第百一魔 レッツゴー
ボッガーン
「ちょっといいかしら堕理雄」
「うわああぁぁあああっ!!!俺のニンテ〇ドースイッチがあああぁぁっ!!!」
沙魔美が俺のニンテ〇ドースイッチを破壊して、中から飛び出してきた。
レッツゴーピカ〇ュウをやるために、バイト代をはたいて買ったニンテ〇ドースイッチだったのに!!
今まさに、スイッチのスイッチを入れようとしていたのに!!(クソ寒ギャグ)
「まあまあ、今は私のことをピカ〇ュウだと思って、ゲットしてよ」
「断るッ!!こんな巨乳のピカ〇ュウがいるか!!早くスイッチを直してくれ!」
「堕理雄が私のお願いを聞いてくれたら、すぐにでも直すわ」
また出た、お願いを聞いてよシリーズ。
「……何だよお願いって。言っとくけど、監禁させろってのはダメだぞ」
「今日は違うわ」
「今日『は』って……」
「今日のお願いはね、堕理雄に一緒に作者コメントを考えてもらいたいのよ」
「作者コメント?作者コメントって、ジャ〇プとかの巻末に載ってる、あの作者コメントか?」
「ええ。ホラ、私も遂に商業作家として連載が始まるじゃない?バラローズにも巻末に作者コメントの欄があるんだけど、そこに何を書けばいいか迷ってるのよ」
「……そんなの、その時々の身近な出来事とかを、適当に書いとけばいいんじゃないのか?」
「監禁するわよ!!」
「何、急に!?」
「作者コメントだって立派な作品の一つなのよ!そこを楽しみにしてくれてる読者の方もいるんだから、適当に書けばいいなんて、いい加減なこと二度と言わないで!!」
「わ、悪かった!今のは俺が悪かったよ!!」
こいつは本当、漫画に対してだけはクソ真面目だな……(締め切りは守らないけど)。
「でも、当然俺も作者コメントなんて考えたことはないから、力になれるかはわかんないぞ」
「大丈夫。実はいくつか案は考えてきてるの。堕理雄はそれを聞いてもらって、善し悪しを判断してもらえれば、それでいいわ」
「ああ、それぐらいなら、まあ……」
「じゃあ先ず一案目ね。ちなみに連載一話目の作者コメントはもう提出済みだから、これは二話目用のコメントよ」
「おう」
「『連載初期からお世話になった担当の新氏が異動。今まで本当にありがとう!これからはよろしく次田氏!』」
「ちょっと待て!二話目でもう担当さん代わっちゃったの!?そんなことってある!?」
「いいえ、代わってないわよ」
「じゃあ何でそんなコメント考えてんだよ!?使い道ないだろうが!?」
「でも、今から急遽担当さんが代わる可能性だって、ゼロじゃないでしょ?私はどんな事態にも、すぐに対応できるようにしておきたいのよ」
「担当さんが代わることにも備えてる作家って、何か嫌だな……」
「では次は二案目ね。『高校時代からの友人のY君とSさんが結婚!末永くお幸せに!』」
「確かにそういうのよく見るけど!お前の高校女子校じゃねーか!?その二人は百合ップルなのか!?」
「いいえ、Y君とSさんは架空の人物よ」
「噓はやめろよッ!!それこそ読者に失礼だろーが!?」
「でも、ジャ〇プとかでたまにこういうコメント書いてる先生方を見てて、ずっと羨ましかったんだもの!」
「だからって捏造はダメだよ!さてはお前、ふざけてるな!?」
「いいえ、私はいつだって真剣よ。快傑真剣丸よ」
「何その昭和の特撮ヒーローものみたいなタイトル!?やっぱりふざけてるだろ!」
「では三案目にいきます」
「聞けよ人の話を!!」
「『今月号の読み切りに、アシスタントの芦田君の描いた漫画が載っています!面白いので是非読んでください!』」
「これも噓だ!お前アシスタント菓乃子しかいないだろ!?これもうただの、作者コメントあるあるじゃねーか!」
「だって私も、読み切りが載るくらいの優秀な弟子を育ててみたかったんですもの!」
「じゃあ実際に育てろよ!?育てる前からコメントだけ考えてんじゃねーよ!」
「次四案目いきます」
「俺もう早くレッツゴーピカ〇ュウやりたいんだけど!?」
「『ビチョビチョタオル先生、長い間連載お疲れ様でした!また次回作楽しみに待ってます!』」
「勝手に先輩の漫画を終わらせるな!!しかも誰だよビチョビチョタオル先生って!?」
「だって私も一度くらいは、先輩のフィナーレに立ち会ってみたかったんですもの!」
「その内立ち会えるから今は我慢しろ!何でお前は願望を今すぐ叶えようとするんだ!?」
「じゃあ最後に、五案目を聞いてください」
「それを聞いたらスイッチ直せよ!」
「『せっかくレッツゴーピカ〇ュウを買ったのに、仕事が終わるまで担当がやらせてくれない!終わったら徹夜でやってやる~』」
「さてはそれは事実だな!?だからって俺まで巻き込むなよ!」
「だって、私は我慢してるのに、堕理雄だけ先にレッツゴーするなんて不公平じゃない!」
「公平だよ!俺は別に締め切りに追われてないんだから!」
「えい」
「ぬあっ!?」
沙魔美が俺を押し倒して、俺の上に覆い被さってきた。
「フフフフ」
「ちょっ!?お前、仕事はいいのかよ!?」
「モチベーションアップのためにも、仕事の前に堕理雄のことをレッツゴーしようと思って」
「俺をレッツゴーするって何!?」
このあと滅茶苦茶レッツゴーした。