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第13話 アレンの一番長い2日間~中編Ⅰ~

「グォオォオオオオオオオオオオ!!」


世界の破滅を知らせる竜の一声が、静まりきった夜の都市に響き渡る。

あまりに大きすぎるその音量にアレンとクローディアは思わず耳をふさぐ。

同時に衝撃が二人に襲い掛かった。


「…クローディアっ!」


とっさにクローディアと黒炎竜の間にはいり、クローディアをかばうアレン。


「ぐぅぅぅうっ!!」


アレンは両腕をクロスし、闘気をまとって防ぐ。ようやくおさまった衝撃に顔をあげ、【ソレ】…【黒炎竜】を直視する。ゆったりとこちらを向く黒炎竜。


(くそっ!力量が違いすぎるっ!というかアジ・ダハーカだぁ…?なんでそんなもんがこんなところにっ!?…ログが更新されてるがそんなところじゃ…目標が…俺?)


ログにあった一文に、アレンの頭に疑問がどんどん湧いてくるが、そんな場合ではない。


「アレン!早く逃げないと!早くリリアさんを連れていきましょうっ!!」


あせるクローディア。近づいてくる死の予感が彼女の体を震わせる。


(まずい…これはまずいぞ…どうする?いまここで逃げたら、確実にこの町をあの竜は破壊するだろう……狙いは俺…のはずだ。うまく誘導できれば…少なくともクローディアは無事だろう…)


アレンは決断せざるを得なかった。まず、自分が助かる方法はない。とアレンはこの場に居る誰よりも早くそのことを理解していた。であれば、だ。


(周りを巻き込んで盛大に死ぬか、できるだけ被害の少ないように、門を抜けて、外に逃げるか…どっちにしても…最後まで抵抗するがな。)


幸いなことにリリアの家は北区の門の近い場所にあった。


だんだん周りが騒がしくなってきた。黒炎竜に気付いた衛兵たちが武器を持って駆けつけようとしていた。このままでは北門のほうは逃げ惑う人で通行不可能になってしまう。迅速に、アレンは実行せねばならなかった。だから、必要なことだけクローディアに伝えようと決めたアレン。


「俺は北門を抜ける!奴は俺を標的にしているらしい!!リリアさんを頼んだぞ!クローディア!」


大声で叫びパッシブスキル【アクロバット】を最大限にいかし、家の屋根に飛び上がるアレン。黒炎竜はアレンをやっと【標的】だと認識したようだ。アレンはすさまじい速さで家々の屋根を飛び移っていく。


「待って!アレン!?イヤっ!行っちゃダメぇええええ!!」


アレンの背中に精いっぱい叫ぶクローディア。


「グオオオオオォォッ!!」


だが、クローディアの叫びは、黒炎竜の鳴き声でアレンには届かない。


風を切り、アレンの方へ急降下する黒炎竜。


(くっ!早すぎる!これは…間に合わないかっ!?)


アレンが後ろから迫りくる黒炎竜に恐怖したその瞬間。


アレンの体は天高く飛び上がった。そう、黒炎竜に体当たりされたのだ。

衝撃で城壁を越え門の外まで飛ばされる。

遅れて、城壁ごと外に出てくる黒炎竜。


「ぐぅううううあああああああっ!!」


全身を駆け巡る激痛にアレンは意識を飛ばしかけたが、かろうじて意識は保っている。

地面に激突する前に体制を立て直し、足でブレーキを掛けながら着地するアレン。


(くそっ!ただの体当たりでなんて威力なんだ…)


こちらのすぐ近くまでくる黒炎竜。

その時、アレンの脳内に声が響く。


≪貴様、不死のものか…久方ぶりに楽しめそうだな…≫


間違いなくそれは黒炎竜の声だった。


「不死?いったいどういうことだか知らんが、なんで俺を狙う!!」


アレンは疑問を率直にぶつける。


≪む?だが、覚醒していないのか…つまらん。全て滅ぼすのもいいが、少しは歯ごたえのあるやつを期待したのだがな…≫


その言葉に、殺す予定は変わらないと予感したアレンは、携帯していた短剣を取り出し、構える。


(くそっ!不死とかなんだか訳がわからねぇ!)


頭に疑問符しか浮かばないアレンだったが、これだけは分かった。このままでは殺される。と。


「うりゃああああああ!!」


青い闘気を纏い、短剣で黒炎竜にきりかかるアレン。

だが、その刃は黒炎竜の鱗の前で、見えない壁に阻まれてしまう。


(切れない!?どういうことだ!?)


≪たかが人間の分際で我に刃向うとは…怒りを通り越してあきれしか起こらんわ…≫


黒炎竜は全身の魔力を爆発させた…ようにアレンは感じた。

その瞬間、すさまじい波動がアレンの全身を襲った。


「ぐわああああああああ!!」


十メートルほど吹き飛ばされるアレン。


≪なんと脆弱なものよ…一握りの魔力解放にも耐えられんのか…≫


憐みさえこもっている黒炎竜の声が聞こえた。


(ここで…俺は死んじまうのか…?)


