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閑話 守護天使と神2



「………おいクソ神、どういうこ「ちょっと黙ってて!!」


黒い部屋の中心ですさまじい速さで何かを操作している幼女。


「…!?この数値…どうなってるの!?意味が、意味が分かんないよ!?」


やっと解読を終えたアレンの能力値を見て、狼狽える幼女。


「あの、黒炎竜…裏切ったんですかねぇ…はぁ、やっぱりこんなクソ神…」


「ちょっとラズエル!あなた、どうにかしなさ「一緒に、だろう?こんなわけのわからん化け物を私の世界に送り込み、もっと強力な…あなたと同等の能力値を持つ『人族』を作り出すなんて…というか、あれはもう人じゃありません。化け物です。なんていう者を作り出したんです?ばか?あなたばかでしょ?死ねぇ!!「ゲブハアアアアアアアア!!」


キャラ崩壊するラズエル。もはや思考を放棄している。

ドロップキックされた神は立ち上がる。泣いているようだ。見苦しい。


「ちょっとまってよっ!?私だってどうなってるかわかんないよ!!これ…どう収拾をつけたものか…」


泣きながら真剣に考え始める神。


「ふぅ…まぁ、とにかく今は経過観察っていうところじゃないでしょうか?まったく…世界を破滅させる竜を破滅させるなんてなんていう力…あの力の源はなんなんです?クソ神、答えろや。」


「…ラズエル。あれはもはや力じゃない。次元を超越した何か、だね。」


神は思う。


(バグにより生まれし、鬼子、か。だけど本当にこれは偶然…?意図的ななにかを感じるよ…?でも、バグも、『死者の選定』も調べたけど、他人に手を入れられた形跡はなかったし、アレン君は相変わらず解読不能だし…)


「ねぇ、ラズエル。本格的に殺しにかかろうか。あのアレン君。」


その言葉にうなずくラズエル。


「ええ…そう、ですね。やはりそれが最善策でしょう。世界の秩序を守るために。しかしクソ神…アレを倒せる者はもう、あなた方神クラスの能力持ちしかいませんよ…?」


ふふふ…と不敵な笑みを浮かべる幼女神。


「居るんだよ。かつて、天界を恐怖に陥れた『風氷神竜ファフニール』…。彼ならきっとアレン君を倒せるはず。」


「…おい。アレをどうやって従わせるんです?ちったあ考えやがれ、クソ神。もし、頼み込んでOkもらっても確実に私の世界滅びるじゃないですか。大体前にあった天界戦争の時、アジ・ダハーカが天界侵攻軍のNo.3、そして、No.2がその、ファフニール…。あんたがあの時捕えたんだ…恨みを抱いていないはずがないだろうがっ!」


そう、風氷神竜ファフニール…彼は約2千年前に天界の長『最高神』に対して闘いを仕掛けた反乱軍の一員だ。性格は冷酷。彼が戦えば周りにあるものすべてを破壊し尽くすまで止まらない。そして、その実力は神に匹敵するほどの猛者だという。


しかも悪いことに彼はこの幼女神に捕えられたのだ。ぎりぎりまで一騎打ちをしていた幼女神は汚い手をつかい、彼を捕縛。永遠の暗闇に閉じ込めたという。


しかし、それでも幼女神は不敵に笑う。


「あなたの世界が滅びてしまうのは…アレン君を呪ってね…あんなの、放置しておく訳にはいかないでしょ?それに、彼との取引には私一人で行く。ラズエルは『最高神』から干渉されないようにしておいてね。」


「何か策でも?」


いつになく真剣な表情の幼女神が気にかかるラズエルは、聞かずにはいられなかった。

そして、幼女は嗤いながら答える。



「いつの時代も、いつの種族も、『愛』に弱いのはみんな一緒だよ…」





—————————




そこは暗闇だった。

紛うことなき暗闇だった。


そこに、『彼』は、佇んでいる。


その巨体は今は動くことさえ叶わない。


彼の目の前に、光が一つ、発生する。


金色の、彼にとっては憎悪、怒りの対象である光だった。

故に、彼は全力で攻撃する。彼に比べれば豆粒のような大きさの彼女に。


「ヴォオオオオオオオオオオオォォオオオオ!!」


すさまじい鳴き声を上げる『彼』の周囲には、すべてを切り裂く風と、すべてを凍らせる冷気が合わさった魔力が展開される。


それが一気に爆発し空間が、揺れた。


だが、光から現れた…バカみたいに小さい幼女には通用しない。

それは分かり切っていた。


しかし、彼の頭には疑問が浮かぶ。


≪……アテネ…か。卑怯者が、いまさら何の用だ?この我に食い殺されに来たのか?≫


静かに、静かに聞こえた彼の声だが、その声には今すぐにでも殺したいという殺気が込められていた。


幼女が口を開く。


「ふふふ…久しぶりだね、『風氷神竜』…君には、お願いごとがあってきたんだよ?」


それを聞き、嗤う彼。

目だけが未だ強い殺気を放っている。


≪お願い事…だと?おまえが我に頼むというのか?フン…却下だ。おまえを殺すということが、我の願いだ。先に我の願いを叶えさせろ。そうしたら話くらいは聞いてやる…≫



「それは、できない。聞いて。ファフニール。あのときはああするしかなかったんだよ…私だって君ともっと戦いたかった。一騎打ちを、あの輝いていた君との一騎打ち…あれほど夢中になったのは初めてだったんだよ…?」



それを聞き、目を見開く彼。

だが、すぐに目を閉じてしまった。

もうなにも信じられないといった様子で。

そして、湧き上がる怒りに彼が震える。



≪…今更何を言っておるのだ…!!あの一騎打ちは輝いてなどいなかった!おまえはあの、最後…我は相打つことも考えていたというのに…おまえがしたことを、我は忘れておらんぞ!!≫



それを聞き、悲しそうに眼をうるませる幼女神。



「私だって…したくて、した…訳じゃない…いま、こうしてあなたのところに来ているのは…あのときみたいに、『最高神』の奴に言われてきたわけじゃないんだよ…?」



何も言わない彼。

彼女は静かに語りだした。



「私は、あの時の最後の記憶が、ないの…気付いたらあなたは闇に閉じ込められていて、私は『最高神』…奴の目の前に居た…。なにがなんだかわからない内に戦争は終わっていた…私ね、ホントは…」



震える声でもなお、彼女はそれを伝える。



≪今更、それを言うのか…今更…あの時のことをすべて曝け出して…我にそれを言うのかっ!≫



「ええ…今だから言うの。私はあなたと永遠に一緒に居たかった…!だから、『最高神』に言って、あなたが一つの依頼をこなすだけで、自由になれる契約をしてきた…!」



その言葉についに目を開く彼。



「やってもらいたいことは一つだけ…それさえしてもらえれば、あなたは、自由だよ。あとは、望がままに生きて……」




≪…ついにお前は頭がおかしくなってしまったのか?≫




ありえない言葉に驚くしかない彼。



「そうだね…でも、あなたに自由になってもらたいのは本当…。」




しばし考えた後、彼は決断する。








——————————





彼が居なくなったあと、彼女は嗤う。



「やっぱり、男ってチョロい…ふふっ…神でも、竜でも、色恋沙汰には弱いものなんだね。しかし、私に気があるとはわかってたけど、あそこまでバカだとどうしようもないねぇ…」



独り言は、誰にも聞こえることはなかった。


『最高神』にも、『ファフニール』にも。

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