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桃ちゃんと一緒 召喚され世界の壁となった俺は、搾り滓として転生す  作者: @aozora


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第32話 秘密基地に潜入、我々が見たものとは!?

“ドボン”

エリーゼさんの腕を引っ張り飛び込んだ小さな泉、冷静に考えなくても濡れネズミになること間違いなしなんですけどね。


「・・・えっと、ここは」

身体ごと引っ張られて泉にダイブ、そのまま水底(みなそこ)に沈んでしまったことに驚いて息を止めて目を瞑っていたエリーゼさん。いつまでたっても水に沈んだ感じが来ないことに恐る恐る目を開ければ、そこには一面花畑というファンタジーな光景が。


「あれ? エリーゼさん、前に一度だけ精霊の庭に行ったことがあるって言ってませんでしたっけ? ここ、王都の妖精の取りまとめをしている精霊様、ポーネリア様の精霊の庭ですよ。

まぁ俺も来るのは初めてなんですけどね。多分妖精のマルベール様は知っていたはずですよ? それで今回の事態を企んだ符術使いはエリーゼさんに妖精のマルベール様が付いていることを知っていた。

エリーゼさんは王都の老舗マリアージュ魔道具店四代目店主として有名ですからね、そのことが知られていても何らおかしくない。

昨日暗殺が失敗したことだってその場にエリーゼさんがいたとしたら説明が付きます。絶対の自信を持っていた気配隠しのローブ、この場合妖精に見破られたと考えるのが普通です。

アレンジール公爵閣下にはこう指示を出したのでしょう、“暗殺者を発見した者たちを呼び出し娘ローレシアを探させろ”。俺までお屋敷に呼ばれたのがその証拠です、妖精付きのエリーゼさんに精霊の庭に逃げ込んだローレシアお嬢様を探させるだけなら、わざわざ俺まで呼び出す必要はありませんから」


俺はそう言うと握っていたエリーゼさんの手を放し、適当な場所に<ポケット>から引っ張り出したレジャーシートを広げてガレンドールコロシアムで購入した屋台飯を並べていきます。


「精霊様、そう言えば妖精のマルベール様のお姿が見えないようなんですけどどうしました? 確か一緒に精霊の庭に入っていってたはずですよね?」

俺の言葉にしまったといった顔になる精霊様。


「・・・精霊様、もしかして忘れて置いてきちゃったとか」

「そ、そんな事はないのだ? 外は危険が一杯だから私が先行して様子を見ていただけなのだ。実際悪い奴がいただろう?」

何か苦し言い訳をしていますが、今回は結果オーライなのでこれ以上の追及はやめておきましょう。俺は胸の扉を開き精霊様にマルベール様を呼んできてもらうと、「お待たせしました、本日の屋台飯でございます」と言って食事を勧めるのでした。


暖かな日の光が降り注ぐお花畑、広げたレジャーシートの上にはこれでもかという量の屋台飯、穏やかな風がそよぎ草花を揺らす。


「ねぇ、ノッペリーノ、私たち、一体何をしているの?」

「ん? あぁ、ローレシアお嬢様の捜索ですね。おっ、この唐揚げ旨い」


「・・・それじゃなんでさっきから屋台で買った料理を広げて食事をしているのかしら?」

急に何故か言葉の固くなるエリーゼさん。お顔をみれば笑顔なのに目が全然笑っておられません。


「えっと、エリーゼさんは精霊の庭という所がどういう場所だかってご存じですか?」

「えぇ、精霊様がお造りになられた異空間、各精霊様方の思いが具現化された楽園と言われているわ」


「その通りです。この精霊の庭という場所は言わば精霊様の夢の世界、ありとあらゆる夢が叶う場所。この精霊の庭に於いて、精霊様は神同然なんです。

ではそんな精霊の庭で部外者である人間がウロチョロしたらどうなるでしょう」

僕の問い掛けがあまりに想定外だったのか、答えに詰まるエリーゼさん。


「正解は、迷子になります。その場を管理する精霊様のご許可がない限り、部外者が精霊様や妖精様の下に辿り着くことなど叶わない場所、それが精霊の庭なんです」

そう言いながらロングフランクフルトのような大きな焼きソーセージに手を伸ばす俺氏。


「ではどうしたらいいのか、普通は妖精様や精霊様の招待により訪れる場所が精霊の庭です。なので初めから案内が付いていますが、今回のように勝手に侵入した場合は案内がない」

