第8話 研修初日・・・変態は今日も絶好調だ!
近場の森に到着したアレン、クローディア、ヨーグ。
「ふぅぅぅぅ・・・ここまで来るとホント疲れる「バカ野郎!いきなり狩場に来て座り込むヤツがいるか!クソガキ!」
ーガツン
と一発キツいのをもらってしまった。
「痛ってぇなぁ・・・悪かったって。こういうのはまず周辺の「俺が講釈するから黙ってやがれ!!」
「はい」
クローディアはおとなしくしている。デキる女って素晴らしい。
「さて・・・到着して早速だが、クソガキとクローディアちゃんを【他者分析】スキルを使って分析させてもらっう・・・まずは、クソガキ」
スキルを使ってる気配をアレンは感じた。
いかついおっさんにじっと見つめられて喜ぶ趣味はないが、殴られると痛いので抵抗しなかった。
「おい・・・なにもんだ?おめぇ?」
疑うようにヨーグが問いかける。
「・・・へ?ただの数日前に冒険者目指しはじめた元・一般人ですけど・・・。」
ちょっと怖い雰囲気を出しているヨーグに後ずさるアレン。
「能力値の値がおかしいっつてんだよ!!クソガキ!この能力値だとFランク上位の冒険者並みだぞ!?ついここ最近の数日でどんなことがあってもここまで能力は上がるわけがねぇ!」
「え~・・・そんなこと言われても・・・Fランク冒険者の上位って・・・正直微妙じゃ・・・」
ーガツン!
本日二回目のヨーグ氏による鉄拳である。
「冒険者甘くみんな!クソガキ!お前と同年代の一般人がお前のその能力値まで、超短期間で行くにゃ、かなり特殊な修行をつまにゃならねぇし、正直、耐えられるもんじゃねぇ・・・。つまり、怪しいんだよ。クソガキ。お前、どこのギルドのもんだ?返答次第によっちゃあ・・・テメェ、殺すぞ?」
ヨーグの本気の殺気をその身に浴び、あわてて誤解を解こうとするアレン。
「ちょっと待ってくれ!俺はそんな大したもんじゃないし、1か月前、森で目覚めたときから前の記憶がないんだよ!!だから、自分が本当は誰なのか、とか全くわかんないんだって!」
目を見開くクローディア。
「あなた・・・意外と苦労人だったのね・・・」
「なに・・・?それじゃあお前は記憶喪失ってやつか?」
不思議そうに聞き返すヨーグ。
「そうだよ!なんか知らんがいつの間にかこんな能力値なんだ・・・。そんなに大したもんじゃないから大目にみてくれよ?大体やっとFランク上位ぐらいになった冒険者が、わざわざ他のギルドから鞍替えして、何をしにくるってんだ!」
「・・・ふむ。ただお前の胆力を鍛えてやろうと思ってやってみたが、なかなかいい情報を知れたな・・・」
ヨーグがとんでもないことを言い出した。
憤慨するアレン。いきなり殺気をあてられたのだ。腹も立つというもの。
「おい・・・てめぇっ!俺を試しやがったな!クソオヤ「うるせぇ!ここは俺が教官だ!クソガキ!」
「はい・・・(泣)」
(めっちゃこえぇぇ・・・このヨーグとかいうおっさん・・・ギルドであったときはクローディアがらみだったからつい、喧嘩吹っかけるような言葉吐けたけど・・・身体の差が勝てないと物語ってるよね・・・)
ちなみに、アレンの能力値はこのような感じだ。
名前:アレン
種族:人族 LV6
職業:冒険者(未承認)LV-
STR 120
DEF 115
INT 80
SPD 160
TEC 170
体力 750
魔力 200
所持スキル
固有
【異世界言語理解】LVー
【メニュー】LV-
ノーマルスキル
【魔力値増加】LV5
【周辺探索】LV-
【軽業】LV6
【刻印付呪】LV-
【剣術】LV6
【体術】LV6
パッシブスキル
[アクロバット]Lv3
アクティブスキル
[日常風景]
