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第7話 アレンとリリア

一方その頃、洞窟内のアレンとリリアは顔を顰めていた。

なぜなら、洞窟内はむせ返るような血と獣のにおいであふれていたからだ。


アレンがついに耐えられなくなり、リリアに指示をだす。


「…っ!リリア!治癒術の範囲指定で、この洞窟全体を指定するんだ!続いて、【洗浄】術式起動!」


「は、はい!!」


リリアが集中する。


大規模な蒼い光をまとった魔術式が洞窟内を駆け巡る。

それを視界にとらえたリリアは素っ頓狂な声を上げた。


「これは…まさか、アレンの魔力を使っているんですか!?」


「そうだ…まぁ、俺にしたら微々たるもんだ。1割なんてすぐに回復するしな…。ほら、そろそろいいだろ。洞窟の中、全部洗い流してしまうんだ。」


リリアは己の手にある杖を通し、魔術を行使する。


「清浄なる者よ…私に力を貸してください…!行きます!【洗浄】!」


リリアであれば詠唱なしで洗浄魔法を使えるのだが、今回は規模が大きいため、一応詠唱を挟む。


すると…


一気に洞窟の中から臭気が消えうせる。

動物の死骸やら何やらまですべて洗浄され、綺麗になっていく。

何もしていないのにあたりがきれいになっていく過程に、かなりの違和感を覚えるアレン。


「うわぁ…こうして見ると、ほんとファンタジーって感じだなぁ…」


もちろんこの世界でもこんな光景はまず見ることはない。

まず第一にこんな大規模な洗浄魔法を使えるものがいないのだ。

先の見えない洞窟すべてを範囲指定し、洗浄を行使するなど並の魔法使いが何人いても不可能なのだ。


「……私、なんかすごいですね…」


一番驚いていたのはリリアだった。いままで一介の治癒術師だったものが、大規模魔法を行使しているのだ…不思議な感覚に戸惑うリリア。


「……まぁ、いいです。アレン。そろそろゴブリンが異変に気付いてもいいころじゃないでしょうか?」


いつまでたっても洞窟の奥からはゴブリンがやってこない。

通常、兵隊役のゴブリンが何匹か襲ってきてもいいのだが、やってこないのは他に原因があった。

そう、アレンだ。この男さっきからロングソードを出しっぱなしにしているのだ。ただでさえ威圧感があるのに、異常な能力値で洞窟の奥のボスまですくみ上らせていたのだ。

その事実に未だ気付かないアレン。


「…おっかしいなぁ…やっぱり討伐された後だったのかな?…よし、確認するためにボスのいるところまで行ってみようか。」


だんだんと奥に進んでいくアレンとリリア。

洞窟内は真っ暗だが、リリアの持っている杖の先端が光り輝いているので視界には困らなかった。


やがて、二本の分かれ道に出る二人。


「……アレン。どっちに行きましょうか?」


「そうだな…まぁ、こういうのは大体左からだよなぁ…」


進路を左に取り、またしばらく進むと、そこには広い空間があった。

天井は高くなっており、円形状の部屋のような形になっていた。


「わぁ…こんな広い場所が洞窟の中でもあるんですね…」


洞窟内にほとんど入ったことなかったリリアは感嘆の声をもらす。

だが、アレンがそれをとがめた。


「おいおいリリア。目の前に敵がいるのにそんな悠長なこと、言ってる場合か?」


その声にやっと気づくリリア。

そう、リリアの目の前、数メートル先にはゴブリンがいた。


「きゃあ!?」


短く悲鳴を上げるリリア。


「大丈夫だ!リリア!ゴブリンに向けて治癒魔法を使うんだ!!」


「ギャアアアアアアアア!!」


リリアにアレンが指示をするのと、ゴブリンが飛びかかってきたのは同時だった。

ゴブリンの手には棍棒が握られており、勢いよく先頭のリリアに飛びかかる。


ーがいん!


