キッカケ
勇者にやられ続ける魔王達を慰めるために、魔王が勝つ話を書きたいなぁと思いました。
僕の父である、魔王が死んだ。
死因は勇者による一撃だった。その一撃は雷を纏っていたのだが、勇者はこう言い放った。「カミナリ斬りィィ!」ダサい。悲しいほどダサい。父はそのダサい、大して名も聞かない田舎者勇者にやられたのだ。
僕はその父の最後の戦いを隠れながら見ていた。
父は戦いの前に、「仲間になるなら世界の5割をお前にくれてやる」と無様にも交渉を持ちかけていた。
世界どころか、魔界の1割の土地しか征服出来ていないのに。
交渉は決裂。父はあっさりやられた。僕は怒りがこみ上げてきた。勇者に対してというより父の不甲斐なさ、そしてその不甲斐ない血を引いている自分に対してだった。僕はヤケクソで勇者に対して爆破の呪文を唱えた。
次の瞬間、田舎者勇者は血まみれでうずくまっており、あたりは煙に包まれていた。父を倒した勇者を圧倒したのだ。ずる賢いだけの不甲斐ない父の血を半分継いだ僕が。
そして思い出した。そういえば、僕を産んですぐ、死んだと父から聞かされた母は魔界最強の魔神の娘だったことを…
魔界最強の血を半分継いだ僕の物語が今、始まる…