朦朧とする意識の中、ゆっくりと歩み寄ってくる黒炎竜をアレンは見た。その一歩一歩が大地を揺らし、空気を震わせる。


≪一思いに、楽にしてやる。なに、苦痛は一瞬だ。不死でない今の貴様ならな。≫


黒炎竜がその凶悪で、強靭な腕を振り上げる。




そんな時、声が聞こえた。先ほどまで一緒にいた。アレンが愛してやまない少女の声が。


「アレンを殺させはしないわ!ドラゴン!私が相手になってやる!!」


アレンと黒炎竜の間に、両腕を広げて立つその少女を見て、一気にアレンの意識が覚醒する。


「ク、クローディア!だめだ!!逃げろ!!」


≪ふん…獣もどきが我の邪魔をするか…死ねぇ!!≫


黒炎竜の鈍く光る鉤爪がクローディアに迫る。



アレンは焦る。最愛の少女が、これから一緒に旅をする約束をした大切な人が…死んでしまうかもしれない…アレンはそう感じた。




(だめだ…!それだけはだめだ!守るって約束したんだ!なんでもするって約束したんだ!絶対にここで死なせる訳にはいかないだろう!!畜生!動け!動け!動け!)




胸によぎるのは彼女との思い出…街角で偶然会って、偶然冒険者ギルドに入る仲間で…ヨーグとの登録試験を終えたあとの最高の笑顔が、アレンの頭をよぎる。

迫りくる鉤爪。死を覚悟したのか、クローディアは目をギュッとつむる。


その時、アレンの中の『何か』が目覚めた。










「クロォオォォォォオォオディアァアアアアア!!」









瞬間。アレンの体が青く光り輝き、すさまじい力の流れが辺りに撒き散らされる。

そして……




ーキィィイイン





世界を破滅に導く竜の一撃を、アレンは短剣一本で受け止めていた。


「ア、アレン!?」


叫ぶクローディア。それもそのはず、アレンの今の姿は先ほどまでの黒髪の青年ではなく、月夜に煌めく白銀の長髪を風になびかせ、体も一回り大きくなり、筋骨隆々と言ったところか。そのような容姿になっていた。


アレンの視界の端で、ログが更新されていた。


ログ


ー能力適用条件クリアー

ー【不死族変化】Lv1を発動ー

ー能力値が以下のように変動します。ー


名前:アレン

種族:不死族 LV-

職業:超越者 LV-


STR 285000

DEF 265000

INT 200000

SPD 290000

TEC 290000


体力 500000

魔力 650000


所持スキル


固有

【異世界言語理解】LVー

【メニュー】LV-

【不死】Lvー

【能力隠蔽】LV-


ノーマルスキル

【魔力値増加】LV200

【周辺探索】LV-

【能力値増加】LV250

【軽業】LV5

【剣術】LV250

【体術】LV250

【刻印付呪】LV-


パッシブスキル

【アクロバット】Lv30


アクティブスキル

【瞬光】LV10

【日常風景】 LV-


ー残り命数、10000000ー



≪ほう!!覚醒したか!!ハッハッハ!!これで楽しめそうだなぁ!?≫


本当に楽しそうに黒炎竜は嗤う。

アレンは自分の姿が変わったことにも、力が増幅していることにも気付いた。がそれを検証する間を与えてくれる相手ではないと頭を振り払い、クローディアを守りながら、黒炎竜との戦闘を開始した。


「はぁああああ!【瞬光】!!」


青く光り輝く短剣で、黒炎竜の片方の腕を切り飛ばすアレン。


≪ふっ!!ッハッハッハ!!こちらもこれでようやく…タノシメルナ!!≫


腕が飛んだことなど気にも留めない黒炎竜。


先ほどの黒炎竜とは桁違いの魔力が黒炎竜の体から流れ出す。

そして暗い闇が黒炎竜の全身を覆ったかと思った、次の瞬間。


全身の闇の解放とともに、すさまじい魔力の波動が再びアレンを襲う。

とっさにクローディアをかばうアレンだが、その衝撃は不死族となった体でも防ぎきれないほどだった。


そして、濃い闇が晴れ、黒炎竜がいるはずの場所見たアレンは、自分の目を疑った。なぜならば…


「さぁ、これでようやく実力がだせるな…」


凶悪な黒色のとげとげしいフォルムの鎧を着こみ、両手に番の黒い炎を纏った剣を携えた黒髪の青年が、そこに立っていた。


「我の名はアジ・ダハーカ。世界を破滅に導くもの…だ。覚悟せよ、不死族。キサマを、殺しつくすのが我の役目だ。さぁ!殺しあおうではないか!!」



それが、不死族となったアレンとアジ・ダハーカの凄絶な闘いの始まりだった。

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