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第3話;庭とアリスとリアンとの再会!

ボーイズラブですので、苦手な方はご遠慮ください。

 体育館を出てからどれくらい走り続けたのか。

 アリスは階段を昇ったり降りたり、廊下を駆け抜けたりとある意味どの運動部よりもキツイ運動を行なっていた。しかも。全速力で。

 だが、いくら体力に自身がある者でもこれだけ走れば疲れが出てくる。

 しかし。


「何であのウサギは・・・走るスピード変わらないんだ・・よっ!」

 本日何度目かの不満を口にしながら、前方を駆けるバニーを追いかける。

 そして。バニーは調理室の扉のすきまをするりと抜けていく。その後をバニーを追いかけアリスも調理室へ入る。

 そこは・・・。

 調理室ではなく、いうならば・・・ジャングルであった・・・。


 大きく生い茂る草木。ツルをまく植物。見たこともない花も咲いている。真っ赤な大輪の花に群生する白や黄色の小さな花。木になっているのはこれまた見たことのない黄緑の実。

「ど・・・どこ・・・ここ・・・?」

 もしかして、またどこかにシンクロした!?

 しかも今度はジャングル!!?しかも怪しげな植物がっ・・・!

 アリスは途方もなく広がるジャングルに、その場に立ち尽くす。

 むしょうに泣きたい気分になったのは・・・いたしかたないと言えよう・・・。

 そんなアリスの横をバニーは、相変わらずの様子でたたたと走り去る。

「あ!バ、バニー!!」

 この際、3歳児だろうがなんだろうがどうでもいい。誰かがそばにいないと不安なのは仕方のないことであろう。たとえそれがちょと・・・意思の疎通が不可能な相手でも・・・。アリスはそのジャングルの中を、バニーについて走り出した。

 雑木林のように木々の生い茂るその中を必死に走って行くと、急に木々がなくなり、小さな丘に出た。その丘には一本の大きな木がたっている。アリスは息を整え、汗をぬぐいながらその丘のてっぺんにある木を見上げる。

「おっきな木だな〜・・・」

 次に、バニーはと見渡すと、バニーはその大きな木に向かって走っている。それを見て、アリスはバニーを追いかけるためその木を目指して走り出した。

 その木は近くで見ると樹齢200年くらいたってそうな大木で幹の太さは大人が5人くらいいないと囲めないくらいだった。バニーは何が楽しいのか、木の周りをぴょこぴょこ回っている。

・・・何が楽しいんだ・・・。このえせウサギは・・・。

何て。

ちょっとバニーへのイラつきを控えめにかもし出しながら。

「おい、バニー・・・」

 そのバニーをとめようと、アリスがバニーに話しかけた時。

「何をしてる?」

 低い、重低音がアリスの耳に響く。

 びっくりしてアリスが振り返ると、いつの間にかそこには一人の男が立っていた。身長が高く、裕馬より大きい。190cmはゆうにありそうである。服の上からはわかりにくいが、その身長に見合うだけの筋肉がしなやかについている。黒髪に黒い目が深く影を落とし、それがその男の端整な容姿を引き立たせる。黒いズボンに深い青のシャツ。そのシャツの上には革のジャケットをはおっている。そこに、くわえタバコがきれいにハマっている。

