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最終話 最高神アレン

巨大なゼウスの体は俺の蒼い魔力の奔流に呑まれ、霧散し、淡い光となってあたりを漂っている。


「や…やっと…お、終わっ…た…のか?」


俺はあたりを見渡す。


ー最高神 消滅を確認ー


「うぉわっ!?…って、ログか…いつもながらビビるぞ…これ。」


いきなり現れたログ画面に悪態をつく。

そして、さっぱりと書かれたその言葉に、俺はなぜか涙が溢れそうになった。

ログはまだ終わっていない。

ゆっくりとメッセージが表示されていく。


ー最高神の座の奪還に成功ー


ー新たな神、『蒼天白夜』が、最高神に任命されましたー


「……倒したんだなぁ…」


事務的に流れるメッセージを見つめる俺。

だが、最高神に任命されました という文を見た瞬間、ログ画面が一気にぶれ始めた。


「なんだ…?」


ーエラー-


ログ画面とは別に、俺の目の前に文字が現れた。


ー最高神 任命 失敗ー


ー原因検索ー


ー発見 ログ機能内 自動処理術式(神式) が存在しませんー


ー処理続行不可ー


「は?」


現れた文字に、俺は間抜けな声を出してしまう。

意味が分からない。最高神を倒したら、俺は最高神になるんじゃなかったのか?

そんなことを想いながら、ぶれ続けているログ画面を見ていると、また更新が始まった。


ー修復作業を開始しますー


ー外部接続確認ー


ー処理中断命令確認ー


ー世界の根幹にかかわる事項です。中断できまー


ー手動処理により、強制削除ー


ー手動で最高神が任命されましたー



「手動処理…?任命されたって…?なんだこれ?」


手動、と書いてあることに疑問を覚えた俺は、自問自答する。


(手動…?ってことは、このログを弄ってるやつがいるってことか…?でも…誰だ?)


ー新たなる最高神が誕生しました 『蒼天白夜』 アレン-


ーすべての世界の起点は、あなたになりました。ー


ーメッセージモード移行ー


ー久しぶりだな。アレン。…不死族を通り越して、まさか神になるなんてね…流石の私も驚いたよ…。不死族として覚醒してすらいなかった君が…まさに君は可能性の塊のような者だね…。ああ、そうだ。これは私からの贈り物だ。-


俺は声の主に思い当たる人物を思い出す。

不死族…覚醒…この言葉だけで誰かを特定するには十分だった。あのクズ勇者にやられたときに、意識の中で出会った…あの不死族の青年だ。


ーイレギュラーな事態に巻き込まれ、君は世界を超えた…。イレギュラーだからこそ、君は神を超えられた…。そして、イレギュラーだからこそ…君は最高神に成れない…はずだったのを、私が修正した。これでもう何の心配もない。後は君の思うがままに生きるといい…。-


俺はその文章を読み終え。一言。


「ありがとう。」



ーこちらこそ、礼を言わねばならん。奴が死んだことによって、ようやく私は成仏できる…次の転生ができるんだ…。もう、時間らしい。最後に、アレン君。私からの最後の言葉を君に送ろう。ー



ー永遠の時を、どうか幸せに…な。-



ー外部接続が切れましたー



―――――――



「「アレ――――――ン!!」」


遠くで俺を呼ぶ声が聞こえた。

あふれ出る涙をぬぐい、俺は声の方向を向くと…


「ぐふっ!!」


リリアと、クローディアに思いっきり抱き着かれ、押し倒された。


「アレン!アレンアレン!!やっと、終わったのね!!」


「お疲れ様でした!アレン!!」


ふにふに、ぷりんぷりん。と四つのふくらみが俺の体に押し付けられ、二人から俺はねぎらいの言葉をかけられた。満天の星空を見上げながら、俺は静かに二人を抱きしめる。


「やっと…終わったな…。早く帰ろう…俺たちの世界へ…。」


「はい…!」


「ええ…!」


リリアとクローディアは同時に頷き、ゆっくりと立ち上がる。


「流石だったぞ…わが主よ…。」


起き上がると、ヴァイルとハデスが泣きそうな顔で立っていた。


「ヴァイル!!…どうしたんだよ。そんな泣きそうな顔をして…って、ハデスまでどうした!?」


「ぐす…。いや、なんでもないよ。アレン…。いや、最高神アレン…。」


「リーダーよ…。少しは素直に教えてやろうぞ…。アレン。ハデスはな、ずっとこの時を待っていたのだ…。ゼウスが倒れ、新たな神が現れるのをな…。少しでも話が分かる奴が神になってくれれば、と常日頃言っていたのだ。こいつは。」


「そう、だったのか。ハデス…。でも、最高神とか言っても、俺どういう風にしたらいいか全然分からないんだが…。」


「そ、そうだったね!」


俺の言葉に、ハデスは涙を拭いて、真剣な目になり、語りだす。


「…最高神アレン。君に僕から提案をしたいと思う。」


「提案?」


「君は神の仕事とか全部わからないだろう?そこで、だ。君は今この時でも、自動でオリジンを作成し続けている…ものすごい量をね。そのオリジンを全世界に供給するパイプを作り、世界を自動で安定させ続けるようにしてはもらえないだろうか?」


