キャプテン①
秋大の初戦は中堅・樋橋北中学校。
めぼしい選手はいないかな…
部活終わり。
夕焼けに染まったグラウンド。
片付けの音が少しずつ消えていく中。
伊能「銀、勝。少しいいか」
振り返る。
そこに立っていたのは、伊能監督。
かつて名門・安条高校を甲子園優勝に導き、その後プロでも活躍した男。
今はこの鷹浜中を率いる人。
中尾・嶋口「はい!」
伊能はゆっくりと二人の前に立つ。
腕を組み、少しだけ目を細めた。
伊能「話は二つだ」
空気が締まる。
伊能「まず一つ。銀」
中尾「はい!」
伊能「明日からキャプテンだ。チームを導け」
中尾「……っ、はい!」
伊能の視線が移る。
伊能「勝」
嶋口「はい」
伊能「お前は副キャプテンだ。銀を支えろ」
嶋口「……はい!」
伊能「で、二つ目だ」
空気が少し変わる。
伊能「お前らバッテリー、俺に何か隠してるだろう」
ドクン、と心臓が鳴る。
中尾と目が合う。
逃げるか。ごまかすか。
いや。
嶋口「……隠してるわけじゃないです」
伊能「ほう」
嶋口「ただ、まだ形になってないだけです」
伊能は黙って聞いている。
嶋口「俺、右だけじゃなくて左でも投げてます」
沈黙。
伊能の目がわずかに鋭くなる。
中尾「俺が受けてます。右も左も全部」
伊能「スイッチピッチャー、か」
嶋口は少し驚く。
伊能「昔、何人か見たことはある。だが大体は途中でやめる」
視線が刺さる。
伊能「どっちも中途半端になるからだ」
嶋口は黙る。
伊能「で?」
低い声。
伊能「考えはあって行動したのか?」
嶋口「……あります」
伊能「言ってみろ」
嶋口はグローブを軽く握る。
嶋口「右は完成形です。でも、それだけじゃ届かなかった」
あの日の光景が浮かぶ。
143km/h。そしてスタンド。
嶋口「だからもう一つ、武器が必要だと思いました」
伊能は黙っている。
嶋口「左はまだ未完成です。でも」
一歩、踏み出す。
嶋口「完成させます。右も左も、どっちもエースにします」
静寂。
中尾が横でニヤッと笑う。
中尾「俺が成立させます。どっちでも勝たせます」
伊能は二人を見て、しばらく何も言わなかった。
数秒。
いや、もっと長く感じた。
そして、小さく息を吐いた。
伊能「……いいだろう。試してみろ」
アナウンスが響く。
アナウンス「一回表、鷹浜中の攻撃」
一瞬の間。
そして
アナウンス「一番、キャッチャー、中尾くん」
スタンドがわずかにざわつく。
観客A「鷹の主砲が一番?」
観客B「珍しいな……」
中尾はゆっくりと立ち上がる。
バットを肩に担ぎながら、軽く首を鳴らした。
中尾「よし、行ってくるわ」
嶋口「いきなり頼むぞ、キャプテン」
中尾はニヤッと笑う。
中尾「任せろ」
バッターボックスへ向かう背中。
いつもより少しだけ大きく見えた。
相手バッテリーが構える。
審判「プレイ!」
初球。
ピッチャーが振りかぶる。
中尾「……」
静かにタイミングを取る。
シュッ—
カキン!!
いきなりの鋭い打球。
三遊間を抜ける。
スタンド「おおっ!」
中尾は一塁を駆け抜ける。
審判「セーフ!」
ベンチが湧く。
嶋口「さすがだな」
中尾は一塁上で軽く拳を握る。
中尾(流れ、持ってきたぞ)
アナウンス
「二番、セカンド、波田くん」
波田がバットを持って打席へ向かう。
一塁を見る。
波田「銀、いくよな……!」
中尾は一塁ベースの上で、軽く指を動かす。
小さな合図。
波田「……了解」
ピッチャーがセットに入る。
牽制は、ない。
中尾(今だ)
一歩。
二歩。
スタートを切る。
ピッチャー「!」
慌てて投球。
波田はバットを引く。
キャッチャー「走った!」
送球。
だが
中尾はすでに二塁ベースへ滑り込んでいた。
審判「セーフ!」
スタンドがざわつく。
嶋口「いきなり来たな……」
ベンチが一気に活気づく。
波田は軽く息を整え、構え直す。
波田(これで一点圏内)
中尾が二塁上で立ち上がる。
中尾「流れ、もらったぞ」
ピッチャーが明らかに動揺している。
伊能「いいぞ、そのまま揺さぶれ」
伊能 正
年齢61歳
ポジション:ピッチャー(?)
噂:愛知の名門・安条高校で甲子園優勝に導き、プロで活躍した後は母校である、安条高校の監督したあと、今に至るようだ。
花田 蓮一
年齢13歳(中2)
誕生日:11/9
ポジション:外野
右打ち
ミート⑥
走力⑥
守備⑦
噂:嶋口が守備交代するときの相手が彼らしい。




