魔法を超えるもの
side芥川
一瞬の出来事だった。
轟音と共に巨大な光の束が一直線に向かって来るのを見て、僕は足が竦んで目をつぶる事しかできなかった。
野口の叫び声を聞いた瞬間、フィオナさんとケイさんが咄嗟に反応した。
フィオナさんが持っていた杖を地面に刺し、オペラ歌手のような澄んだ声で何かの呪文を唱えると光の束の進路上の地面が盛り上り10m近い岩の巨人、「ゴーレム」が現れて盾になってくれた。
直撃を受けたゴーレムから煙が濛々と上がり、それがまだ晴れない内にケイさんが人間とは思えないほどの跳躍力でなぎ倒された木々の先に立っているあのロボットモドキに接近し、居合いのように腰のレイピアで切り裂いた。
本来、レイピアは「突き刺す」事に特化した剣なので「切り裂く」事は不可能なはずなのにロボットは見事に真っ二つになって、切られた断面からオイルのような液体を噴出しながら地面に倒れた。
「何してるんだ!囲まれてるぞ!!」
ケイさんの声でようやく我に返った。というよりも、反応できたのはケイさんとフィオナさんだけだった。
「右方向に6、左に3、さらに前方遠距離におよそ15!!山名!!」
「りょっ、了解!!」
いち早く立ち直った野口が敵の数を伝え、その方向に向かって山名が乗っている戦車の主砲を発射して遠距離の敵を纏めて吹き飛ばす。
僕も筆を巨大化させて地面から大砲をだして数が少ない左側の敵を吹き飛ばした。
残りの敵は野口が蹴り飛ばした。
「こいつら一体………?」
ようやく落ち着いて口から出たのはこれだけだった。
フィオナさんが未だオイルらしき液体を流している個体に近づき、軽く叩いたりして調べている。
そして結論が出たのかスッと立ち上がった。
「何かわかったか?」
ケイさんがレイピアを鞘に収めて尋ねるが、フィオナさんは首を横に振った。
「結論から言うと、さっぱりわかりません。始めはかなり特殊なゴーレムかと思ったんですが魔術反応が全くしませんでしたし、そして何より残骸が残ってる事です。唯のゴーレムなら倒せば砂になって消えてしまいます。それに………。」
「それに?」
フィオナさんが言葉に詰まる。まるで存在しないものを見たかのような顔をして
「おそらく、あれは魔術で作られたものではありません。人間の手で作られたものです。」
「そんな馬鹿な!?あんなものを撃ってくる奴らが剣や鎧みたいに手作りだと!?」
「そうとしか説明できませんよ。」
山名がいつの間にか戦車を消して真っ二つになっている奴の断面図を見せる。
「俺は魔法使いじゃないですけど普通魔法を使ったゴーレムにオイルやチューブに加えて、ネジとか歯車なんて組み込みます?どう考えても科学技術で作られてますよ。」
「カガクギジュツってなんですか?」
科学の存在を知らない2人が首を傾げる。
まあ魔法が当たり前の世界の住民なら仕方ない。逆に科学が当たり前の世界の住民である僕らから見れば魔法が当たり前なのが異常だ。
「簡単に言うと、魔法を一切使わず人間の知恵と技術で物を作る技術のことです。僕らの故郷ではそれが当たり前でした。」
「信じられんな………。そんなのが当たり前な地域が存在するなんて。」
実際存在しないけどね、別の世界の常識だし。
「ともかく、こんなのを大量生産するにはそれなりの規模を持った工場が必要なはずです。ケイさん、この近くに大きな建物とか洞窟ってありますか?」
「たしかここから西に数キロの場所に廃棄された豪邸があったはずだ。10年ほど前まではある上流貴族の別荘だったらしいが。」
「俺の予想が正しければ工場はそれです。急ぎましょう!」
今年最後の投稿です。
みなさん、よいお年を。




