五月闇
先生、先生おきてください…あ、よかった…。
そんな驚いた顔しないでくださいよ。
え?ああ、私ですか?
そうですね、いつもこのバスで帰るんです。
そして、いつもこの一番後ろのドア側のこの席に座ってるんですよ。
だって荷物が置けて便利じゃないですか。
女の子の鞄の中って、ドラえもんの四次元ポケットみたいに
いろいろなものが入ってるんですよ。
本物みたいに重さがなければいいんですけどね。
…あ、うん…。教科書とか入ってない…。
ごめんなさい。今度からちゃんと持ち歩きますよー。
…雨ひどいですね。先生傘持ってきてないんですか?
仕方ないなぁ…。ほら、これ貸してあげます。
私折りたたみ持ってきてるんで、これがないぐらい平気ですから。
うーん。貸した傘…ちょっと先生には可愛いすぎますね。アハハ。
やっぱりこの折りたたみの方かしますね。
あ、別に返すのはいつでもいいですから。
先生、私…こわいんです。
バスに乗るたびにね、この真っ暗な道をこのバスが走ってる間、
このまま、まるで地球のブラックホールに吸い込まれて、
ちっぽけな塵みたいになって、パッてまるで電球を消すかの様に消えちゃうんじゃないかって。
そして私なんていなくなったかの様な扱いを受けちゃうんです…。
先生。
そろそろ着きますね。
一緒に降りてくれますか?
私ね。先生のことがすごくすごく好きでした。
あれ?せーんせ!ほら、こっちこっち!
もう、直ぐに離れようとしないでくださいよ。
他に降りた人なんていないんですから。
前にもね、私先生のこと。
あのバスで何度か見かけたんですよ。
そう、あの時。今みたいな陰険な雨が降っていたあの日にも先生がバスの中にいたこと。知っていたんですよ。
でも、すごく疲れた顔していたから…今日みたいに声かけなかったんです。
で、私が降りた後、先生も降りたじゃないですか。
実はすごくドキドキしていました。
先生、覚えていますか?
ここですよね、先生が私を
先生が私を犯した場所。
そして先生が私を殺した場所。
もう27年も前の話になるんですね…。
私、いまだに見つけてもらえてないんです。
先生にもう一度会いたかったから、わざと見つからないように、
こっそりこっそり隠れていたんです。
よかった、また逢えて。
先生。愛してる。
雨が上がった後には古ぼけた赤い傘と、
小さなウサギと水玉の柄の傘のみ残されていた。
辺りに茂っていた陰鬱な木々は、艶やかな水を湛え、夏の香りを運び始めた。
いやぁ…30分程度で書き上げて
そのまま見直しとかしてないんです…
あまりいじるのがちょっといやだったもので…
ほんと駄文ですみません…。