そう言いながらロングフランクもどきを右に左にとゆっくり振ります。するとその動きに合わせたかのように、小さな影がロングフランクもどきに向かい飛びつくのでした。


「捕まえた~、これ私の~!!」

「あ~ん、ずる~い。私が最初に見つけたんだよ~、私にもちょうだ~~い!!」

そう言い次々と現れる妖精たち。


「正解は“案内を呼んで連れて行ってもらえばいい”でした。ハイ、みんな落ち着いて。喧嘩したり勝手にお料理に手を出したりすると怒られちゃいますよ~」

俺の声にピタッと動きを止める妖精様方。


「えっと、もしかして私たちの姿ってこの人間さんに見えちゃってたりするの?」

「え~、でも私ちゃんと姿隠しの魔法を使ってるよ? 気のせいじゃない?」


「残念ながら気のせいではありません、皆さんの姿は最初からしっかり見えています。それよりもご紹介いたしましょう、精霊様です」

「貴様ら、ノッペリーノが私に捧げた貢物を勝手に食べるとはどういうつもりだ、事と次第によってはただでは済まさんぞ!!」

突然かけられた精霊様からの声に、背後を振り返り固まる妖精様方。今頃さぞや頭の中は大パニックを起こしていることでしょう。


「とりあえず謝っておいたら?」

「「「「「すみませんでした~!! 精霊様への貢ぎ物とは知らず、大変ご迷惑をお掛けしました~!!」」」」」

俺からの誘い水に乗っかり、全力で土下座する妖精様方。


「お前たちじゃ話にならん、この場の責任者の下に連れて行ってもらおうか!!」

「「「「「ハッ、ハイ、ご案内いたします」」」」」

俺は急ぎ屋台料理とレジャーシートを<ポケット>に仕舞い込むと、妖精様たちの案内に従いこの精霊の庭の責任者、精霊ポーネリア様の下に向かうのでした。


「・・・ノッペリーノ、これってズルくない? こんなの分からないわよ」

「全然ズルくありません。聞いた話では昔は妖精様を呼び出すのに歌や踊り、楽器の演奏や大道芸なんかを披露したりしてたそうじゃないですか。

そうやって妖精様の興味を引いてお願い事をするのと料理を用意して気を引くことのどこに違いがあるんです?

それにこの料理は最初から精霊様に捧げたものですよ? 勝手にやってきて姿を隠せることをいいことに、つまみ食いをしたのは妖精様方です。これは自業自得です」


俺の言葉に何か納得行かないといった表情のエリーゼさん、頭が固いと苦労するぞ~。

そんな感じでエリーゼさんとおしゃべりをしながら妖精様方の後ろについて進むことしばし、なんという事でしょう、そこは夢の中の妖精の国。

妖精様方の小さなお家やキノコのクッション、お花の絨毯などなど、絵本に出てきそうなミニチュアワールドが広がっているのでした。


「えっ、人間? なんでこんなところに人間がいるの?」

「私たち人間に捕まっちゃうの? どこかに売られちゃうの?」

「せっ、せっかく手に入れた平穏だったのに~!!」

俺たちの姿を見てパニック症状を起こす妖精様方。でも中には・・・。


「わっ、デッカイのが来たぞ~、隠れろ~。私が相手だ、みんなの事は私が守る!!」(キメッ)

