳の愛くるしいこと。


「…!」


あまりの可愛らしさに、言葉が出てこない。


「?猫は嫌いか?」


そう問い掛けてくるルー様が首を傾げるタイミングで、仔猫もこてんと首を傾けた。


「!!」


な、何だこのダブルコンボの破壊力は!!

あまりの尊さに、顔を覆って天を仰ぐ。


「か、可愛すぎる…!!」


悶絶する私に、ルー様がホッと安堵の息を吐く。


「良かった。気に入らなければ別の形にも変えられるけれど、また時間がかかってしまうからどうしようかと思っていたところだった」


………ん?


「別の形…?時間…?」


どういうこと?


天を仰いだ姿勢のまま、顔を覆っていた手を退かした私に、ルー様がニコニコと笑顔を向ける。

うん、可愛い。いや、そうじゃない。

そうじゃないんだけど、うん、可愛い。


「これはね、生命体じゃなくて私が魔力で生み出した使い魔でね。

主にアナの危険を私に知らせたり、アナを護ったり、これを介して会話したりすることができる」


便利だろう、と満足げに使い魔を見下ろすルー様が、とても神々しく見える。


今、すごくカメラが欲しい。切実に欲しい。

写真に撮って、拡大して部屋に飾って一日中眺めていたい。

もしくは、念写。

魔法がある世界ならできそうだよね、念写。

誰か今すぐやり方教えて!

テル、ミー!!


まぁ、そう叫んだところで土台無理な話で。

脳内に焼き付けるべく、必死に見つめることしかできないわけで。


絶対念写、習得してみせる。

一体どの魔法の属性だったらできるかも分からないけど。

決意をする私の足元をふわりと柔らかいものが寄り添った。

見下ろすと、ルー様から放たれた仔猫が私の足にすり寄っていた。


きゅんと、胸が締め付けられる。


この庇護欲をこれでもかとくすぐる仔猫に、創造主と同様のあざとさが垣間見えて、なお愛しさが増す。


仔猫を抱き上げ、あまりの可愛さに頬擦りすると、ペロリと頬を舐められた。

その仕草に、可愛い可愛いと潰さないように注意しながら抱き締める。


「気に入ったみたいで良かった」


ルー様が嬉しそうに呟いた。


「えぇ、とても!ルー様、ありがとうございます。

ところで、この子の名前は?」


「うん、まだ決めていないんだ。

使い魔はね、名前を与えた人を主人とするんだ。

だから、アナが名前をつけてあげて」


「そんな大事な名前を、私が決めていいんですか?」


戸惑いながら聞く私に、ルー様が優しく微笑み返す。


「もちろんだよ。君のために生み出したものだからね」


その一言に後押しされて、ずっと脳裏に浮かんでいる名前を音にする。


「ルビィ」


そう呼んだ瞬間、ルビィが私の頬をペロリと舐めた。


「ルビィか。いい名だね。これも気に入ったみたいだ」


私の腕の中にいるルビィをルー様がさらりと撫でる。


「でも、こんなにアナから可愛がられて、少し妬けるな。

もう少し、違う形にしておけば良かったかな?」


顎に手を当てながら考え込むように言ったルー様の言葉に、ピクリとルビィが身を竦める。


「もう、ルー様!ルビィを怖がらせないで」


ルビィを庇うように身を捻ってルー様を詰る私に、ルー様は苦笑を浮かべた。


「ふふ、冗談だよ。私にもそれにはそれなりに愛着があるからね。

でも、アナ。ルビィばかりに夢中になって、私を忘れてくれるなよ?」


いたずらっぽく、からかうように私を見つめる瞳がキラキラと輝く。

もっとその輝きを近くで見たくて、ルー様の頬に手を添え、その瞳を覗き込む。


「私がルー様を忘れるわけがありません。

だって、この瞳ほど綺麗で大好きなものはないもの」


「好きなのはこの瞳だけ?」


頬に添えていた私の手を包み込んで、イタズラに聞くルー様に、自分がものすごく大胆なことをしていることに気付かされる。

一瞬にして顔に熱が籠り、ルー様の瞳に映る自分の顔が、その瞳に負けないくらい真っ赤に染め上がるのが見えた。


「~~~!知りません!」


そう言って、慌ててルー様から離れる私を、二つの紅色が優しく見つめていた。


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