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自衛隊流の蝿退治

ドラゴンフライ

英語では「トンボ」のことだがこの世界ではドラゴン並みにでかい蝿のことらしい。野口が細かい説明をしてくれたが聞いていない。

あの後、ギルドマスターの提案を受けて俺はいま平原に一人で向かっている。誰がどの依頼を受けるかをくじ引きで決めた結果、異世界に来てまで蝿退治をすることになった。ちなみに、監視ということであのギルドマスターが先に行きその関係上、山名たちは後日依頼を受けるので村で留守番をしている。

また、今回の勝負には特にルールは無い。つまり、依頼遂行中に殺し合いが発生しても遂行すれば無かったことになる。そのため、ギルドマスターもそうなった場合は手出しはできない。本人はあくまで不正をやらないように見張るだけの存在だ。


「まあ、こいつさえあればどうにかなるか。」


俺は草原に向かうために乗っている兵器の装甲を軽く撫でた。













「なっ、なんだそれは!?」


「何って、俺の武器ですけど。」


「どこの世界にそんな馬車みたいな武器があるんだ!!」


ドラゴンフライの生息域である平原に着いたとき、対戦相手の男におもいっきり突っ込まれた。ギルドマスターは声には出さずとも目を丸くして、軽く唖然としている。


そう、俺が召喚してここまで乗ってきたのは「ガンタンク」、「蝿叩き」の愛称で呼ばれる自衛隊の主力自走高射機関砲。わかりやすく言えば対空戦車「87式自走高射機関砲」のハッチから身を乗り出している。


87式自走高射機関砲

1987年に自衛隊がドイツの対空戦車「ゲパルト」をお手本にして製作し、採用した純国産対空戦車。そのため、外見は「ゲパルト」とさほど変わらないが電子装備は超優秀な日本製で占められている。開発当時はまだソ連の脅威があったため北海道を中心に配備されており、現在では北海道か総合火力演習こと総火演でしかお目にかかれないレア戦車だ。しかし調達費が15億円と高価なので2002年までに52両しか製作されなかった。


「ふ、ふん!そんな訳のわからないもんよりこいつがありゃ俺の勝利は確定よ!」


そう言って男がドヤ顔で持ってきた袋を開けると腐って腐臭を放つ何かの肉があった。おそらく、蝿だからそういったものに引き寄せられるのだろう。


「よくあんな短時間で準備できたな、そんなもの。」


「どうだ!驚いたか!」


「さて、そろそろ始めるとしよう。」


ギルドマスターが腹が立つドヤ顔をした男の話を打ち切る。俺はハッチを閉めて中の椅子に座りエンジンを起動、空冷式10気筒ターボチャージドディーゼルが唸りを上げ、対空レーダーが起動し、車体左右に付いているスイスのエリコン社製35mm機関砲の弾丸を装填し青白いレーダー板を凝視する。


これで戦闘準備は整った。


さあ、盛大な蝿退治を始めようか。


さっそくレーダーがドラゴンフライらしき飛行物体を捉え、砲塔を旋回させる。念のため運転用の小窓からその方向を見る。すると、ゴマ粒みたいな点が遠くにたくさん、それも数えるのが鬱になるほど見え、それがどんどん大きくなり巨大な蝿になった。この距離でも羽音が聞こえてくる。おそらく近くに来たら虫嫌いな人なら気絶するだろう。正直、見ていて気持ちのいいものではない。


「対空システムオンライン、仰角68度に設定、自動追尾よし、火器管制システムオールグリーン、機関砲冷却装置作動を確認、撃ち方はじめぇ!!」


毎分550発の連射速度を持つ35mm機関砲が工事現場の掘削機のような轟音を放ち、空薬莢がシャワーのように排出され、打ち出された弾丸がドラゴンフライを次々とミンチに変えて撃墜する。


「ふはははははははははははは!!どうした!Bプラス級はこの程度かぁぁぁぁ!!!」


俺は車内で冷静なときなら恥ずかしくなってしまうことを叫びながら撃ちまくっていた。


たまにうつ

たまがないのが

たまにきず


という自衛隊を表現する川柳があるように自衛隊はめったに実弾を撃たず、肝心の弾丸も予算のせいで思うように調達できない。理由は、自衛隊を非難することしか能が無い平和主義団体(笑)や某南半島国家が予算を増やすと「軍国主義」と騒ぎたてるからだ。


話が反れたので戻そう。


「てめぇこの野郎!!人の獲物を横取りすんじゃねぇ!!」


「これが……、彼らの戦闘………。」


すっかり蚊帳の外になった男とギルドマスターは目の前の光景に唖然としていた意識を呼び戻す。


「そんな馬車モドキなんざぶっ壊してやらぁ!」


男が剣を抜いて87式に斬りかかるが剣ごときがチタン合金の装甲に致命傷を与えられるはずもなく、甲高い音を立てて弾かれてしまう。それでも男は連続攻撃を与えれば壊せると思っているのか、懲りずに攻撃する。

日本が世界に誇る技術者へんたいたちがロマンと愛情を込めて一から設計し、最強にして最終兵器である「町工場のオヤジたち」が職人としての誇りを懸けて製作した物がその程度で破壊できるわけが無いが、正直鬱陶しい。


「うるさいぞ。」


俺は思わず振り向いたが、今の87式は俺の意思と連動、つまり俺が動けと思えば動き、撃てと思えば撃つという状態になっているので


「ごふっ!」


「あっ、いっけね。」


砲塔も一緒に振り向き、昔のコントのように銃身が男の頭部を強打し、しかも当たり所が悪かったのか気絶してしまった。


「ま、ルールは無いんだからいっか。」


俺はあっさりと開き直り、男を轢かないように慎重に移動してドラゴンフライを倒しまくった。そしてとうとう最後の一匹を撃ち落した。


「対空レーダークリア、飛行物体視認できず……、状況終了っと。」


「すごい……。ドラゴンフライがこうも簡単に。」


「で、これは俺の勝ちですよね?」


「あ、ああ。討伐数は合計74匹、依頼内容も達成、文句なしだ。」


ギルドマスターが驚きながらも俺の勝利を宣言。いまだに気絶している男をギルドマスターが乗ってきた馬車に放り込み、村へと帰還する。


こうして、最初の依頼は俺の圧勝で終わり、盛大な蝿退治は終了した。









ドラゴンフライ

体長は10mにもなる巨大な蝿で常に集団で行動する。死肉を好むが決して無害ではなく、過去に村一つを壊滅させた。目立った弱点はないが、強いて言うなら巨体故に動きが遅く、長時間の飛行はできない。羽と甲殻は上級素材の一つだが加工が難しく、絶えず悪臭がするため市場では安く買い叩かれてしまう。

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