 その男はタバコの煙を一度はくと、もう一度アリスに言った。

「何をしているんだ?」

 相変わらず耳に残る重低音に、体がビリビリする。

「あ・・・俺は・・・」

 なぜか緊張して声が枯れる。

 威圧感だ。

 この男からはものすごい威圧感を感じる。まるで、すべてをねじふせるような・・・。

 アリスは人形のようにその男から目が離せなくなってしまった。固まったように、動けない。

「・・・!あぁ、悪い」

 その男は急に何かに気付き、足で踏んでタバコの火を消した。すると、そのタバコを覆うように足元の草が伸び、タバコはその草によって地面に吸収されてしまった。

「ここにある植物から作ったタバコだ。地に戻った」

 まるでアリスに説明するかのようにその男は言った。

「もう大丈夫だろう」

 そう言われると、アリスは今までの緊張が解かれたかのように体が動き出す。

「あ・・・え?大丈夫って・・・?」

 声もすんなり出る。

「ここの植物にはそっちの世界にないものが多い。煙を吸って体が一時的に麻痺をしたんだろう。一種の中毒症状だ。元をたったから、もう心配ない」

「そっちの世界って・・・」

「なんとなくだ」

 アリスが別の世界の住人だと、何となくわかったらしい。・・・何となくってって・・・リアンよりひどいんじゃ・・・とアリスが思ったかどうかはさておき。

「で?何をしているんだ?」

体の麻痺もとれたところで、その男は本題に入る。

「えっと・・・、シンクロを解いてもらうのに・・・バニーを捕まえなきゃいけないんだけど・・・、バニーがここに逃げ込んだから、それを追って・・・」

 少ししどろもどろになりながらアリスは答える。

 その様子をじっと見ていたその男は。

 いきなり、アリスの顎をつかむと、上を向かせる。

「・・・お前、名前は?」

 アリスはそれを振り払い、その男を睨む。その男は睨まれているのに楽しそうに口をゆがめた。なんだか、嫌な感じを受けながら、アリスは名前を言う。

「佐久間・・アリスだけど・・・あんたは?」

「ガーデンだ」

無表情に、答える。

「庭?」

「・・・ガーデンだ」


・・・ここのネーミングセンスってどうなってんだよ・・・。

 アリスがそう思うのも、無理はないってことで。

「アリス」

 アリスが一人でそんなことをブツブツ考えていると。

 ガーデンなるその男は・・・。

 まるでshall we dance?かのように。

 ひらりとアリスの腰を抱くと、その端整な顔をアリスの顔にぎりぎりまで近づけ、これが女ならいちころでクラッといっちゃいそうな表情に。あの、腰にくる重低音で。

「俺の愛人にならないか?」

 言ったセリフがそれかよ!と、つっこみたくなるような言葉を吐いてくれた。

「誰が愛人だ!てか、離せっ・・!!俺は男だっつの!!」

 渾身の力でガーデンを遠ざけようとしながら。アリスは本日何度目かの自分の性別を公開した。

 ていうか!何でどいつもこいつも!俺を女だと思うんだよ!失礼だっつの!!

 

内心ご立腹気味なアリスだが・・・悪いのはあきらかにお前だろうと。アリスの心の叫びを聞いた人がいたならば、そう言ったであろう。

「だから?愛人になるには何も問題はないだろう?溺れさせてやるぜ?」

 またそんな。女の子が卒倒しそうな笑顔で。

 女の子が一発で落ちそうなセリフ言って。

 アリスもほら。男なのに、その色気にふいうちをくらって赤面。

「・・!!!だっ・・・!!ていうか!あ、愛人ってことは妻がいるんだろ!?妻が!!?」

 慌てて理性の壁を持ってくる。

「俺の妻は寛容だからな。愛人を何人作ったところで支障はない」

 さらりと言うその男に。

 そんなに何人もいるんかい!と。フラれ続けているアリス君は。ちょこっと殺意を抱いたりしてみたり。

「妻はよくても俺が嫌なんだよ!!俺はバニーを捕まえて!シンクロを戻して!元の世界に戻って普通に女の子と恋愛するんだっつーの!!」

 とりあえず。怒りにまかせてきっぱり愛人の座は辞退する。

「残念だ」

それだけ言うと、すっとガーデンはアリスから離れた。アリスがそれにほっとし、胸をなでおろした瞬間。

唇に、柔らかい感触。

「・・!!?」

 その次に感じたのは、舌で唇を舐められる感触。微妙なタッチで唇を舐められただけで。

 アリスの背中をぞくぞくしたものがかけあがる。

 唇を丹念に舐めあげたら。盛大にチュッと音をさせて。ガーデンはアリスから唇を離した。

「通行料だ。バニーはあそこの扉から出て行ったぞ」

 入り口とは反対方向にある、ジャングルにふさわしくない、むしろ、何でこんなものがここに?的な扉を指差す。それだけ言うと、あまりのことと、ぞくぞくしたのでその場に座り込むアリスを置いてガーデンはそのジャングルの中へ消えて行ったのであった。

 アリスのファーストキスは・・・結局男に奪われる運命にあったのだった。


「・・・・・」

 1年生教室の窓際。最後尾。

 アリスはそこに座り、誰もいない外を眺め・・・たそがれていた・・・。

 否。

 グレていた。

「何でっ・・・男とキスなんか〜・・・!!」

 ふつふつと湧き上がる怒り。もう、どこにあたったらいいのかわかりません。

 ちなみに。

 たそがれる彼のまわりには。彼の怒りの矛先となった無残な机や椅子たちが散乱しているのでした・・・。

「くそ〜・・・マジで何なんだよっ!ここは!ホモばっかかよっ・・・!」

「あ〜、そうかもねぇ」

「男だって!言ったのにっ!!」

「言ったのに?」

「キスしてくるし・・・!?」

「はろ〜〜☆」

「うっっわあぁ!!!」

 一人でいたはずのその教室で。いつの間にかアリスの独り言に付き合っていたのは・・・何かもう。すべての元凶な気のするリアンであった。びっくりしたアリスは、椅子から飛び上がって叫んだ。

 絶対。寿命が縮んだと思われる・・・。

「なになに〜?そんな飛び上がるほど喜んじゃってさ〜!」

 相変わらずの。そのテンション。

「リ・・リアン・・・!?い・・いつから・・・!!」

 心臓のドクドクという音が収まらないまま、アリスはリアンに問いかける。

「ん〜?ずっと〜」

 ずっととはどこからなのか・・・。聞くのが非常に怖いアリスだったが。それよりも。

「ていうか!!何なんだよ!!ここ!もう嫌だっ!!!変な人間ばっかりじゃん!!」

 まずはこれでしょう。

「まぁまぁ。そこはどうしようもないとこだからさ!」

 だってそんなの俺じゃどうにもできないも〜ん。あははははは〜と、リアンはアリスの訴えをザッパリ流す。そして。

「ところでさぁ、アリス!」

にこやかに。

「お茶しな〜い?」

 

 リアンというその人は・・・斜め45度の角度から、くるのであった・・・。


                               〜続く〜


ガーデン登場。リアン再登場。お茶って・・・。唇をついに奪われたアリス。次はどうなる!?お楽しみに☆

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