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コードウェル家の家庭事情

「諦めないで!!ほらもうすぐだから!しっかりして!!」


手放しそうになる意識を必死で掴み、俺は半日間襲いくる敵に抗い続けていた。


フィオナさんが俺にずっと、休むことなく声援を送り続けてくれる。


助けを求める事はできない。今の彼女にはこれが唯一できる事なのだから。


なけなしの気力を奮い立たせて、限界が近い体に鞭を入れその根源をにらみつける。


今俺が抗い続けている敵とは何かというと


















「ブヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!」




全力疾走する馬だ。






そう、全力疾走する馬を必死に乗りこなそうとして色々グロッキーになっているのが今の俺の状態だ。


「このぐらいで根を上げるなんてだらしないですよ!!」


「あんたのせいだろうがァァァァァ!!!!」


事の発端は半日前にさかのぼる















「ええ!馬に乗れない!?」


首都に向けて出発する時、フィオナさんが盛大に驚いた。


俺はてっきり馬車で行くものだと思っていたんだが、どうやら馬に乗っていくようだ。


「冒険者で馬に乗れない人なんてめったにいませんよ。」


「俺の世界じゃ乗馬なんて金持ちの道楽みたいなもんなんですよ。」


「困りましたね~。」


フィオナさんが額に手を当てて考える。


なら馬車を使おうと言ったんだが、どうやらたった2人のために馬車を用意してくれるほどギルドは懐に余裕がないそうだ。


それに、フィオナさんの計画では馬で色々近道しながら今日中には首都につくつもりらしい。


「仕方ありません、こうしましょう。」


案が纏まったようなので、乗れない身としては素直に従おう。


「あなたを信用してないってわけじゃないですが、私の後ろに乗せて行くのは流石に考え物なので短時間で覚えてもらいます。」


「短時間で?」


「そうです。まずは馬に乗って手綱をしっかりと持ってください。」


言われた通りに馬に乗り、手綱をしっかりと握った。


たぶんこの後、牧場でやるような体験乗馬のようなことをやってから実際に走らせるんだろう。


ずいぶんスパルタだが、文句を言える立場じゃない。


「それでは。」




フィオナさんが馬の「斜め後ろ」に移動する。



え?




「出発しましょう。何事も経験です。」


「いやちょっと待って!普通しばらく歩かせて慣れてから」


「えいっ。」


俺の抗議は無視され、フィオナさんが愛用の杖で馬の尻を叩いた。


馬が鳴き声と共に前脚を上げ、俺は必死で手綱を掴みなんとか振り落とされずにすんだ。


馬が白馬なので俺がマントを着用していればあのフランスの英雄、ナポレオン・ボナパルトの肖像画のような状態になるんだろうが、そんなことを考える暇もなく白馬は全力疾走する。


「なんだ、乗れるじゃないですか。」


フィオナさんがいつの間にか満面の笑みで俺に併走する。


いつか戦闘機に乗せて音速のままアクロバット飛行してやると心の中で誓い、俺は振り落とされまいと手綱を握りしめた。


















さて、文字通り野を超え山を越え日が落ちかけた頃にやっと俺達は首都、ミレヴァに到着した。


首都というからには多くの人が賑わっているのを想像していたんだが、生憎今俺たちがいるのは貴族たちの屋敷が立ち並ぶ言わば高級住宅街。騒がしいわけもなく時折馬車や使用人のような人とすれ違う程度だ。



ここで話は長くなるがフィオナさんの実家、コードウェル子爵家の話をしよう。


子爵とあるように爵位的には真ん中あたりで特に高いわけではない。しかし、コードウェル家は代々優れた魔術師を輩出している名門で他家から一目置かれている。


特に先代当主でありフィオナさんの祖父、ニック・コードウェルはかつてエルトレイア魔術学院の学長を務めた事があるらしい。


ニック氏は15年ほど前に亡くなり、現在の当主の名前はグラハム・コードウェル。彼女の父親だ。


コードウェル家の家族構成は


当主であり、父親のグラハム・コードウェル。


その妻でフィオナさんの母親、シェリー・コードウェル


兄である長男、ジン・コードウェル


弟の次男、カイル・コードウェル


姉の長女、ターニャ・コードウェル


同じく姉である次女のフランシスカ・バーナードと彼女の双子の妹、メリッサ・ランバート


そして末っ子のフィオナ・コードウェル


以上、二男四女の8人家族だ。


ただし、家族が全員集まるのは少ないそうだ。


長男のジン氏は軍に所属していて今は国境近くの要塞に配属されている。


次男のカイル氏はエルトレイア魔術学院で寮生活中。


次女と三女はすでに他家に嫁いでいる。


長女のターニャ氏については詳しく話してくれなかった。


別に亡くなった訳ではないらしいが、何か事情があるのだろう。


「さて、着きましたよ。」


馬から降り、門の前に立つ。


「貴族相手の礼儀作法なんて知らないんですが。」


「大丈夫よ。両親はそのくらいで怒るような人じゃないから。」


その言葉に少し安心し俺は屋敷へと足を進めた。

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