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第6話 クローディアとヴァイル

前ページを少し改稿しました…!

包丁の能力値や言い回しを多少変更しましたので、ご一読をお願いいたします。

空中で対峙していた二人は打ち合いを繰り返していた。

ヴァイルは両手の剣をクローディアの持つファンシーな見た目の…刃渡り数十センチといったところか…包丁と打ち合う。


打ち合う度、ヴァイルは嗤う。


(クッハハハッハハッハハハ!!…………強いっ!)


そう、世界を破滅させられるほどの力を持つヴァイルですら、目の前の黒猫に傷をつけられずにいたのだ。


「いくわよ!それっ!!」


冗談ような速さで包丁を的確にさばいていくクローディア。


「なにぃ!?貴様!!本当にまともな戦いは初めてなのか!?初心者の動きではないぞ!!」


「この包丁、なんだかしっかり手になじむのよ!!…まな板の上の生きた魚をこれから3枚におろそうとするみたいに、アンタのおろし方まで浮かんでくるの、よっ!!」


そう、クローディアの持っている包丁は【器用値依存】。そして、包丁は包丁だ。そして、【家事】スキルがあれば使いこなせるものなのだ。アレンは考え抜いたのだ。家事しかできない黒猫をどうやったら戦わせられるか…それは、戦闘をも家事にしてしまえばいいという突飛もない発想だった。


そして、その発想は間違いではなかった。クローディアの持ち前の器用さと包丁の付加効果の相性は抜群だった。現に、あのヴァイルですら少し押され気味だ。


(なんという家事スキルの高さだ……クソっ!これでは黒炎龍の名がすたる…!!)


ヴァイルは本気を出さなければマズイと判断。これでは主人との約束を果たせない。

クローディアを強くする、という約束を。

まあ、本人が負けず嫌いなだけなのだが。


「はぁああああああああ!!【魔力爆散】!!」


その言葉に目を見開くクローディア。

だが、強化された能力により、すべての魔力を察知できている彼女にとっては、範囲魔法ですらただの剣の一振りと同様にすぐに避けられるものになっていた。


「はぁ!!」


瞬時に前方に魔力を爆発させ、【魔力爆散】の圏外へと行くクローディア。

だが、ヴァイルも闇雲に魔力爆散を使ったわけではない。


「ふははっ!!とったぞ!!」


その行動を予測していたヴァイルがクローディアより早く動き、瞬時に彼女の後ろ側へと移動する。

それを気配で察知したクローディアは防御しようとする。


だが、ヴァイルの尋常ではない攻撃力の前では無駄だった。

クローディアへ届いたその刃は、皮膚に触れるか否かというところで


ーパリン!


という音を立ててすさまじい力に押し戻される。


それは、アレンの絶対障壁が立てた音だった。


万が一に備え、遠隔からアレンはずっと二人に絶対障壁をかけていたのだ。


少し細工をして。


ガラスの割れるような音と同時に、クローディアとヴァイルの頭にアレンの言葉が響く。


≪ほい、まずはヴァイル先取ってとこか…ああ、ルールを説明してなかったな。≫


「へ!?アレン!?どこにいるの!?」


突然聞こえてきたアレンの声に動揺するクローディア。


≪落ち着けクローディア。これはコールによる念話だよ…で、ルールは単純。先に3本先取した方の勝ち…ヴァイル。今のはいい一撃だった…クローディア。君は敏捷が高いんだ。それを生かせば目の前のイカしたねーちゃんも目じゃないぞ?≫


いろいろとわけのわからないアドバイスを受けたクローディアは叫ぶ。


「そういうのは最初から言いなさい!!もう!いいわ!絶対に勝ってやるんだから!アレン!私が勝ったら一日私の言う事聞きなさい!!」


≪え!?ちょっまてって!≫


「それはいいな…我もそろそろ主と一戦交えねばと思っていたのだ…!」


なぜか『勝った方が一日アレンのことを好きにできる』という勝利報酬がついていた。


やる気をみなぎらせる二人。


ヴァイルは思う。


(今の能力値でも主には勝てん…目の前の黒猫ですら怪しいくらいだ…フハハっ!楽しいではないか…こんな胸の高鳴りは久方ぶりだぞ!!)