1か月の間、リリアの家で修行(という名の家事)の合間にちょくちょく森にいって修行を重ねたアレンは、成長していたのだ。
ヨーグがクローディアのほうを向いて
「さぁ、続きはお嬢ちゃんだ。ブフォッ!?」
いきなり噴き出すヨーグ
(あぁ・・・そりゃなるよね・・・)
「お、お嬢ちゃん!?あんた本当にこのクソガキに無理やり連れてこられたわけじゃねぇんだよな!?」
「そうよ?私が、私の意志で冒険者になるって決めたの。アレンが守っててくれるって言ってたし。そんな簡単に死ぬつもりもないわよ。」
(クローディアさん・・・ヨーグに一歩も引いてないよ・・・気迫でこっちまでピリピリしてくるよ・・・)
「ま、まぁ・・・SPDとTECはあるようだからな・・・スピードを生かした高速戦闘系とか目指してみるか?お嬢ちゃん?まぁ、俺は敵を引き付けて、パーティーを守る【タンク】っていう役目が主だから、アドバイスはできねぇが」
「そうなの・・・?残念ね。だけどいいわ。自分で強くなるもの。」
「そ、そうかお嬢ちゃん・・・そしたら、俺からは何もいわねぇ、おいクソ「わぁってるよクソオヤジ!俺が絶対クローディアしなせやしねぇから!」
アレンが強く言うと、ヨーグは満足そうな顔をした。
——————
「さて、親睦も深めたことだし、まずは野草の見極めからだな。二人とも。よくその草を見とけよ・・・?で、なにかピンとくるもんがあったらステータス確認の欄を見てみろ。【他者分析】LV1が身についてるはずだ。」
アレンは雑草をじーっと見つめる。隣にクローディアが座って二人ならんで雑草を熱心に見つめる。
(全然ピンとこないな・・・)
「なぁ、ヨーグのおっさん。こんなんでホントに【他者分析】スキルなんて使えるようになんのか?」
「ふん!まだ始めて数分しかやってねぇだろうが!!簡単にスキルが覚えられると思ったら大間違いだぞ!!いいから黙って15分くらい眺めてろ!!」
「へいへい・・・」
アレンとクローディアはそのまま20分ほど観察を続ける。
そして数十分後・・・
「っ!?」
体を小さく震わすクローディア。
「どうしたクローディア?」
あわててステータスを確認するクローディア
「アレンアレンっ!私覚えたわよっ!」
笑顔でアレンの服の裾をつかむクローディア
(かわいい!!・・・だが・・・なんで俺は覚えていないんだ・・・)
「よ、良かったじゃないか!おめでとう!クローディア!!」
「おし、よくやった嬢ちゃん!・・・おいクソガキ・・・残念だが、お前に【他者分析】は無理なようだな・・・適正がなかったと思って諦めろ。」
「え~そんなぁ!?」
がっかりするアレン。だがある可能性が彼の頭を掠めた。
(スキル取得欄まだみてなかったな・・・クローディアの【メニュー】にはスキル取得欄がなかったから・・・もしかすると・・・)
1か月前に開いたっきりほとんど開かなかったスキル取得・強化欄を見る。
だが・・・
(ない!なぜだ・・・本当に適正がないだけか・・・フツーにショックだな・・・)
「ア、アレン!そんなに気を落とさないで!ほら、私たちはパーティーでしょ!私がいるから大丈夫よ!」
(なんということだ・・・年下の女の子に慰められるのがこんなに辛いとは・・・)
だが、そこは男アレン。フォローしてくれた分は元気にならねばならないと思う。
「あ、ああ・・・!クローディアがいるからな!大丈夫さっ!」
「よし、じゃあつぎは野草の種類の勉強だな・・・」
アレンたちは森の奥の方へ進む・・・
その後は日が落ちる手前まで野草や果物の知識を詰め込まれるアレンとクローディア。
「・・・っと。まぁいざという時の食糧の知識はこんなところだな・・・さぁ、つぎは夜営の準備だ。」
「おぉっ!ついに・・・クローディアと寝れ「死ね!クソガキ!!」
ーガツン!
