ゾディアニックの昔話
もしかしたらこの後の参考になるかもしれない、と言い出したのはリゲルだった。
「僕が今まで聞いてきたお話がこれだよ」
リゲルがそばに置いてあった、色が少し茶色がかった紙に書いた話がこれだった。
ゾディアニック王国では、自分の身を守るために楽器を習わなければならない。
近くにあるコンステレーション町にいけば、星に詳しい人がいる。
ゾディアニック王国に星が無数に落ちてきて、そして誰もいなくなったことがある。
そしてまた星が落ちてくるかもしれない。
「よく覚えているよね。そんなところまで」
「僕だってあんまり覚えていないんだよ。でもこの話は1ヶ月に一回くらい‥‥‥いや、もっとかな。とにかく何回も聞いたことがあるから覚えているんだよ」
「そっか」
「父さんはね、この話を昔話みたいな感覚で話してくれたんだ。だから他の昔話と同じように、まるでフィクションだと思い込んでいたんだよ。もっと危機感を持ちなさいと父さんは言ったんだけど、結局最後まで危機感は持てなかった。結果としてこうなってしまった。一星が来なければ、僕はここにはいないんだよ」
確かに、と一星は考える。星が降ってくるなんてことはまず考えられないし、本当に昔話感覚だったのなら、感覚として桃から人が生まれることはありえないと考えるのが妥当だということと同じなのだろう、と。
「じゃあ、そのコンステレーション町に行ったら、何か答えがわかるってことなんですね」
「まあ、そういうことになるんだろうけど‥‥‥」
「だろうけど?」
「近くっていっても、コンステレーション町がどこにあるかなんてよく分からないんだよね。王国からはあんまり出て行ったことがなかったからさ。それに、国のトップの血筋のものが、なんの危機感もないって聞いたら‥‥‥」
「‥‥‥怒られるでしょうね」
「一星、この近くに町なかった?」
「町、ですか‥‥‥」
一星は旅人といっても、言うところの家と一緒に旅をしているようなものだった。そばにいる星の子の力は大きなもので、星の子が家を一時的に消すことによって、星の子が家を持ち運んでいる状態のまま旅をすることができるのだ。それ故に旅先で宿屋に泊まることもないため、情報があまり入ってこないのである。
「あるという確証はないから、少し歩いてみましょうか」
「うん」
二人が家を出ると、家は静かにその場から消えてしまった。