「巨人だ巨人だ、頭頂部に登頂なのだ~!!」

うん、この子たちは若い妖精様ですね。無邪気というか怖いもの知らずというか、人間と接触したことがないんでしょう。


「あ~、すみません、ちょっとお聞きしたいんですが、精霊のポーネリア様はおられますか? 申し遅れましたが俺はノッペリーノ、そしてこちらはエリーゼさんです。

こちらの妖精様はエリーゼさんと契約されている妖精のマルベール様ですね」

俺の自己紹介にざわつく妖精様方、先ずは話を聞いてもらう必要があるので俺は構わず言葉を続けます。


「実はこちらの妖精様方が私がこちらにおられます精霊様に捧げた貢物に手を出されてしまいまして、精霊様は大変ご立腹なのですよ。

ですのでこの地を治められておられますポーネリア様に御出でいただきたいのですが」

俺がそう言い精霊様をご紹介すると途端静まり返る妖精様方。


「誰でもいい、今すぐポーネリアを連れてくるのだ~!! 隠し立てをするようならどうなるのか、その身をもって知るがよいのだ~!!」

「「「「「ヒ~~~~!! ただいまお連れします~~~!!」」」」」


精霊様の言葉に一斉にその場から飛び去って行く妖精様方、話が早くて助かります。

そしてほどなくして多くの妖精様方に囲まれながら姿を現したポーネリア様は大変引き攣った表情で、「こ、この度は大変申し訳なく」と謝罪の言葉を述べられるのでした。


「ノッペリーノ、オクトパスボールはないのだ?」

「すみません、代わりにレインボー綿あめを大量に購入しておきましたのでそちらをいただいてください。みなさんもどうぞ?」

「「「「「精霊様、ノッペリーノ、ありがとうございます!!」」」」」


精霊のポーネリア様も揃ったという事で、再びレジャーシートを敷き屋台飯パーティーの再開です。うちの精霊様は懐が広いのでちゃんと筋を通せばねちっこく怒ったりはしません、ポーネリア様はもちろん他の妖精様方もお食事にご招待と相成りました。


「ところでポーネリア様、アレンジール公爵家のローレシアお嬢様がこちらに来られてますよね? 一体何があったんですか?」

俺の言葉にウグッと食事を詰まらせるポーネリア様。はい、果実水をどうぞ。


「ゴクゴクッ、プハ~、死ぬかと思ったわ。突然核心に触れるような質問をしないでよ、こういう事は徐々に証拠を固めて真実に近づくのが醍醐味なんじゃない。

先ずはノッペリーノが私の精霊の庭にやってきた経緯から話してくれる?」

何か刑事ドラマか探偵アニメのような展開を期待されていたポーネリア様。ごめんなさい、俺って身体は子供頭脳は大人な探偵じゃないんで、推理とかはちょっと。基本的に経験則からの力押しなんです。

俺はポーネリア様にこれまでの経緯、コロシアムで拉致られたこと、アレンジール公爵家の皆さんがお札を張られて操られていた事、親玉をぶんなぐって事態を収めたので多分匿われているであろう精霊の庭を探し当ててやってきたことを伝えたのでした。


「まぁアレンジール公爵家に精霊様が住まわれていてお庭のどこかに精霊の庭があるという話は有名だそうですから、ウチの精霊様に見つけていただきました。

エリーゼさんの契約妖精であるマルベール様にお伺いしてもよかったんですけど、自力で見つけたって形にしたほうが問題が少ないかと思いまして。

先ほどお話ししたように、ローレシアお嬢様が匿われているとしたら状況的に精霊の庭以外に考えられなかったんですよ」

俺の話に「まぁそれもそうね」と肩を竦めるポーネリア様。


「やっぱりあれですか、ローレシアお嬢様が<神眼>のスキルで妖精の存在に気が付いたから連れてきたとかいった感じですか?」

「私は<鑑定>のスキルは持ってないから正確なところは分からないけど、私たち精霊や妖精を感じる事が出来るようになったのは確かかもしれないわね。以前から何となく視線を向けてはいたみたいだったんだけど、本当に何となくで確証はなかったみたい。それがこの二日で急激に開花したっていうか、より存在を感じ易くなったみたいね。

昨日の夜に助けを求められてね、家の者がおでこにお札を張られておかしくなってるって言われて匿うことになったの。私たちは新しいファッションだと思ってたからびっくりよ、ウチの子の中にはおでこに落ち葉を張り付けて遊んでる子もいたくらいですもの。

あれは人を操る魔道具の一種だって教えてくれたから、しばらく身を隠したほうが良いってことで精霊の庭に招待したのよ。今は奥で横になってるわ」


ポーネリア様の言葉に、俺が内心ホッと胸を撫でおろしていたことは内緒です。俺は全ての事態はそろそろお終いになりそうだと伝え、ローレシアお嬢様のところへ案内してもらうことに。

そこはまるで春のお花畑のように暖かな日差しの差し込む、とても穏やかな場所でした。そんな中で横になってかわいらしい寝息を立てる美少女が一人。

うん、事案ですね。

俺は<ポケット>からあるものを取り出すと、精霊様に声を掛けます。


「レンジマスター、こいつを焼き立て熱々にしてもらえますか?」

「任せておきたまえ、私はレンジマスターなのだ!! ムムムムムムッ、チーン」

精霊様の言葉に、本当に焼き立て熱々状態になるロングフランクもどき。俺が手に持つ串からは、旨そうな香りが周囲に広がります。

するとぐっすりお休みになられていたローレシアお嬢様の身体がぴくぴくと動き出し。


「グルルルル、お腹が空いた、お肉を所望」

盛大に腹の虫を鳴らしながらむくりと起き上がるや、俺が手に持つロングフランクもどきに視線を釘付けにするのでした。

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