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第4話 治癒術師 ※

 場所は変わり、城壁都市フェレスの兵舎内の医務室。

 ところどころ薄汚れた壁の医務室。そこに12床のベッドがある。

 そこは、フェレス内でのいさかいで衛兵たちが怪我をしてしまったときに立ち寄る場所だ。

 本来であれば清潔を保っていなければならないその場所は、いまや入口から一番近いベッドまで鮮血で真っ赤に染まってしまっている。

 いかにも熟練者の風格を漂わせた美人のお姉さんといった人物と、小柄で栗色の長髪のおとなしげな女性が、鮮血を垂れ流している元凶であるその男を見ていた。


「なぁ、リリア。オレの【他者解析】では間違いなく【一般人】とでていて、しかもこんなに血を流しているのに体力が全く減っていないし、【止血】の治癒魔法が全く効いていない・・・どういうことだと思う?」


 リリアと呼ばれた女性は少し間をおいてから自分の見解を述べた。


「誰かに【呪い】と【自動回復】を両方同時にかけられたんですかねぇ?でもこんな高位の治癒術と呪いなんて聞いたことがないです。というか、すごく悪趣味な拷問魔法ですねぇ・・・。カムレン・・・あなたですか?こんな悪趣味な魔法をあろうことか【一般人】にかけるなんて・・・」


 カムレンと呼ばれた熟練者風の女性はあわてて訂正する。


「ちょっと待ってくれ!オレは何もしてないし、こんな見るからに善良そうな男に拷問をかける理由なんてないぞ!?」


「じゃあ何が原因だというんですか? 連れてきた衛兵たちは、最初から血まみれだったとしか言ってませんし・・・。」


「うむ・・・」


 思考の溝にはまってしまうカムレンとリリア。

 どう考えても男は死んでいないとおかしいくらいの重傷なのだが、なぜか傷がみるみるうちに修復し、また同じところに傷ができ始め、出血。こんなわけのわからない状況はカムレンもリリアも見たことがなかった。


「考えていても(らち)が明かないな。手の施しようがない。死ぬまでそのベッドで寝かせてやるか・・・・?」


「ちょっとまってくださいカムレン。血が止まってます」


 先ほどまで男からあふれていた鮮血が、なんと止まっていたのだ。

 不可解な出来事にカムレンとリリアは首を傾げた。


「呪いの効果が切れたのか……? 治癒術も切れているし……これはまずいな。傷が完全に塞がっていないぞ・・・リリア!治癒術を二人でかけるぞ!」


「はい・・・!」


『【急速回復】!!』


男の傷がみるみる塞がっていく。すべての傷が塞がったのを確認すると、カムレンとリリアはよほど消耗してしまったのか、近くの椅子に座りこんでしまう。


「久しぶりにつかったなぁ・・・魔力使いすぎて体がだるいぞ・・・」


「そう、ですね・・・でも、こんな高度な呪いと魔法をいったい誰がかけたんでしょう?」


「そんなもんどうでもいいよ。問題はこの男が何をしでかしたか。だ。目覚めるまで時間が必要だろう・・・この分だと明日の夕方には目が覚めているだろうさ。リリアどうだ?医務室で目を覚ますより美人の君の家で目を覚ましたほうがこの男も喜んで事情を話すと思うのだが・・・?」


「仕方ありません。私が美人かどうかはさておき、誰かが起きた時に近くに居なければならないでしょう。見たところ武器類は持っていないようですし・・・家に置きましょう。」


「よし!決まりだな!じゃあさっそく衛兵に運んでもらうか・・・」


その後は衛兵二人にリリアの家まで運んでもらい、アレンは柔らかいベッドの上に寝かされる感触を最後に意識を失った。

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