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ベリーハードなチュートリアル

感想、批判よろしくです。

古今東西、異世界への転生を題材にした小説や漫画などは平原や宮殿、はたまた怪しい魔法使いが禁忌と呼ぶ魔法を使用した場所から始まることが多いが、俺たちはというと


「国境のトンネルを抜けると、そこは森だった。」


「どっちかつうと樹海だよな?」


扉を開けて最初に出迎えたのは、広大な大平原でも勇者になってくれと頼む王様でもマッドサイエンティストのような魔法使いでもなく、鬱蒼とした森だった。


「とりあえず、能力が使えるかどうか試してみるか。」


とりあえず、俺は頭の中で拳銃の代表格と名高いベレッタM92Fを思い浮かべる。

すると、手の周りが薄っすらと光り手にはベレッタM92Fが握られていていて、まるでついさっきまで使用していたかのように使い方が頭の中に入ってきた。

それをプロの軍人のような慣れた手つきで安全装置を外し、スライドを引いて薬室に9mmパラベラム弾を装填、近くの木に銃口を向けて構えて引き金を引く。

「パン」という乾いた銃声が聞こえ、反動を体で受け止め、弾丸が木に命中する。ちゃんと作動するようだ。


「すげぇな。なら俺も!」


今度は山名が能力を使い、手が光ると一本の日本刀が握られていた。

鞘から刀を抜き、軽く構えたり振ったりする。よく見ると刀の刃が峰、つまり逆刃になっている。

あの幕末に「人斬り」と呼ばれ恐れられた流浪人の愛刀だ。

本人も満足したのか、鞘に収めて腰に挿す。


ふと、横を見ると芥川が一目見ただけでもわかるほどかなり使い込まれた絵画用の筆で木に何かを描いている。そして描き終えたのか筆をしまうと描いた絵に手をおいて引っ張る動作をする。

すると、芥川の動作に合わせるかのように絵が盛り上り、手には一本のナイフが握られていた。

その動作を繰り返し2、3本を手に持ち絵を描いた木に向かって投げるとすべて描いたナイフの絵に命中し、「トス」という軽い音を立てて突き刺さり、絵が傷ついたのか刺さったナイフがまるで砂時計の中の砂のように光となって消えた。


「最後は、俺だな。」


今度は野口が視力を猛禽類、その中でも最大の鷹の視力にすると視界が今までとは比べ物にならないくらい鮮明になり、空を見上げるとまだ昼間なのにはっきりと星が見えた。

次に聴力を最大でおよそ10km先の音も聞こえるといわれるゾウに設定し、周囲の音を聞く。

鳥の鳴き声、生き物の足音、風で木々が揺れる音。すべてがまるで手に取るかのようにわかる。


「こんなところかな?」


野口が能力がちゃんと使えることを確認し元に戻そうとしたそのとき。遠くから、それも人間ならまず聞こえないくらいの距離から異様な音を察知した。


「おい、どうしたんだ?」


「ちょっと黙ってて!」


尋ねた芥川を黙らせ、音を拾うことに意識を集中する。


(地響きに近い音、それに人間サイズの二足歩行動物の足音が二つ、テンポが速い……走ってる?それに風斬り音のような音は何?っつ!?足音が一つ消えた!?)


うわあああああああああああああああああああああああ


野口は一番聞きたくない音を聞いてしまった。

人間の断末魔のような悲鳴、その後聞こえるグチャッという肉食動物が獲物を咀嚼するかのような音。音が発せられている場所で何が起こっているのか。

一つしかない解答は導きだしたが脳がそれを理解するのを拒絶し、胃の内容物が込みあがってくる。


「野口……?」


何かを察したのか、俺が声をかける。


「……………。北西の約1km地点で誰かが戦ってる。さっき一人死んだ。でももう一人はまだ生きてるけど、たぶん長くはもたない。」


俺は3人にアイコンタクトを送る。


3人が頷き、音のしたほうへと走り出した。











私は一心不乱に走り続けていた。買ったばかりの靴はボロボロになり、奮発した皮鎧には仲間の。いや、「仲間だった」男の血が一杯に付着して元からこの色だったかのように真っ赤に染め上がっている。だけど、今はそんなことを構うことも、死んだ仲間を弔うことはできずにただただ走り続けている。

