緊急依頼
今回は長編です。
「しかし便利な乗り物ですね、このさいどかーって。」
村役場で郵便物が入った袋を受け取り俺は召喚した九七式側車付自動二輪車に跨り、隣にはリディアが袋を抱きかかえて景色を見ている。
九七式側車付自動二輪車
1937年に旧日本陸軍が採用した世界初の軍用サイドカー。満州事変から太平洋戦争の全期を通して偵察や輸送だけでなく、閲兵式では昭和天皇や近衛師団が使用した。
特に用事があるわけではないが山名たちをいつまでも待たせるわけにもいかないのでこいつで今日中にニイカ村に到着したい。ただ急ぐだけなら九七式ではなくヘリコプターでも出せばいいんだが郵便物と人1人を運ぶには大げさなので出さなかった。
「そういえば」
「そういえば、なんだ?」
「このあたりってたしか盗賊の目撃例が多かったはずなんですよ。大丈夫ですかね?」
ずいぶん物騒だなおい。
まあこいつに乗ってる限り大丈夫だろうし、いざとなれば振り切ればいい。そんなことを思っていると左右から何かが近づいてくる。
「……なんだ?」
目を凝らしてよーく見ていると
「ヒャッハア!!獲物だぜお頭ぁ!!」
いかにも盗賊といった野郎どもが馬に乗って叫んでいた。
しかもいきなり「ヒャッハー!」って叫ぶってどこの世紀末兵士だよ。火炎放射器出して消毒したろか?
ともかく、左右を塞がれちゃあ仕方がない。俺は覚悟を決めて腰のベレッタを引き抜き銃身を横にしてなぎ払うようにして発砲した。
この撃ち方の最大の利点は、発砲時に銃が反動で跳ね上がるのを利用して連射不可能な拳銃でも多数の人数を相手にできることだ。
余談だが、この撃ち方は20世紀初期の中国の馬賊が好んで使用したことから「馬賊撃ち」と呼ばれ日中戦争では旧日本軍に恐れられた。
俺の撃った弾の何発かは乗っている盗賊に命中して落馬した。おそらく死んだだろう。
人間を殺した。
たった数秒で命が消えた。
よくわからない罪悪感が芽生えて吐き気が襲ってきた。
だが、すぐに頭を切り替えて空のマガジンをリロードして再度発砲。
殺さねば殺される。これがこの世界のルールだと心に刻み付ける。
あらかた減ったところでアクセルを思いっきり吹かして一気に振り切る。これで大丈夫だろう、奴らがどんどん遠ざかっていく。
「マサヨシさん?」
リディアが俺の顔を見つめ、手を俺の手の上にそっと置く。
「私……いえ、私たちはもう仲間であり友人です。あまり背負い込まないでください。」
リディアが微笑んでじっと俺の顔を見る。
なんだか重りが取れたような感じがした。
「そうだな……ありがとう、リディア。」
俺はリディアに笑顔で返した。
「あっ!ほら、見えてきましたよ!」
「よし!なら飛ばすぞ!!」
「はいっ!」
俺は再びアクセルを吹かし、九七式が応えるかのように力強い唸りを上げた。
Sied山名
「それで、俺たちはどうする?」
佐倉を見送ったあとしばらくはギルドでお茶を飲みながらだらだらしていると職員の男性がなにやら慌てた様子で俺たちに駆け寄ると
「ヤマナさん、ノグチさん、アクタガワさん、至急ギルドマスターの部屋に来てください!」
ただ事ではない。そう俺たちは確信した。
「それと……サクラさんはどちらに?」
「あいつなら依頼でついさっきニイカ村へ。」
野口の答えに職員は苦虫を噛み潰したような顔をして
「わかりました。長距離通話魔法で知らせるのであなたがたはすぐにお願いします。」
といって奥に引っ込んでいった。
ちなみに長距離通話魔法とは、簡単に言うと電話のようなもので術式を組んだ水晶玉で会話するものだ。ただ、魔力消費が大きいから長時間は無理だが。
俺たちはケイさんの執務室へと入る。
中にいたケイさんだけでなくフィオナさんまでいつものゆったりとした服ではなくて動きやすい服装で、ケイさんは細いレイピア、フィオナさんは魔法使いのような杖を持っていた。
ケイさんは顔を険しくした状態で
「いきなりですまない、緊急依頼だ。ウルガ森林の事は覚えているな?」
「ええ、あの化け物カマキリがいたところですよね?」
「あそこにAマイナス級がいるのははっきり言って異常だ。そこで、ランクA以上の冒険者は私たちといっしょに調査へと向かってもらう。本来なら参加は任意なんだがA以上はお前達以外にいなくてな、残念だが拒否権はない。その代わりに報酬は約束しよう。すぐに出発するぞ!」
「マジかよ……………。」
だが拒否権がないんじゃどうしようもない。
俺たちは用意された馬車に乗り込みウルガ森林へと向かった。
Sied野口
「野口!なんかいるか!?」
俺は山名が能力で出した車体にかわいらしいチョウチンアンコウがペイントされた戦車の砲塔の上に立ち周囲をタカの視力で警戒して、戦車は草木をなぎ倒しながら奥まで進んでいく。
「いいや、今のところはなにも」
ガシャン
遠くから、それも明らかに生き物が発していい音ではないなにかの音が一瞬だけ聞こえた。
(………気のせいか?)
念のため、その方向に耳を集中させる。
ガシャン…………ガシャンガシャン……ガシャン
いや、気のせいじゃない。確実に何かいる!
だが、この音はいったい……?
「山名!エンジン切って!」
「お、おう……。」
山名が戦車のエンジンを切ると‘‘その音だけ‘‘はっきりと聞こえる。
そういえばおかしい。いくら戦車で草木をなぎ倒しながら進んでるとはいえ生き物の気配が全くしない。俺たちがこの世界に来たときはあんなにいたのに、いまでは一匹も気配がない。
俺はその音の発生源を探し、発見した。
(な、なんだあれ………?)
それは錆びた鉄板のような体でよたよたと千鳥足でゆっくりと歩き、その姿はまるで
古いSF映画に出てきそうな壊れかかったロボットみたいだ。
そいつが急に立ち止まり、人間でいうと腰を落として足を地面にめり込ませて胸のふたのような場所が開いてコア?らしき真紅の宝石を露出させた。
宝石はゆっくりと、まるで光を吸収するかのようにして輝いていく。
そういえば、昔見たあるロボットアニメにあんなふうにエネルギーをチャージした後ビームを発射する場面があったのを思い出した。
まさか…………………!!
「全員避けろォおおおおおおおおおおおお!!!!!」
俺が叫んだ瞬間、そいつから光の束が発射されて俺たちの周囲に大爆発が起きた
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