第2話 テレビ北関東だけはアニメ
異星人・・・
今異星人と言ったのか?
「兎彩、今のチャンネルはテレ北のアニメじゃないよな?」
「間違いないよ、お兄い。どの番組でも言ってるよ・・・」
ザッピングしながら、兎彩も確認している。
間違いない。
どうやら「異星人」と名乗るぶっ飛んだ奴らに俺たちの国は侵略されたらしい。
「まともな奴らじゃないな。こんな自分を異星人なんていう奴らのテロなんてすぐ鎮圧されるんじゃないか?」
俺は妹を少しでも元気づけようとまだ状況はよくわからないがそう言った。
「そう、だね。そうだといいな」
兎彩も微笑みながら、返事した。
外では、消防車がサイレンを鳴らしながら、外出を控える旨と、戸締りの確認を喚起するアナウンスが聞こえる。
「よし、父さん母さんに連絡だったな。こんな状態だし、一緒に掛けるか。学校も今日は休もう。」
「マジで?やったあ〜」
現金なもんだが、少しでも元気になってくれるならなんでもいい。
取り急ぎ、両親に連絡をしようと電話を何度も掛けるが、繋がらない。
学校や友人たちへの連絡も同様だ。
やはりこんな事件が起きているし、通信障害も起こるだろうな。
とりあえず、俺たちはSENアプリを使って両親や友人のメッセージを確認する。
「おお、父さん達からのメッセージは来てるぞ兎彩」
「本当だーよかった」
無事を知らせる両親のメッセージは俺たちのスマホに送られてきていた。
「ついでに圭一も無事だ」
そう言って俺は、圭一からのなんだかイラっとするスタンプを見せてやる。
「あーこんな時も相変わらずだね。圭一くん。」
俺たち兄妹と圭一は小学生時代からの付き合いだ。
俺だけじゃなく、妹も圭一の性格はよくわかっている。
こうして、両親や親友の安否確認はできたので、しばらく、俺たちはそれぞれSENで他の友人や知人の安否確認に勤しんだ。
学校側からもメッセージがあり、やはり今日は臨時休校のようだ。
兎彩も両親や友人と連絡がとれて、落ち着きを取り戻せたらしい。随分顔色も良くなった。
それからしばらく、テレビをザッピングしたり、スマホを弄ったりしながらリビングで過ごした。
ニュースもチェックしていたが、「我々は宇宙人だ」声明以来、何も新情報は入ってこないらしい。
ワイドショーでは、コメンテーターやら自称専門家やらが、好き勝手に憶測を並べ立てている。
そうしている内に、12時をまわった。
もう昼時だ。
「外に出るのも危ないな。冷蔵庫のもので何か作るか。俺も手伝うよ。」
「そだね。」
そう言って立ち上がりかけると、テレビの番組が急に切り替わった。
「おい、兎彩、俺あまり詳しくないけど、あれ首相じゃないか?」
「ほんとだ!原口首相だよあれ!」
テレビ画面には、思いつめた顔のスーツ姿の男がアップで映っていた。
男は何者かに促されると、マイクを手に取りこう言った。
『こんにちは。私は首相の原口秀次です。皆さん、今朝から大変混乱されておられることかと思います。
私はこの国の首相として、その責任を大いに感じており、恥じております。申し訳ございません。』
通り一遍の文句である。何の情報も入ってこない。
唖然として聞いてると、このくたびれたおっさんは、とんでもないことを言い始めた。
『我々閣僚は、異星人によって現在身柄を拘束されております。
また、彼らが異星人だというのは間違いない事実であります。』