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第4話〜心のオアシスとの出会い〜

ボーイズラブとなっております。苦手な方はご遠慮ください。

 お茶しない?

 ある時期に、若者がナンパの手としてよく用いた台詞。・・・今、こんな陳腐な台詞で女の子をナンパする男はいるのだろうか。


「まま、すぐそこだからさ〜!うまいよ〜!アイツの淹れる紅茶!」

 しかも。

 うんとも言っていない相手をかなり強引に引きずっていくこの男・・・。(しかも本人はとても楽しそう)

 首根っこをつかまれ、引きずられながら、アリスは深いため息をつくのであった。


 引きずられていった先は保健室だった。

「何で保健室・・・」

「細かいことは気にしない〜♪」

 リアンは相変わらず元気に扉を開けた。

「マスター!お茶いれて〜」

 そこにいたのは。

「あぁ、リアンさんですか。いらっしゃい」

 爽やかな風がその人のまわりにだけ吹いているような。そんな柔らかくも涼しげな青年であった。センターわけしたさらさらな栗色の髪と涼しげな目元。優しい笑顔。ノンフレームの眼鏡もよく似合っている。

「さ・・・爽やか青年だ・・・!」

 思わずつぶやくアリスであった。

 そんなある意味、失礼極まりないアリスに対し、マスターなる青年は嫌な顔ひとつせずにアリスを迎える。

「おや、お客さんですか。こんにちは。僕はマスターと言います。今、お茶をいれますね」

 ふんわりと向けられる笑顔と言葉に。

「初めてまともな人と会ったよ〜!」

 思わず感涙。

「お〜い!」

 おがむようにマスターを見つめるアリスに。横からリアンがつっこむのであった。


 ゆったりと流れる時間。お湯の沸く音と、部屋中に香る紅茶の茶葉の香り。揃いのティーセットは女の子が見たら飛んで喜びそうな物だった。たとえ場所が、その雰囲気にそぐわない保健室であったとしても。ティーセットの並ぶそのテーブルや椅子が、学校の備品であったとしても。まるでそこだけ、英国の風がふいているようだった。

「はい、どうぞ。熱いですから気をつけてくださいね」

 おいしそうな紅茶がアリスの前に置かれる。

「はい、リアンさん」

 その次に、リアンの前に置かれる。

「サンキュー!」

 そしてどこまでも、なこの男。

 気を取り直し、アリスはいれられた紅茶を飲む。

「・・・!おいしい!」

 今までインスタントの紅茶しか飲んだことのなかったアリスは、マスターの茶葉からいれた紅茶のおいしさに、思わずそうつぶやいた。

「そうですか?ありがとうございます」

 そのつぶやきに、にっこりとマスターが笑顔を返す。

 アリスは一時の間、この現実を忘れマスターが作り出す温かい雰囲気に身をゆだねるのだった・・・(現実逃避ともいう)。


 現実逃避から20分後。

「そういえば、アリスさんは向こうの世界の方ですか?」

 談笑をしながらお茶を飲んでいると、ふと、マスターがそう言った。

 そこで。

 ようやく。

 アリスはお茶を飲んでいる場合ではないことに気付くのであった・・・。

「あ!!そう!そうなんです!俺、シンクロとかないといけなくて・・・!!」

 何杯目かのおかわりした紅茶を飲み干して。アリスはマスターに自分の立場を説明しようとした。

 シンクロした世界を元に戻して。

 普通の世界に帰りたいんです。

 そのためには親玉に会わなくちゃいけなくて。

 それにはまず、バニーを捕まえなくちゃいけなくて。

 切々と、説明。それをマスターは静かに聞いていた。そして。すべてを説明し終わった時・・・。

「バニーさんなら、職員室じゃないですか?というか・・・親玉っていうのはクイーンさんのことですよね?クイーンさんも職員室にいると思いますよ?」

 今までの・・・俺の苦労っていったい・・・。

 アリスの脳裏は一瞬真っ白になった。

 だって・・・職員室って。確か。アリスとバニーの追いかけっこが始まった場所だったのでは・・・。

「ねぇ、リアンさん?」

 マスターが同意を求めたその先の相手に。

 アリスは我に返った。

「は!?何!!?リアン知ってたの!?」

 がたんと椅子から立ち上がってアリスはリアンに詰め寄る。リアンは飲みかけの紅茶のカップを持って椅子ごと一歩下がる。

「ん?いやさ〜」

 ぽりぽりと頭をかきながら。

「さっき思い出したんだよね〜!!」

 あははははと、高らかに笑うその男は。きっと最強なのだろうと。アリスはヘコみながら思うのであった。

「ま!そんな落ち込むなって!居場所わかってよかったじゃん!なぁ、マスター!」

 まったく悪びれないリアンに。

「よくない!!おかげで俺がどんな目に合ったと思ってんだよ!!」

 半泣き状態で訴えるアリスに。

「人生、そんなこともあるって!」

 全開の笑顔で、まったく。何の根拠もないことを、言ってのけるのであった。ていうか、親玉の名前、教えてなかったっけ〜と、あっけらかんと言いながら。

 我関せずと、保健室を漁ってお菓子を探し出すリアンをよそに。その唯一の良心がアリスをなだめる。

「すいません。何だか、僕たちの世界の住人が迷惑をおかけしたみたいで・・・」

 なぜいつも。あやまるのはまったく。何にも悪くない人間なのだろうかと。世間の矛盾をこんなところで感じながら。

「職員室は保健室を出て、右に曲がって階段を昇ったらすぐです」

 優しく教えてくれるマスターを半ば本気で拝みそうになりながら。

「ありがとうございます!マスターのおかげで・・・俺、がんばれそうです・・・!」

 何ていい人なんだろうか。リアンと違って。

 そんなことを思うのは・・・失礼だろうか。

「いいえ。がんばってくださいね。可愛いアリスさん」

 マスターはそう言うと、アリスの頬にちゅっとキスをした。

「・・・!!」

 アリスはそのマスターの行為に真っ赤になる。

「・・・あ・・ありがとうございます・・!」

 しどろもどろになりながら。

 でも、男にキスをされて嫌な気がまったくしなかったのは。

 マスターの人徳と言えよう。


 アリスは応援してくれているマスターに感謝しながら、保健室を出て職員室を目指した(もちろんリアンは放っておいて)。


「・・・職員室・・・!」

 マスターの言われた通りに来てみると。本当に、今までの苦労はなんだったのかと思いたくなるくらい簡単に目的地へ着くことができた。

 アリスは親玉もとい、クイーンと会うことに緊張しながらも、職員室のドアを開けるのであった。

「しつれいします!」

 2回ノックに大きな声でご挨拶。

 ・・・しみついている。

 がらりとドアを開いたアリス。

 

 そして、職員室へと、踏み込むのであった。

                            〜続く〜


次がたぶんラストです!とりあえず、私の中で序章が終わる感じです。お楽しみに♪

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