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遺跡  作者: たいいつ
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荒野・再2

「そんな事して、タイムパラドクスとかなんとかは大丈夫なのか」


 僕の幼馴染達を助けられる、というのは非常にうれしい限りだが、彼らを救う事で世界が崩壊でもしたら元も子もない。よく映画なんかではタイムパラドクスが起これば世界は滅亡する、なんて設定を見聞きする。


「うーん……。確かにタイムパラドクスは怖い。だから過去の君との接触は避けたいところではあるしね。ただ、君は彼らの死に際を見てはいないはずだ」


 そう言われて思い返してみる。最初に居なくなった信は後々出てきて現在生死不明。目の前で自殺して見せたが、今はそれも怪しくなっている。次に愛ちゃんは溶岩の中へと落ちていった。けれど断末魔を聴いたわけでも焼かれる音や臭いを感じたわけでもない。確かに僕が目撃した所までならばまだ明確に死んではいない。真央は扉を潜れなかっただけですぐ死に直結するわけでもないし、元希だって僕が扉を潜る時点ではまだ健在だったはずだ。


「ま、そう言う事だよ。放っておけば死ぬ様な状況ではあったが、直接目の当たりにはしていない」


 信君の件以外はね、と言いながら手についた砂を払っている。準備が整ったのだろうか。

 なんと言って良いか解らず、でも沈黙するのも気が引けて、何か言おうと口を開く。けれど声が発せられる前に口元に指が添えられた。


「しっ。お喋りはここまでだ」


 と岩陰を顎でしゃくってみせる。そこには見覚えのある扉が出現していた。息をひそめて見守っていると、すぐに扉が開き、僕と元希が出てきた。僕の記憶の中と全く同じやり取りをして歩み出す二人。何だか不思議な感覚だ。僕が元希を背負って歩いて行くのを見送り、男の方へ視線をやる。まだ動かないのか、と口を動かし伝えるが、彼はまだ待てと合図するだけだった。どうでもいいが僕の考えている事が解るなら振り向くだけで良かった気もする。

 暫く見守っていると、ズン、ズン、と地面を揺らす音が聞こえ始めた。すると、向こうの僕らが歩みを止め、何やら言い争っている。当然その内容も知っているのだが。僕の記憶通り事が運ぶ中、あちらの僕が走り出した所で、男が立ち上がる。


「さぁ、行こうか」


 そう言うと同時に、岩場を駆け下りる。慌てて僕も追いかける。彼は降りきると元希とは逆側に走り出しながらこちらに顔だけを向ける。


「君は元希君を助けるんだ。私はこれで時間稼ぎしてくるよ」


 と先程弄っていた爆竹を揺らして見せる。


「はぁ⁉助けるったってどうすりゃいいのさ‼」


 僕の言葉を無視するように、フッと笑うと前を向いて走り出した。


「なんっだアイツ‼後で絶対文句言ってやる!」


 兎に角駆け出す。丁度前を向くと扉が閉まる瞬間だった。それと同時、背後からゾッとする様な咆哮があがる。


「あぁ、そう言えばこれも聞いたな畜生!」


 思わず叫んでしまう。もう僕も居ない事だしコソコソする必要もないだろう。その声に気付いて元希がこちらを振り返る。


「悠平⁉え、でも、今……」


「約束果たしに来たんだよ!早く逃げよう!」


 と言って元希を背負ったまでは良いが、この後どうすればいいのだろう。背後から時折聞こえる爆発音はあの男が爆竹を鳴らしている音だろうか。


「悠平、マジで助けに来てくれたのかよ。折角カッコいい散り際だったと思ったのによ」


 耳元から聞こえてくる元希の声は悪態と呼ぶには余りにも嬉しそうだった。


「うっせ。泣きながら言ったって全然格好つかないぞ」


 立ち止まっている訳にもいかないので森に向けて走り出す。と言っても元希を負ぶっているので早歩き程の速度だが。


「な、なぁ。大丈夫なのか?助けに来てくれたのは嬉しいが……」


「大丈夫、もう一人が時間稼ぎしてくれてるから。得体の知れない奴だけど」


 そう、先程から響いている爆発音が何よりもの証拠だ。


「あぁ、さっきからの爆発はそれか……。恐竜かなんかの足音にしてはおかしいなとは思ってたんだ」

ちょっと安心したみたいに笑い声が漏れる。


「ははっ、これからまだまだ残りのメンツも助けなきゃいけないからね。こんなとこでくたばってらんないって」


「お前に任せるのは不安だなぁ」


 久しぶりに、本当に久しぶりに笑い合った気がする。時間で言えばそんなに経っていないはずだけど、色んな時間、色んな場所に行ってきたからか感覚がおかしくなっていた。穏やかな気持ちで歩を進めていると、元希が「待て」と言い出した。


「ん?どうかした?」


「静かになった」


 元希は大真面目に呟くが、一体何を言っているのだろうか。相変わらずドシンドシンとうるさいではないか。これが静かだと言うなら、彼はすぐに耳鼻科に行った方が良いのかもしれない。


「いや、充分足音が響いてると思うけど?」


「そっちじゃない!爆発音がしなくなったんだ!」


 言われて気付く。すぐに振り返ると、岩場から巨大な頭が覗いていた。


「不味いっ……」


 考えてみればあの男は、そんなに多くの爆竹を持っていなかった。稼いだ時間もリミットに来てしまったということか。元々策なんてなかったから、森に入ってやり過ごそうと思っていたが。


「見つかった!」


 そいつは巨体を揺らしながらこちらへ向けて走り出した。巨大なだけあって、一連の動作はそこまで素早くはない。だが、一歩一歩が大きいため、すぐに詰められる。


「悠平‼もう無理だ!置いてけ!」


 彼はそう言うが、二度も彼を見捨てるなんてできなかった。そもそも一度目とはわけが違う。もう目の前に死が迫りつつあるのだ。それに、ここで彼を殺される訳にもいかない。最早僕や元希だけの問題じゃない。


「扉!扉があれば!」


 そんな都合よくいく訳が、と思ったが改めて周囲を見回す。と、目の前に何かを捉えた。


「ジャーン、扉でーす」


 ムカつく声と共にグイッと扉の中に引き込まれる。バランスを崩し、元希にのしかかられる形に倒れ込んだ。

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