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遺跡  作者: たいいつ
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孤島・再

「じゃ、開けるよ?」


 流石にこの時ばかりは、真央も茶化してはこない。何時になく緊張した様な顔で頷くのみだ。この扉の向こうがどうなっているのか、全く予想できない。もしかしたら、開いた瞬間に目の前にマグマが噴き出すかも知れない。

 もしくは、僕らが扉に辿り着くまで、ずっと待ち続ける事になるかも知れない。解っているのは、愛ちゃんを救う可能性が与えられるという事だけなのだ。グッと、ドアノブにかけた手の力を入れる。一気にノブを下し勢いよく扉を開く。


「っ⁉」


 飛び込んできた光景に、まるで理解が追い付かなかった。景色について処理しきるより先に、熱風が吹き込んでくるのを感じた。その熱とは裏腹に僕の背筋は凍り付く。


「くそっ」


 色々と考えている暇はない、と扉から飛び出す。


「あ、ちょっと悠平!気を付け――」


 扉から出た瞬間、愛ちゃんの姿が目に入った。ただし、彼女は僕の下に、それも壁面に垂直に立っているように見える。僕らの声が聞こえてしまったのか、一瞬こちらを気にするそぶりを見せるると、誰かに向き直った。


「……ごめんね?」


 聞き覚えのある言葉だ。そして、愛ちゃんと誰かを分断するかのように、マグマが吹き上がる。


「愛ちゃん!こっち!」


 向こう側の僕らが見えなくなった所で、僕は叫び声をあげた。彼女はこちらに駆けてくるが、背後にマグマの壁が迫っている。間一髪、飛び込む様にして扉の中へ滑り込む。いや、穴に落ちたと表現する方が正確かも知れない。兎に角、彼女が中に入ると同時に扉を閉める。


「ふぅ……」


 一瞬の出来事ではあったが、ひどく疲れた気がした。真央はと言えば、僕と二人だった時はあんなに強気だったのに、今や愛ちゃんを抱きしめながら「良かったぁ」と泣きじゃくっている。愛ちゃんは若干困った様に笑いながら、真央の頭を撫でている。


「もう、そんなに泣かれるとこっちまで……」


 結局、暫くの間、二人で抱き合いながら大号泣が続いた。愛ちゃんは当然、あの瞬間は怖かっただろうし、真央だって失敗したらと考えて不安だったのだろう。


「それにしても、事前の準備がなんの役にも立たなかったね」


 二人が落ち着いたところで、思い返すように呟いた。


「結果オーライよ。無事愛ちゃんを助けられたんだから」


 まだ目尻の赤みがとれていない真央は、普段より幾らか迫力に欠けるように見えた。それでも発言はいつも通りの強気で、そのアンバランスさがなんだか可笑しかった。愛ちゃんもそう思ったのか、僕と一緒に笑っていた。


「何が可笑しいのよ!」


 語気を強める彼女の目に、先程まで流れていた涙がまだ溜まっていて、それが今度は笑われて悔しがる子供の様にも見えて、僕たちは更に笑った。

 ひとしきり笑い終える頃には、真央はすっかり不貞腐れてしまっていたが、その子供っぽさにまた笑いそうになるのを堪える。


「まぁ、結果が良かったかどうかはここを出てみなきゃ解らないけどね」


 気を取り直して、考えを先の事へと切り替える様に現状のままを言葉にしてみた。実際、扉の先が何処に繋がっているかは解らない。移動した先が安全だと言う保障もないのだ。僕の意図を理解してくれたのか、僕の発言に二人が顔色を変える。それにしては大げさすぎる気もするけど。


「……どうしようね」


 愛ちゃんが、絶望をありありと現した様子で真央に視線をくれている。


「そうね……。そもそも、ここが何なのかも解らないし、出来れば長く留まりたくないもんだけど……」


 真央も真央で、愛ちゃんに負けず劣らずの表情だ。


「いや、そりゃ扉の向こうは安全か危険か解らないけどさ、進むしかないんだから取り敢えず出てみようよ」


 うだうだ言ってたって仕方ないし、これまでだってどうにかなってきたじゃないか、と思って二人を説得しにかかるが、真央も愛ちゃんも、深く溜息を吐くのみだった。何が何だか解らず、二人を見比べるしかなかった。


「あーもう!そんな子猫みたいな目で見るな!」


 続く無言に居心地の悪さを感じ、誤魔化す様にチラチラと視線を動かしていたら、真央から呆れた様な、苛々した様な声が飛んできた。そんなに悲しそうな目をしていたのだろうか。


「な、何か怒ってるのかなぁーって……」


「アンタに怒ってる訳じゃないわよ!いや、その頭の悪さにはイラッときたけど!」


 結局怒ってるんじゃないか、なんて言おうものなら間違いなく怒られる。それくらいの事は解った。けど、彼女は一体何をそんなに思い悩んでいるのだろうか。


「ほら、こんな暗いとこで考えてたってさ、良い考えなんて浮かばないしさ、取り敢えず外に出ようよ!」


 この空気を何とかしようと頑張ったと言うのに、僕の発言を聴いて二人は、更に大きな溜息を吐いた。


「外に出るって、一体何処から出るの?」


「何処って扉から――」


「どの扉よ?」


「どのって……」


 愛ちゃんを救出した側の扉は、さっき閉じたから、逆側の扉を……。


「ッ!」


 薄暗くて今まで気が付かなかったが、反対側にも扉はなかった。前にも後ろにも、石積みの壁があるだけだ。

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