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第13話 風氷神竜

その男は薄い笑みを浮かべると、空中を落下しているアレンに上から襲い掛かる。


「ハッ!!」


「【空中移動】ッッ!!」


切りかかってきた男をとっさに下に魔力を放射し避ける。


アレンは下方から短剣を構え、襲い掛かる。


「喰らえぇッ!!」


すれ違いざまに切りつけるが、盾で防がれ、突進を止められるアレン。


冷や汗がアレンの背中を伝う。


「っ!フン!!」


瞬間、男がアレンに向かい、緑と白銀の魔力を放射する。


それは風と氷の魔力…すべてを凍らせ、切り裂く必殺の魔術。


それをまともにくらうアレン。


「ぐあああああああああああ!!」


アレンは地面にたたきつけられる。


「アレン!!」


「アレンさん!!」


離れた所から駆け付けようとするクローディアとリリアにアレンは叫ぶ。


「ダメだっ!!逃げろ!!」


その声に、びくっとなるクローディアとリリア。

彼女たちの脳裏にあの時の…黒炎龍に襲われたときの記憶が蘇る。


同時に理解する。自分たちは無力だと。あの時より確かに強くはなったが、今度の相手はさらに強い…。

自分が行っては邪魔になってしまうと、本能で理解してしまう。


同時に、激しく悔しかった。


あの時にクローディア…彼女は誓っていたのだ。

アレンはパートナー。唯一無二のパートナー…。アレンが強くなったからと言って甘えず、自分も強くなってアレンを助ける…と誓っていたのだ。


そう思うと、足が止まってしまっていた。


リリアも同じ様に思っていた。


アレンを助けたい、と。あの時のようにクローディアを連れて逃げろ、と言われたくなかった。アレンとクローディアと並んで歩きたい、ともに戦いたいと願っていたのだ。

戦闘では役に立たないが、自分は回復なら役に立てるのではないか…と日々研鑽を積んできた…。



アレンを襲った男は足の止まったクローディアとリリアを見て、残虐な笑みを浮かべる。

それに気付いたアレンはすぐさま【闘神の威圧】を発動。

注意を自分の方に向ける。


「ガイゼルさん!早くクローディア達を逃がしてくれ!!守りながらじゃ、闘えない!!」


その言葉に、クローディアの目に涙が浮かぶ。

ガイゼルがアレンの本気を前にして、吠える。


「クローディアさん!リリアさん!今は逃げるぞ!エル!!とにかくここは危険だ!!君たちまで巻き込まれてしまっては元も子もないのだ!!」


ガイゼルがリリアとクローディアを促す。


「…もう、アレンが傷つくのは見たくないのよ!!」


クローディアが泣き、震えだす。


ー大切な人を、失うかもしれないー


そんな思いが、クローディアの頭をよぎる。


そんなとき、リリアが叫ぶ


「アレン君!!生きて、帰ってきて!!私たちを一人にしたら許さないんだから!!」


「お前らを、一人に、するわけがねぇだろうがっ!!分かったらさっさと逃げろ!!」


だが、アレンのそんな願いとは裏腹に、男の攻撃は激しさを増していく。


すさまじい剣裁きにアレンは焦りを増していく。


(やばいっ!!このままじゃ…みんな巻き込んじまう!!)


アレンは魔力爆散を使いたかったがこのままでは爆発に巻き込んでしまうため、使えない。

しかもここは外れとは言っても都市の中…爆発の影響でどのような大惨事になるかは火を見るより明らかだった。


男は魔術を使い、アレンを集中砲火する。


アレンはそれを町への影響を最小限を考え、防ぐ。


そんな攻防が繰り返されるうちに騒ぎに気付いた街の住民がそれを目撃する。


「な、なんだあれは!?」


「ひぃいいい!!あんなんに巻き込まれちまったら終りだ!!早く逃げろぉ!!」


「あいつ…闘技場で審判を受けてたやつじゃないか!?」


「何!?じゃあ…いまあの黒髪の男を襲ってる緑髪の男が闘技場を爆発させたのか!?」


混乱している町の住民は憶測を飛び交わせながら町の住民たちに避難するよう呼びかける。


安全なところで、今や遥か上空で戦っている二人を見る市民たち。



蒼の魔力が緑と白銀の魔力をかき消すさまはどこか幻想的だった。



だが、闘っているアレンはそれどころではない。


(まずい…こいつ…強すぎる…!)


どこか余裕の表情をしている、目の前の男…それはどこか楽しむように闘っているようだった。


(どうやればあいつを倒せる…?…手なんて考えてる場合か!?だが…ここで俺がコイツを倒さないと…みんな殺される……)


そして、思考しながら闘っているアレンは徐々に男に押されていく。


嫌な汗が頬を伝う。


先ほどから男の攻撃がアレンの腕や横っ腹をかすめる。


男の剣には魔術が纏わりついていて、切られたところが凍ってしまっていた。


アレンは思う。


(クソっ!!どうして俺たちが…こんな目に合わなきゃならないんだ!!絶対に……絶対にコイツを…こいつを倒して、クローディア達を守って見せるッッ)


なぜ、このような襲撃を受けているのかアレンにはさっぱりだった。


男の名前がファフニールということも、アレンにはどうでもよかった。


今はただ、生き抜いて、クローディアやリリア、エルやガイゼル達との一時の別れを惜しむ場面だったはずなのだ。


それを目の前の男は邪魔をしている。


アレンは怒りでどうにかなってしまいそうだった。


男の剣を受けるアレンは吠える。



「絶対に、お前を、倒してやるッ!ハアアアアアアアァァァッッッ!!」


受けた剣を無理やり押し返し、距離をとったアレンは、あの日…黒炎龍と戦ってから一度も出していなかったロングソードをインベントリから取り出すことに決めた。

アレンは黒炎龍襲撃のあと、あのロングソードは見かけなかった。

宿でクローディアにロングソードの行方を聞いたら、虚空に消えたように見えたといっていた。


だが、アレンは感じていた。あのロングソードの鼓動を。


いつも近くにあると確信するほどに。


(…あの後どうなってるか、見るのも怖かったけど…今はそんなことを言ってる場合じゃない!!呼び出すには…こう…かっ!?)



右の手を突出し、集中してロングソードを意識する。


(頼む、出てきてくれ…!みんなを…悲しませたくない!!)




…すると、虚空からきらめく蒼刃が出現する。




鈍く輝き、蒼い刻印が施されているそれは、アレンが望んでいたモノだった。


剣を見た瞬間、アレンの頭に情報が流れ込んでくる。




名前:死を超越せし神殺剣


攻撃力:89765423259


耐久力:∞


制限:装備可能制限あり…装備可能者:アレン


付呪効果:【不滅】

     【非装備時能力制限】(制限時:元の能力値の0.1%)

     【破滅の一撃制限解除】

     【超越する意思】

     【破滅殺し】

     【龍殺し】

     【神殺し】(未完成:所持因子不足)





そしてそれを手に取るとアレンの目の前でログが流れる。




ログ


ー能力制限が解除されました。ー


ー能力制限解除…デフォルトの出力・実際能力設定0.1%を解除しました。ー


ー能力制限解除に伴い、能力隠蔽が解除されます。ー


ーアレン 出力設定…100%ー







その瞬間、蒼い闘気が空中で爆発したかのようにアレンの周りを渦巻き始めた。

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