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第12話 魔王襲来


「頼む!!この国を救って頂きたい!勇者様!!」


いきなりなんだと思っただろう?

今俺は、この国の最高指導者…いわゆる国王様に頭を下げられていた。

これは由々しき事態だ。

一国の王…しかも力があると専らの噂である、聖国のトップが…一冒険者の俺に頭を下げるとは、冗談のような光景だった。


「えと…なし崩し的に俺ここまで連れてこられたけど…まずこれだけ聞きたい。俺の魔王容疑は晴れたんだな?」


それが重要だった。

本物の魔王が聖国の外で今にも攻め込んでくるような事態でも、俺を魔王の仲間だと思っていたら、協力するメリットがない。

むしろ助けた途端に俺の仲間たちがひどい目に…いや、あいつらならフツーに切り抜けられそうだが。


「ねえアレン?なんか変なこと考えてなかった?」


横に立っていたクローディアが、ジト目で俺を見てきた。

流石俺の嫁。以心伝心はお手の物という訳か。


「アレン殿……。国王である余は、現在誰が勇者の資格を持っているか…つまり、魔王を倒すべき者ですな…それが見えるのだ。そして、今それは間違いなく…。」


「俺に資格がある、と。」


「その通りだ…。先代勇者が無礼を働いてしまったようだ…本当に、申し訳なく思っている。」


再び王が俺に向かって頭を下げた。

先代勇者が無礼を働いた…?本当に申し訳なく思ってる…?冗談じゃない。一度は死にかけたんだぞ?俺たちは。


「……俺には、あなた方を許すつもりも、魔王を倒す義理もない。」


「……。」


王の顔が絶望に染まった。


「そこで、取引といかないか?」


「と、取引…?」


「そう、取引だ…。内容はこうだ。俺が魔王を倒す代わりに、国王様。俺たちにこの塔への出入りを自由にしてくれ。なに、モノを盗んだり、人を殺すわけじゃない。俺たちの用事があるのは、この塔の最上階だけだ。」


俺の言葉にざわざわと謁見の間が騒がしくなる。

だが、王が片手をあげるとすぐさま静かになった。


「…それで本当に、魔王を倒していただけるのか…?」


驚いたような顔をして、王は俺を見てきた。


「ああ。それだけでいい。出入り自由にしてくれ。」


「わ、分かった…」


「よし…交渉成立だな。さて…じゃあ俺はもう行く。」


俺は出入り口の方へ歩いて行った。

後ろから、クローディア、セルリア、リリア、ヴァイルがついてくる。

そして、扉を開けると、後ろから声がした。


「ありがとう…。」


王の声はなぜか涙ぐんでいた。


―――――――


「こりゃまた…すごい量だな…。」


この聖国には周囲を取り囲むように城壁がある。

その城壁の外周すべてに魔物達が群がっているのだ。

数は千や二千どころの話ではない。

かるく50万はいるだろう。

それに対抗するは、わずかな聖国の兵士や冒険者、そして大量の民衆たちだ。

俺は城壁の上から魔法を放っている兵士に声を掛ける。


「おい、城壁の外に人はいるのか?」


「いや、城壁外にはいないだろう!!城門はすべて閉鎖してある!【ファイア】!!」


兵士がスキルを発動し、火の玉を魔物の群れにぶつける。

だが、2、3匹しか巻き込めなかった。


「ちっ…倒しても倒してもキリがねぇ…勇者様はどこに行っちまったんだ…!?」


そうぶつくさ言いながらも兵士は一生懸命に戦っている。

そんな兵士からいったん離れ、俺たちは家の影に隠れる。


「さてみんな…質問は?」


後ろを振り返り、俺は仲間たちの顔を見る。


「私たちにはよくわからないけど、アレンって、勇者になったの?」


「ああ。」


「…で、魔王を倒さないと、この諸悪の根源である最高神ってい奴に会いに行けないという事でしたね?」


「そうだ。」


「早く戦いに行かないのか?主よ?」


「ご主人様…私も戦います!」


みんなが思い思いのことを口にする。

セルリアの言葉はとてもありがたい。だが。


「…いや、セルリア。君が闘うことはないな…」


「へ…?」


「なぜなら、今俺は、猛烈に暴れたい気分だからだ…!」


俺はロングソードを顕現させると、目覚める前とは格段に強くなった力を感じた。


「みんな。俺は今から無茶なことをする。巻き込んじゃうかもしれないから、ちょっと離れて。」


「ご、ご主人様!?」


「セルリアさん。こうなったアレンはちょっと手におえないから、言われた通り離れてましょう…すっごく嫌な予感がしますけど…。」


流石俺の嫁リリア…よくわかっていらっしゃる。


「じゃあ、行ってくる。」


俺は空高く飛び上がった。


――――――――


城壁の外には、ドラゴンやグりフォンみたいな魔物…ゴブリンやオーク…トロールまでいる。

多種多様な魔物が、この都市に攻め寄せてきている様はまさに地獄のようだった。

城壁の上ならば安全だと思っていたが、ここもそれなりに危険だ。ドラゴンの火球、ゴブリンの投石などの攻撃にさらされるからだ。

民衆たちには武器を取らせ、門の守りに入ってもらっているが…突破されるのも時間の問題だろう。


「早く救援部隊を寄越せ!!仲間が火炎球にあたった!!」


「数が多すぎるっ!!魔法部隊はどうした!?」


「ゆ、勇者さまああああ!!助けてくださいぃぃ!!」


そんな言葉が飛び交っている中、悠然と一人の男が、城壁の上から飛び降りた。

それに気付いたものはいるかいないか…各々が闘っているので、そこまでの余裕はないが、練度の高い兵士たちの何人かは気付いただろう。


その気付いた誰もがその男は死んだと思った。

せめて死にざまだけは見ていてやろうと兵士たちはその男に着目する。


そして、その男は華麗に着地して見せた。

蒼いオーラを纏ったと思った、次の瞬間、


「ひっ!?」



ーゾクッ!


全ての人と魔物が同時に、得体のしれない【殺気】にひるむ。

一瞬にして静まり返る戦場…そして、その場にいた魔物や人、すべての眼は、その殺気の発生源であるその男に向けられる。


そして、蒼く輝く男が剣を構え、叫ぶ。



「魔力、爆散ッッ!!」



瞬間、眩い光と共に、轟音が迸る。

それはまさに、世界の終りを連想させるようなそんな光景だった。

大地がえぐれ、地形が変わる。

爆風で宙に舞いあがった魔物達は、蒼い光と共に消え去る。

とめどない光の奔流…そしてその力はまさしく、破滅そのものだった。


そして、気が付くと、男の前方にいた魔物たちは跡形もなく消え去っている。

民衆たちは雄叫びを上げるのも忘れ、茫然とそれを見ていた。




「魔王はどこだあああああ!!」




アレンと魔王軍の戦いが始まった。

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