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怪鳥殺し

「のどかだねぇ~。」


「そうですねぇ~。」


だだっ広い草原で俺とリディアは二人そろって大の字になって寝そべっていた。


広い草原、青い空、小鳥のさえずり、そして隣には美少女。


これでリディアがサンドイッチを詰めたバスケットでも持っていたら最高のピクニックになる。


しかし、残念ながら「俺たちの隣にあるモノ」が若い男女が仲好くピクニックという甘酸っぱい青春の一コマを徹底的に否定している。


その「隣にあるモノ」は何かというと















「ギグワァァァ…………………………………………。」


「やっぱり早く楽にしてあげましょうよ、いくらゴブリンでもこれは酷すぎますよ。」


「言うなリディア、俺だって辛いんだ。」









地面に張り付けられてる全身血まみれの瀕死のゴブリンが必死で生を掴んでいる光景だった。


別に俺たちは好き好んでこんなことをやっている訳ではない。


今俺たちは討伐依頼である怪鳥、「ミツクビハゲタカ」を待ち伏せている最中でゴブリンはそれをおびき寄せるための餌だ。


ミツクビハゲタカはその名の通り首が3本ある体長5m近いハゲタカだ。ランクはAプラス。普通のハゲタカと同様に死体や弱った動物を食べるだけで特に凶暴という訳ではない。こいつの厄介なところは常に高高度を飛行するため並大抵の攻撃は届かないことだ。生息数は多いが、捕獲や討伐数が少なく生態があまりよく分かっていないので学者からしたら死体でも喉から手が出るほどの物らしい。


依頼主はそこそこ名の売れた学者らしく、状態が良ければ報酬は倍にするとのこと。


「マサヨシさん、あれって………………。」


リディアが空のある一点に指を向け、双眼鏡を覗く。


「…………来たな。」


双眼鏡はしっかりと首3本の怪鳥を捉え、俺は立ち上がって黒い筒状の物体を肩に担ぐ。


担いだのは携帯型地対空ミサイルの代名詞、FIMー92。通称「スティンガー」だ。




FIM-92

アメリカ軍が1981年に採用した携帯式地対空ミサイル。赤外線・紫外線シーカーが搭載され発射後の操作が不要な撃ちっ放し能力を得た。1979~1989年のソ連のアフガニスタン侵攻では現地義勇兵に給与されて多くの戦果を出した他、2011年に最も命中率が高い携帯式地対空ミサイルということでギネスブックに認定された。


目標をサイトにいれ、「ピー」と電子音が鳴りロックオンが完了した。


そして引き金を引き、衝撃とともにミサイルがマッハ2.2の速度で飛翔していく。


そして命中し空中に爆炎が生まれ、ミツクビハゲタカは何が起きたのかも理解できずに落下した。


しかし当たり所が悪かったのか虫の息だが生きている。首が2本になり黒い羽毛はいたるところが焦げて地面でもがいている。


「リディア、あとは任せた。」


「了解です!」


餌にしたゴブリンを楽にしたリディアは短刀で心臓と思われる場所を突き刺しとどめを刺した。


これはリディアのランク昇格もかかっているので俺はとどめを刺さなかった。


ギルドのランクを上げるのは主に2つある。


一つは高ランクの冒険者の依頼の付き添いで何かしらの成果を上げた場合。


そしてもう一つがギルド側が提示した特定の依頼を単独で達成すること。


この他にも例外はあるが基本はこんなところだ。


今回の依頼はリディアが「とどめを刺した」という成果があるので俺の証言があればリディアはランクがDプラスからCマイナスになる。


リディアは以前のジーキンスのときに一時的にだが拘束したという成果をあげたので一つランクが上がっている。


瀕死とはいえAプラスを一撃でとどめを刺すのはそれなりの実力がいる。


いつまでも彼女は俺たちにおんぶに抱っこではないのだ。


「それじゃあ、帰ろうか。」


「はい!」


リディアが元気に返事をし、俺たちは帰り支度を始めた。


















「ったく、あの野郎絶対にイカサマしやがったな。」


「おいライアン、お前まだ昨日の事根に持ってるのか?」


「そうでなきゃあの負け方は納得できねぇ!」


それ以前にお前は賭け事弱いだろ。という言葉が喉まできたがそのまま飲み込んで囚人が入れられた鉄製の護送馬車を一瞥する。すし詰めにすれば10人近くは入りそうなくらいでかいのに中身は薄気味悪いおっさんが一人だけなのは不思議に思うが、この仕事は深く首を突っ込むとエライ目に遭うからな。だから俺たちは無視して護送の任務を続ける。


「ポール、この後ちょっと付き合えよ。」


「やだよ。来週には俺はパパって呼ばれるんだ、身重の女房ほったらかして酒飲みに行く旦那がいるかってんだ。」


「なんだよ、ちょっとぐら」




ここまで行ったとき、急にライアンの会話が途切れた。




話好きのあいつが会話を打ち切るなんてよっぽどの事がないとありえない。




「ライアン………………?」







俺は後ろを歩いているはずのライアンの方を振り返らなかった。













いや、「振り返れなかった」のほうが正しいな。













なんたって、俺の胸から突き出ている血塗れの長剣がそれを証明しているんだからな。











胸からは噴水の様に血があふれてくるし、口の中は血の味しかしねぇ。………………参ったな、目が霞んできやがった。

















俺達を殺ったやつは突き刺さってる剣を引き抜くと乱暴に背中を蹴り、俺はそのまま前のめりに倒れた。













視界には女房が映った。いや、生まれてくるであろう赤ん坊を愛おしそうに抱きかかえている。













アンナ、すまねぇ。














赤ん坊の名前を、一緒に考えるって約束…………守れそうに、ないわ。











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