星と旅人
一星とリゲルが布団の中に入っても、ーー特にリゲルの方はーー眠ることはできなかった。寝室にある大きな窓から外を見ては、また星が降ってくるんじゃないか。星が降ったら今度こそ、僕は消えてなくなるんじゃないか。そんな考えがよぎっていた。
「リゲルさん、寝られないんですか?」
「一星‥‥‥」
「星が怖いんですか?」
「ちょっとだけ」
「本物じゃなくてもですか?」
「‥‥‥分からないけど、多分」
一星は星の子も含め、だいぶ星に囲まれたような生活をしている。今までの旅でさえ、星を見ながら次の日にどこへ行くかを決めているようなものである。
「もしも僕の上に星が落ちたら、と思ったら‥‥‥」
「他の人たちのように消えてしまうって、そう言いたいんですか」
「もちろん」
「でも、ずっとそのままってわけにはいかないでしょう。あの王国のイベントは、星に関することが一番多いんですから」
「ゾディアニック王国のこと、一星は知っていたの?」
「星祭りに参加するときに、一通りは調べたんです。それに、星がみんな悪いわけではないでしょう」
「どういうこと?」
一星はふと起き上がって言った。
「俺の名前は一星。一つの星と書いて一星と呼ぶんです。そして旅は、空に瞬く星を基準にしている。まだ俺たちは出会ってまもないですけど、きっとリゲルさんの悪いようにはしないでしょう」
「本当かな」
「本当です」
リゲルはやっとホッとしたような表情を見せた。ゾディアニック王国が消えてから、最初の笑顔だった。
「リゲルさん、もう寝ましょう。今夜は遅いですよ」
「そうだね。‥‥‥明日も僕らにとって、いい日になりますように」
リゲルは改めて布団に入って目を閉じた。毎日行っていた「挨拶と一緒に星に祈る」という行為は、やめることはできなかった。