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第1話 彼の名は、アレン

 男は今、空中に居た。


「うぉぉおおおおわあああああああああぁぁぁぁああああ!! なんで転生して、異世界に、来たのに、初めから、空の上、なんだよぉぉおおおおおおおお!!」


 とても眺めがいい空中にいるのだが、男にはそんな余裕なんてなかった。

 ファンタジー世界にたがわぬドラゴンや深い森、小さい村や都市などが見えるのだが、命の危険が迫っているその男は状況に抵抗するだけで精いっぱいだ。


「やばいやばいやばいしぬぅぅううう!! これやばいって!! 転生して数十秒で消滅とか洒落になんねぇぇぇぇっつぅぅううのぉぉぉおおおお!!」


 いろいろと疑問が男の中に渦巻く。この状況になる直前に金色の守護天使、ラズエルにあったことは覚えている。なにか文字を見た気がするが、思い出せない。しかも転生って普通赤ちゃんとかからスタートじゃなかったのか?などなど男は疑問を覚えるが、それに対する回答よりもまず先に生き延びねばならない。が、ただの【一般人】の男には何も助かるための手段も、力もない。

 身を切る風がすごく冷たいおかげで恐怖も倍増だ。


「くっそぉぉぉおお!! ラズエルめぇぇ!! バグったからって殺すこたぁねぇだろおおおおおお!!」


 金色の天使がその場にいたらすぐさま撤回を要求するような悪態を男が吐く。

 迫りくる死を確実に予感しながら男はギュッと目をつぶる。もう地面はすぐそこだ。


「死にたくねぇぇぇえぇえ………ん?」


いつまでたっても来るはずの衝撃が来ない。おそるおそる男は目を開ける。


「なんだ、これ?」


 結論から言うと男は生きていた。だが不自然なことに男の体は、地面から数十㎝ほど離れた位置で止まっている。


(時間が止まった? いや、草が風で揺れているからそれはないか……。というかまずは地面に足をつきたいところだけど……)


 男はゆっくりと、爪先から地面に降りようとする。足は問題なく動く。前傾姿勢のまま爪先が地についた。その瞬間、


 ———ドスン! と派手な音を立てて男は四つん這いに地面に投げ出されたような格好になってしまった。


「ぐぇぇ!!」


 急に戻ってきた重力に男は対応できず、崩れ落ちる。

 とりあえず、あおむけになった男は地球とかわらぬ青い空を見上げる。


「ここは、本当に異世界なのか?」


 当然の疑問だった。空から落ちる途中で見えたドラゴンを見ていれば信じられただろうが、あいにくこの男はそんな余裕はなかったようだ。

 だがそんなことはどうでもいい。生きているのだ。男はうれしさが込み上げてきた。


「俺、いきてるぞおおおおおおおお!! よっしゃああああああああああ!!」


 静かな森の中に男の声が響き渡った。


 空高くに手を伸ばすと、目の前に唐突に四角い半透明な画面が浮かび上がった。


「うぉっ?なんだ…これ?」


 意味が分からない文字だったが一文字一文字集中すると何となく意味が伝わってくる。だんだんすらすらと自分が長い間使ってきた日本語のように読めるようになってきた。

 そこにはこう書いてある。




ーログー


ー着地を確認 【衝撃緩和】術式と【急速回復】LV9999を消滅させましたー

ー行動ボーナス スキル 【軽業】Lv1 を習得しましたー

ー行動ボーナス スキル【軽業】のレベルが上がりました。 Lv1→Lv5へー

ーパッシブスキル[アクロバット]を習得ー

ーパッシブスキル[アクロバット]がLv3になりましたー

ー種族レベルUP 人族Lv1→人族Lv2へ-

ー職業レベルUP 一般人Lv1→一般人Lv2へー

ーアクティブスキル[日常風景]を習得ー

ースキルポイントを8獲得。残SP30-




(なんだこれ? レベル? スキル? ……まるでゲームみたいだな。そうか、やっぱり俺は異世界に来たのか……というとmこれはスキル【メニュー】の効果か?)


