それぞれの道
Side佐倉
あの後、俺たちはギルド支部に帰還してジーキンスを役人に引き渡した後リディアにも真実を伝えた。
予想外にも、リディアは大騒ぎすることもなく至って冷静に受け止めてくれた。
なんでも、薄々変な感じだなと思っていたらしい。
もしかすると俺たちは嘘が下手なのだろうか。
「さて、まずはご苦労だった。ジーキンスの背後関係についてはこちらが調べておく、あとはゆっくり休んでくれ。そして報酬だが」
支部長室でケイさんが簡単に労ったあと、机の引き出しから手紙らしきものを4枚取り出した。
「金銭じゃないんですね。」
「そんなものよりも貴重だと私は思うが?」
それぞれに手渡しながら意味深な発言をする。金銭よりも貴重な手紙ってなんだ?
「開けてもいいですか?」
「ああ、構わない。」
野口が尋ね、それぞれ手紙を開封する。
「えっと、エルトレイア魔術学院への入学推薦状?」
「あれ?芥川もか。俺のと全く同じだ。」
「シーロン皇国への入国許可証ってなんだ?」
それぞれ不思議に思い、ケイさんが解説してくれた。
「ヤマナとアクタガワの推薦状は文字どうり学院に入学する資格ありと認められた証だ。入学試験の免除は無理だが合格すれば学費はタダ、3年間寮生活しながら魔術を習うことになる。その前に、全員のランク………つまり素質のようなものはフィオナがあらかじめ計測してくれた。」
「いつの間にそんなことを。」
それで、俺たちのランクはというと
佐倉 D
山名 A寄りのB
野口 C
芥川 A
「なんか極端だな。」
「とにかく、素質は十分ってことですよね?」
「そうだ。次にノグチだが、シーロン皇国はここからずっと南にある国だ。そこは厳格な宗教国家である例外を除いて信者以外の入国は禁止されているんだ。」
「例外?」
「そこには大陸一とまでいわれる闘技場があってな。それの参加者は例外として出入国が認められてるんだ。勝ち進めばなんでも手に入るとまで言われている闘技場だ。一生遊んで暮らせるほどの金、誰もが崇める名声、この世に二人といない美女を抱く権利、一国の王に匹敵するほどの権力。まあ、負ければ死が待っているが己を鍛えるにはいい場所だ。私も駆け出しのころはそこで鍛えたからな。」
山名たちがこれから行く場所に胸を膨らませている中、俺は手紙に書かれた内容をじっと見つめていた。
その内容だが
サクラ マサヨシ
上記の者をランクAプラスへの昇格を認める。
ランクの昇格証明書だった。
うれしい。確かにうれしいが他と比べてあまりにも素っ気ない。
紙だって特に細工はないし、質感も安物とは言わないがかと言って高級という訳でもない。
「なんだ、不満か?」
「いえ、有難くいただきます。」
「そうか。では言うことも言ったし君たちも疲れているだろうからもう下がっていいぞ。」
「はい、それでは失礼します。」
そういって俺が部屋の扉に手を掛けたとき、ケイさんが何かを思い出したのか呼び止めた。
「ああ、言い忘れていたが魔術学院とシーロン皇国行きの荷馬車が明日の昼に出るからそれに乗っていくといい。乗り損ねると半年後まで来ないから忘れるなよ。」
しばらくの間沈黙が続いたあと、俺たちは声を揃えて叫んだ。
「「「「それを早く言えよ!!!!」」」」
あの後、山名たちは急いで宿に戻って慌てて私物を纏めたりその他諸々の準備(俺とリディアは手伝い)に奔走しする羽目になった。
その時にフィオナさんが簡単な魔術、「身体強化術」を教えてくれた。
身体強化術は文字通り魔術によって肉体を強化するもので冒険者ならば当たり前の様に使いこなせなければいけないものである。
もちろん、リディアも使える。よくよく考えてみれば俺達と初めて出会ったときにギガント・マンティスから走って逃げてたっけ。
今考えると身体強化を使ってなければあそこでリディアは死んでたな。
基礎中の基礎ということで俺たちは全員数時間で習得することができた。
ただ、俺は10分しか使えないのに対して山名と芥川は上達すれば常時使えるとのこと。
思えば俺の能力は現代兵器の召喚。二人の能力はまだ魔法と呼べなくもないが俺の場合は魔法に真っ向からケンカを売っている。まあ、身体強化は現代兵器を扱ううえで都合がいい。
3分しか使えないよりはマシだ。
そうして、あっという間に出発の時間が来た。
この世界に来てからずっと一緒だったからいざ別れると急に寂しくなる。
「じゃあ、行ってくるよ。」
「おう、しっかりやれよ。」
「お前ら、死ぬんじゃねぇぞ!」
「野口が一番危なっかしいんだがな。」
「どうゆう意味だそれは!?」
「ヤマナさん、ノグチさん、アクタガワさん、私たちが応援しています。頑張ってください!」
しばらくしょうもない会話をしていると荷馬車の準備が整い、三人がそれぞれ乗り込んだ。
「行って来い、幸運を祈る!!」
「ヘマして降格すんじゃねぇぞー!」
「お前らこそ変な魔法使って事故起こすなよー!」
「「うるせぇーー!!」」
「野口も一回戦で負けんなよー!」
「余計なお世話だ!!」
俺達は馬車が見えなくなるまで手を振った。
これからはそれぞれが、それぞれの道を作って進まなければいけない。
別れは悲しいが、いつまでも感傷に浸ってはいられない。
俺達はまだ力を持て余しているだけの子供に過ぎないのだから。
「よし、それじゃあ俺も鍛え直す為に早速ギルドで依頼を確認だ!!」
「あっ、待ってください!私も行きます!!。」
ようやく、俺達の異世界紀行が本格的に始まったのだ。
打ち切りではありません。
まだまだ続きますので感想、評価をよろしくお願いします。