「行くぞっ!小娘ぇ!!」


獰猛な目をしたヴァイルが先ほどとは全く桁違いの素早さでクローディアへと向かう。

本気を出したのだ。


「なっ!?くっ!!」


クローディアは受けようとするが、先ほどのアレンの言葉を思い出す。


ヴァイルの剣がクローディアに触れるか触れないかをクローディアは見極める。


「ここねっ!!」


最小限の動きでヴァイルの剣を避けるクローディア。

【絶対障壁】を使い、剣圧すら防ぐ。


クローディアとリリアの持っているエンゲージリングについている、【能力伝播】…、この効果はアレンの魔力を1割ずつ分割し、それぞれが代替して使用できるようになるということと、アレンの持っているスキルが使えるようになるということだ。(ただし、LVが本来のものの1割。LVが無い場合はそのまま使える)


「なっ!?」


驚いたヴァイルは数瞬隙ができてしまう。

それをクローディアは逃さない。


「はああああっ!」


ーパリン


再びガラスの割れるような音がする。

今度はヴァイルが一本取られる。


それを感じたヴァイルは再び嗤う。


(この小娘…見切りすら家事スキルでやってのけたというのかっ…クハハ!…まったく恐ろしい娘よ…)


正確には見切りは獣人族の特徴である動体視力の高さなのだが…どうやらヴァイルさんは結構動揺してしまっているようだ。


しっかりと目の前の敵…クローディアを見据えるヴァイル。

その気迫に少したじろいでしまうクローディア。


「…クローディア!我と尋常に勝負せよ…!生と死を駆けた闘争を…!我は、主アレンの使い魔にして破滅を導くもの…ヴァイルなるぞ!!」


いきなり名乗り上げるヴァイル。

再びすさまじい気迫と圧迫感に襲われるクローディア。

だが、クローディアも負けてはいない。

しっかり踏みとどまり、返す。名乗りには名乗りを…この世界での一騎打ちをする前の儀式のようなものだ。


「私は、アレンの妻にして、最強の家事冒険者…クローディアよ!!いざっ!勝負!!」


ふざけた名乗りだが、本人たちは至って真面目だ。たぶん。

家事冒険者ってなんだよ、とアレンが突っ込みを入れるが、二人は聞いちゃいない。


「フハハハハハハ!!…オオオオオオオオォォォォオ!!」


振りかぶり、再びクローディアへと切りかかるヴァイル。


「はっ!!当らないわよっ…ちっ!!」


一回避けるが、変幻自在のヴァイルの二刀がクローディアを襲う。


ーパリン


今度はクローディアが攻撃を受けてしまう。


「まだまだぁ!!…はぁ!!」


ヴァイルがクローディアの剣を受ける、するとクローディアは信じられない動きをする


ヴァイルの右手の剣で受けた包丁が、くるり、と回転しすれ違いざまにもう片方の包丁が脇腹をかすめる。


ーパリン


「これが家事の成果よっ!!」


「どこが家事の包丁だというのだっ!!殺人包丁ではないか!!」


ヴァイルは焦る。なぜかいつの間にか、格下だと思っていた小娘に2本も取られてしまっていたのだ。


(くっ…まさか…この我が…!?)


「フッハッハッハ!!最後の戦いだな!クローディア…!」


「そうね……行くわよっ!ヴァイル!覚悟しなさい!」


「覚悟するのは…そちらの方だっ!!」


それはまさに鬼神の如き戦いだったとアレンは後に言う。


周りの木々をなぎ倒し、空中で爆風をおこし…二人の戦いは激しさを増すばかり…


ついに、決着の時が来た。


(次で、決めるっ!!)


ヴァイルは決意する。必ず目の前のイカれた性能の黒猫に勝つと。


(大体、家事スキルのみで戦おうなど我も舐められたものだ…わが、黒炎流の剣術をみせてやろう…!)


息巻くヴァイルは目の前で浮かんでいるクローディアを見る。


クローディアもその意思を受け取る。


二人が構え、同時に空を駆けた――――。

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