木と木がぶつかったとは思えないような音が洞窟内に響く。


「え!?この杖…すごい!」


そう、ゴブリンの全体重を乗せた一撃をリリアは杖で防いだ。そして、杖は無傷。材質は同じ木材だが、何かの力で守られているかのようにリリアの杖は丈夫だった。


「アレン!?こんな時に冗談言ってる場合ですかっ!?」


「いいから全力で奴を回復させろ!」


アレンにせかされ疑問に思いながらも無詠唱で治癒を発動させるリリア。


「…何考えているか知りませんが…始末だけはしてくださいよっ!?はぁっ!!」


治癒術式がノータイムで発動され、かけられたゴブリンが一瞬で蒸発した。


すぐさま鼻をついてくるすさまじい臭気に、リリアがすぐさま洗浄の魔法で周囲の空間を指定して発動させ、悪臭を消し去る。


ゴブリンは体内にあった魔石だけを残して消えてしまった。


その現象を見てリリアは叫ぶ。


「あ、アレン!!今のはなんなんですか!?私は確かに治癒の魔術を使ったはずです!」


目を白黒させるリリアはアレンに詰め寄る。

まぁまぁとなだめながらアレンはリリアに説明する。


「えーと、リリア。思い当たることはないか?」


その言葉にリリアは考える。

治癒をかけた相手が負傷するなど、考えられるのは一つしかなかった。


「ま、まさか…オーバーヒール?」


オーバーヒールとは滅多に起こらない現象だ。

端的にいえば、通常の治癒術の治癒量は治癒術士が込める魔力量に比例する。

そして、リリアが今込めた魔力はアレンの魔力が含まれていた…そう、慣れない魔力経由でリリアが治癒術を文字通り全力で使い切ったのだ。リリアに分け与えられていた魔力を。

結果、治癒されすぎたゴブリンは傷が治るのではなく、逆に活性化しすぎて自壊してしまったのだ。


「……いや、全力でやれとは言ったが、まさか俺の魔力1割全部使うとは思わなかったよ……まぁ…自然回復で数秒もすれば回復するからいいけど」


リリアは自分の魔力量がまったく減っていないことに気付く。


「えと…私の魔力は使わずに、アレンの魔力を全部使ってあのゴブリンをオーバーヒールで蒸発させた…ってことですか…?…たしかに、この杖の力があれば…って!?治癒力が桁違いじゃないですか!?これじゃあ普通の治癒ですら相手を蒸発させちゃいますよぉ!!」


そう、今のリリアの杖に宿る治癒力は常軌を逸している。普通の治癒ですら杖を媒介にして魔力を10使用するだけでもゴブリンは一瞬で消滅するだろう。


「まぁまぁ落ち着けって!普通に治癒するときは杖を使わなきゃいいだけの話だろう?」


その言葉では納得できないリリアは言葉を続ける。


「そうですけど!!そうですがっ!私、治癒術士なんですよ!?治癒で人を癒すのが仕事なんです!聖職者なんです!!」


「あ、一応聖職者なんだ…」


「その、聖職者が人を癒すためにいるのに、私は治癒で魔物を殺せるんですよ!?おかしいですよね!?これじゃあ治癒術士じゃなくて治癒術死ですよ!?」


「え、でも…リリアが喜ぶかと思って…」


アレンが泣きそうになってしまっていることにようやく気付くリリア。

それを見て、リリアは頭を抱える、がすぐさま気を取り直す。


「…うぅ…わかりました…普通に癒す時は手をかざすだけでもできますし…」


「…ほ、ほら、杖で殴ってもオークとかも一撃だと思うし!」


その言葉にますます落ち込むリリア。


「どこの世界に治癒術士でありながら、杖の一振りでオークを殺せる人がいるんですか…」


「…かっこいいとおも「カッコイイとかの問題じゃないです!!」


そのあと言い合いは平行線をたどる。

最終的には戦闘ができるようになったということで、リリアが折れた。


「ホントにごめんな…じゃあ、さっさと巣を壊滅させようか。はい、範囲指定して。ああ、洗浄の術式も組み込むのわすれないでねー」


「なんかキャラ違くありません…?いいですけど…」


言われた通り洞窟全体を魔力で包み込むリリア。


「あ、俺は対象外で…「知りません!「え、ちょっ、まっ、いてえええええええええええ!!」


治癒の光と共に洞窟が光り輝く。

奥にいたゴブリンすべてが死滅したのはいうまでもないだろう。

そして、アレンの絶叫だけが遠く響いた…。

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