「それだけでいいのか?」


「え…?」


俺の言葉に、ハデスは目を丸くする。

俺は続ける。


「正直、神っていうのがどういうことかよくわからないんだ。俺は。…何をすればいいかもわからないし、何をすると悪いのかってこともわからない。わからないこと尽くしで、頭がパンクしそうなんだよ…。どうせ、神っていうからにはいろんな人の願いを聞いて、何かしなきゃいけないとかそういう…」


「ああ、主はそういう風なことを考えていたのか…。」


言葉の途中でヴァイルが呟く。


「主。神の仕事と言うのはな…とりわけ、最高神の仕事は、オリジンを全世界に提供するだけ。それだけでできている。」


「は?」


俺の間抜けな声が、再び荒野に響いた。


「どどどどういうことだよ?仮にも、最高の神なんだろ?ほかの神を束ねたり、権謀術数…最高神の座を狙ってほかの神に命を狙われたりするんだろ!?」


「いや、そんなことはないよ?仮にも最高神だ。僕みたいなゼウスと同じような能力を持ってるやつならゼウスを倒そうとはしただろうけど…あいにく、君は僕たち神に言わせても、まさに化け物みたいな神だ。…ゼウスを倒した最高神アレンが、ゼウスより弱いわけがない。だから、君に挑むのはまさに自殺行為…。っていう頭だよ。神たち全員がね。だから君を襲う奴なんて、神たちの中にはゼロだ。言い切ってもいいくらいね。ほかの神を束ねるって言っても、本当に重要なときにしか、集まらない。まさに世界の始まりの時なんかは集まったけど、それ以降は個々に連絡を取ってるだけだねぇ…。神様の仕事って、最高神が生み出した世界の維持、管理を最高神が生み出した天使にやらせて、その責任を持つことだから……ねぇ…やる仕事っていう仕事はないんだよ。今、天使の数は十分にいるし、新しい世界を作ることも、無理にはないし…。オリジンだけが足りないんだ。」


「で、そのオリジンを…俺が自動で提供すればいいだけ…なのか?」


俺の疑問に、ハデスは首を思いっきり縦に振る。


「そう、それだけ。ゼウスは、そこを調整して、自分が楽しむ為に、世界を使ってたんだ。…なんでこんな仕組みにしたのか、なったのかはわからないけど…そんなとこだね。」


「それだけでいいなら…俺は全然かまわない。じゃあ…って、どうすればいいんだ?」


俺はすぐさま全世界にパイプをつなげようとするが、やり方がわからない。


その後、ハデスが懇切丁寧に説明してくれたので、なんとか全世界にパイプをつなげることができた。

…もう二度とやりたくない作業だ。ハデス曰く、この作業さえ終わらせれば、君は自由の身だ!とかなんとか…。俺の処理能力をもってしても、数十分はかかってしまっただろうか。

…世界が数億あるとか、聞いてない。


繋げたあとは、ハデスは他にやることがあると言って、冥界に帰ってしまった。

ラズエルの意識が戻って、いきなり話しかけてきたときにはビビった。

ゼウスのことなんてすっかり忘れてしまっていて、俺に頭を垂れてきたときには、ちょっと…なんていうか、憐み…のようなものを抱いてしまったが、彼女は言ったんだ。俺に。


「『前』の私の分まで、幸せになってください。」


と。



―――――――



その後、どうしたかと言うと…。



「うぉおおおぉおおわあああああ!!!???]


「「きゃああああああああああああ!!」」


「主よぉぉおお!これはどういう事なのだぁあああああ!!??」


「なんで、転移した、はず、なのに、空の上、から、なんだよぉおおおおおおおお!!ラズエルゥウゥゥウゥウ!!貴様ああああああああ!やっぱり俺のこと恨んでんじゃねぇかぁああ!!」


そう、世界の上空に、アレンたちはいた。

ちなみに、ラズエルはそんなことしていない。

世界に戻る際のアレンの転移する座標が狂っていただけなのだ。



最高神はアレンに変わり、こうして四人は元の世界に無事…とは言い難いが戻ってきたのだ。



だが、彼らの物語はまだまだ終わらない。


なぜなら…



世界はまだまだ、続いているのだから。



ー完ー

いやぁ…やっとここまで来れましたねぇ…。

初の作品と言うことで、ここで締めようか、締めまいか迷いましたが、締めることにしました。


皆様の中には、納得のいかない方もいると思いますが…。

そこは謝罪させてください。作者の力不足だと思うので。

そして、感謝の言葉を述べさせてください。


本当に、今まで見てくださった方々…。ありがとうございましたっ!!


ここまで書いてこれたのは、読者の皆様がいてくださったからだと、私は思っています。

誤字、脱字…更新の停滞…いろんな事情がありましたが、なんとか形としては完結を迎えることができました。


…外伝のようなものをご希望の方がいましたら、教えてください。

書けそうだったら、何となく書いてみたいと思いますので。


えと、次回作にもすでに取り掛かってます。

今度も無双ものです。

作者が大好きなので。


…書き方とかも、大幅に変更を加えましたので、見かけたら、ぜひともよろしくお願いします。


2015年8月25日 蒼井海、白井雲、井伊天気

(活動報告の方にも、同じものを掲載させていただきました)


2016年2月23日

新作できました。よかったらご覧ください。


底辺騎士(できそこない)神奏歌姫(エリュシオン・ディーヴァ)交響曲(シンフォニア)


http://ncode.syosetu.com/n6462dd/

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