この森林、「ウルガ森林」は国一つすっぽりと納まってなおお釣りがくるぐらいの広大な面積を持つ。と、どっかの偉い学者が主張していたのを聞いたことがある。

そしてこの森には強いモンスターは出現せず、自分のような駆け出しの冒険者であるランクDマイナス級がこれから先、一人前の冒険者になるための基礎を教えてくれる先生のような存在だ。

そのため一番強いモンスターでもランクCマイナス級しか存在せず、新米が安心して基礎を学べる「はずだった。」

記念すべき初の依頼である薬草取りを無事に終え、ギルドで知り合い、パーティーを組まないかと誘ってきた自分と同じランクDマイナス級の男と意気揚々と帰る途中に、悪夢は始まった。


ウルガ森林にはランクCマイナス以上は存在しない。


それなのに。


キシャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!


なんで「ランクAマイナス級」の化け物がいるのよ!?


遭遇したときのことはよく覚えていない。でも、隣を走っていた男があいつに殺されて断末魔をあげたときのことは鮮明に覚えてる。その時、不謹慎だが「自分じゃなくて良かった。」と思ってしまった。そして、罰が当たったのだろうか。石か何かにつまずいて転んでしまった。


もう助からない。


そう思った私は意識を手放した。


近づいてくる人の足音にも気づかずに。










「な……なんだよあれ……?」


音のした場所に着いた俺たちは絶句した。そこにいたのは10代後半と思われる少女。それだけならまだいい。しかし、その近くにいた生物には思わず息を呑んだ。

鉄板のような色をした胴体、対になるように胴体から生えた計6本の脚、三角形のような形をした頭に巨大な目、10mはあろうかという大きさ。それはまるで巨大なカマキリのような生物だった。


「ギガント・マンティス。ヴィラーシャ公国第二級驚異生物に登録されている体長7~10mの巨大なカマキリ。幼体ならばランクはCマイナス級で駆け出しの冒険者でもしっかりとした装備ならば簡単に倒せるが、成体だとランクは跳ね上がりBプラス級のパーティーか対龍装備のランクAプラス級の冒険者でないと討伐は困難。ブレード状の鎌は龍の鱗と同等の強度を持ちなおかつ加工が比較的簡単なので市場では法外な金額で取引される。唯一にして最大の弱点である鎌の付け根部分は包丁程度の切れ味でも切断は可能。万が一新米が遭遇してしまった場合は即座に逃げることを推奨する。」


野口がまるで図鑑の説明文を読み上げるかのように流暢に解説する。が、俺たちは弱点以外はほとんど聞いていない。それもギガント・マンティスが少女に鎌を振り上げようとしたからだ。

その瞬間、俺たちはやつに向かって一目散に走った。

別に、誰かが助けようと言った訳でも、事前に作戦を決めたわけでもない。

ただ、助けたいと思った。     たったそれだけだ。


山名が先頭を走り能力を発動。腰に光が集まり、装着されたのは「駆逐してやる!」でお馴染みのあの装置だ。山名は対象に向かってワイヤーを射出、振り上げた片方の鎌の付け根を的確に削ぎ落としたあと遠心力を利用して強引に方向を変えてもう片方の鎌も削ぎ落とした。


ギガント・マンティスが悲鳴を挙げるが間髪入れずに野口が脚力をチーターに設定しそばで気絶している少女を抱きかかえて救助に成功。


野口が離脱するのを確認したあと、芥川が四方に描いた絵を起動。現れたのは捕鯨などに使用される巨大な銛発射機だった。芥川は筆をまるで戦国武将が采配で攻撃を命じるかのように筆を相手に向けると発射機は自動で照準を合わせ、「撃て!」という号令の元一斉に発射された銛が相手の胴体に突き刺さり動きを封じる。


そして俺が大きな筒を取り出し、それを肩に担いで先端を相手に向ける。

自衛隊が異世界で戦うという物語では対ドラゴン、大型生物への切り札として扱われ、成功確率の低い作戦を勝利へと導き、多くの隊員と民間人の命を救った自衛隊が誇る龍殺しの剣。

110mm個人携帯対戦車弾(パンツアーファウストⅢ)の引き金を引く。

後部からカウンターマスと呼ばれるガスを排出することで反動を軽減し、厚さ700mmの鉄板も貫通する破壊力を持つ弾頭がロケット推進で飛行し、ギガント・マンティスの頭部に命中、大爆発を起こした。




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