盛大なヨーグの鉄拳の音が森に響いた。
インベントリに入れておいたテントを取り出す、アレンとヨーグ。
ヨーグに教わりながら、ときどき殴られながら作業を進めるアレンとクローディア。
そして、数十分かかって、火をおこし、魔物が嫌うという上級魔物の体液から作った香を焚く。
「よし・・・!できたぁああああ!!」
「ふぅ・・・教えながらだとやはり疲れるな・・・おい、クソガキ!お前のインベントリにある食糧で今日は飯を作るぞ!!」
「へい!親方!」
すっかり弟子になりさがるアレン。ホントにコイツが主人公で大丈夫か?
「ちょっとまって!料理なら私の出番よ!」
ドン!と胸を叩くクローディア。
「おぉ・・・!ついにクローディアの手料理が食べられるのか!!」
「じゃあアレン!材料を出して!」
(そうか・・・俺の買ってきた材料が消費され・・・いかんいかん・・・じゃあパスタだな。)
そう決めたアレンは具材と新鮮な水を出し、大きめの石を加工して、刻印付呪で【炎属性】と【強弱設定】をつけた簡易かまどを取り出す。
なぜかヨーグがすごく驚いていたが、アレンは気にせず使い方と、パスタの作り方をクローディアに教える。
「さすが家事レベルが高いだけあって、クローディアの作ったのはおいしいなぁ♪」
「でしょう!?今後も私に料理はまかせてね!アレン!」
なぜか好感度がアレンの好感度が上がっていたようで、顔を少し赤らめながら照れるクローディア。
「結婚してく「クソガキ!死ね!」
ガツン!
一発、変態を殴ったヨーグはスッキリしたように、ふう、と息をついて、すこしクローディアの作ったパスタを分けてもらう。
ヨーグは自分の分の保存食があったようで、それを出して食べていた。
「さすが嬢ちゃんだ・・・うまいな・・・ところでアレン。あのかまどはお前が買ったのか?みたことのない魔術刻印だな?」
「あ~・・・気にしないでくれるとありがたいんだが・・・」
しばらく怪しい・・・とヨーグは見てくるが
「まぁ、秘密にしたことを探るのは冒険者のマナー違反だな。だがあまり人前でださん方がいいぞ?」
「なんで?そんなに珍しいもんなのか?これ。」
不思議そうに聞くアレン
「まぁ、確かに高価で珍しいが。正直持ってるのがお前みたいなやつだと、いつ他の野盗に襲われるかわからん。嬢ちゃんを守りたければ、そういうところも気にしないとダメだぞ?クソガキ」
「ふ~ん・・・そんなもんなのか・・・わかった。気を付けるよ、親方。」
すっかり仲良くなったアレンとヨーグ。
明日の予定を少し話したあと、それぞれのテントに戻る。
ーーーーー
さわさわ・・・
「ちょっ!アレン頭撫でないで!」
「え~・・・ちょっとでいいから!ちょっとで!」
変態が美少女にさわらせろ、と迫る図がそこにあった。
「もう!おとなしく・・・にゃあぁぁっ///」
執拗に耳をさわられたクローディアは布団の上でビクビクしている。エロい。
「ふふふっ・・・ここならあのクソオヤジにじゃまされずに「このクソガキがぁ!!」
ーガツン!
ついに、意識を失う変態。
「隣まで聞こえてきてんだよこのクソガキ!盛るのは研修が終わってからにしやがれ!!」
結局その日は気を失ったまま、アレンは寝てしまった。
赤い顔をした黒猫が「ちょっと期待しちゃった・・・」と呟いているのを聞いたのは、だれもいない。