 固有スキル【メニュー】は自分の能力値の確認や、今までのログ(記録)を見れたり、自分の荷物インベントリを魔法の画面に映し出し、そこから出し入れしたりできる。スキルの取得や強化もここから行えるのだ。


 一通り眺めていると右上のほうにTOPという文字が見える。

 とりあえず、ポチっと押してみる。スイッチを押した時のような感覚が指先から伝わってくる。

 先ほどのログとは別にウィンドウが開く。


MENU

・ログ確認

・ステータス確認

・インベントリ管理

・スキル強化、取得(残SP30)

・MAP(要:【周辺観察】)



「これは……試してみるしかないな。俺の唯一のチートっぽいスキルだし」

(ログ確認やステータス確認は分かる。インベントリってなんだっけ…?あぁ、荷物のことか。スキル取得は大体予想はつくけど……なんかSP多くないか? セオリー通りにいくと、スキル一つに対して大体SP1ってのが相場じゃないのか? MAPは……まだ選択できないみたいだな。まぁ端から見ていこうか)


男はステータスを確認してみた。すると…


名前:アレン

種族:人族 LV2

職業:一般人LV2 MASTER


STR 25

DEF 12

INT 20

SPD 60

TEC 60


体力 120

魔力 10


所持スキル


固有

【異世界言語理解】LVー

【メニュー】LV-


ノーマルスキル

【魔力値増加】LV1

【軽業】LV5


パッシブスキル

[アクロバット]Lv3


アクティブスキル

[日常風景]



(落ち着け。俺。ラノベで見慣れたステータス画面じゃないか。触ってみるときっと説明がはいるって……というか名前が変わってるな? あぁ俺ってアレンっていう名前になったのか。)


 そう思ったが、その瞬間男は違和感を覚えた。慣れ親しんだある名前とはかけ離れているあの名前とは全く違うものだったっと「思った」から。


「は!?なんで名前が変わってんだ!?俺はっ…、あれ?俺の名前なんだっけ…な?」


 男は思い出せない。人格は引き継いでいるものの、いたはずの父母の名前、自分の名前も友人の名もすべての人の名前を思い出せない。しかし思い出せなくて当然なのだ。転生とは違い転移になって彼はこの地にやってきた。その転移に変更になった事実すら男は思い出せないし、バグによる障害があったという認識だけは残っているが記憶がチグハグになってしまっていた。


 自分は生前誰だったのかわからないが、ある日いきなり死んで、転生バグによりこの世界に転生したのは覚えている。


「まぁ、いいか。俺はそんなこと気にする男じゃないし」


 そう一人でつぶやき、男はステータスやスキルの説明を読んでいく。

 種族や職業については何も起こらなかった。

 そのほかはこのようになっていた。


STR 筋力。これが高いほど物理攻撃力が強くなります。参考:成人男性平均50

DEF 耐久力。これが高いほど敵の攻撃からダメージを受けにくくなります。参考:成人男性平均45

INT 精神力。これが高いほど魔法攻撃力が強くなります。参考:成人男性平均20

SPD 敏捷。これが高いほど移動や回避にプラス補正がつきます。参考:成人男性平均35

TEC 器用。これが高いほど武器の扱いがうまくなり、テクニカルな動きができるようになります。参考:成人男性平均35


体力 120 体力。尽きると死にます。

魔力 0(+10)魔力。これがあるうちは魔法攻撃や魔法防御ができます。


所持スキル


固有

【異世界言語理解】LV- システムスキル。

【メニュー】LV- 汎用スキル【自己分析】の上位スキル。


ノーマルスキル

【魔力値増加】Lv1 魔力+10

【軽業】LV5 基本的なアクロバットスキル。テクニカルな動きがしやすくなる。


パッシブスキル

[アクロバット]LV3 敏捷値…器用値補正+40


アクティブスキル

[日常風景] 一般人マスタースキル。風景に溶け込み、よほどの違和感がない限り人から見つからなくなります。




 男はぷるぷる震えている。それは、チートじゃないことによることとか平均とかどっから測ってんだよとか空中から落ちただけでなんで一般人マスターしちゃってんだよとか……まぁとにかくいろいろと問題点があるが、これが一番重要だ。


 あたりを見渡す。

 樹海のど真ん中に、男はいた。

 大声で彼は叫ぶ。



「さぁて…ここは、どこだ!!」




 これが、生前「白井源示朗」、転生後は「アレン」という名の…名前の差が激しく、黒髪黒目なのに外人っぽい名前の若者の…物語の始まりだった。

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