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スイッチ 〜前人未到の夢の道導〜  作者: はまちゃん


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6/26

キャプテン①

秋大の初戦は中堅・樋橋北中学校。

めぼしい選手はいないかな…

部活終わり。


夕焼けに染まったグラウンド。


ノックの音が途切れ、片付けをする部員たちの声も少しずつ遠ざかっていく。


グラウンドに残るのは、土の匂いと秋風だけだった。


「銀、勝。少しいいか」


その声に、俺と銀は同時に振り返る。


そこに立っていたのは伊能監督だった。


かつて名門・安条高校を甲子園優勝へ導き、その後はプロ野球でも活躍した伝説の選手。


今は鷹浜中野球部の監督として、俺たちを鍛えている。


「はい!」


二人で返事をすると、監督はゆっくりと歩み寄ってきた。


腕を組み、俺たちを見つめる。


その視線だけで空気が張り詰める。


「話は二つだ」


静かな口調だった。


それでも、その一言だけで背筋が伸びる。


「まず一つ」


監督の視線が銀へ向く。


「明日から、お前がキャプテンだ」


銀は目を見開いた。


「……俺、ですか」


「そうだ」


短く答え、監督は続ける。


「お前には人を動かす力がある。プレーだけじゃない。声も、空気も、お前なら変えられる」


銀は拳を握った。


「……はい!」


その返事は、いつもより力強かった。


監督は今度は俺を見る。


「勝」


「はい」


「お前は副キャプテンだ」


一瞬だけ息を止める。


「銀を支えろ」


「……はい!」


監督は小さく頷いた。


「二人で、このチームを全国へ連れていけ」


「はい!」


夕焼けに二人の声が重なる。


監督は少しだけ笑みを浮かべた。


だが、その表情はすぐに消えた。


「二つ目だ」


空気が変わる。


「お前らバッテリー、俺に何か隠してるだろう」


心臓が跳ねた。


銀と目が合う。


逃げるか。


ごまかすか。


いや。


ここまで来たら隠す意味はない。


「隠しているわけじゃありません」


「ほう」


「まだ、形になっていないだけです」


監督は黙って聞いている。


「俺、右だけじゃなく……左でも投げています」


数秒。


沈黙が流れた。


監督の目が鋭くなる。


「俺が受けています。右も左も全部」


監督はゆっくり息を吐いた。


「スイッチピッチャー、か」


思わず顔を上げる。


知っていたのか。


「昔、何人か見たことはある」


監督は遠くを見るような目をした。


「だが、ほとんどが途中でやめた」


「……」


「右も左も中途半端になったからだ」


言葉が胸に刺さる。


俺も、その可能性は何度も考えた。


「で?」


監督の視線が戻る。


「考えはあって始めたのか」


「あります」


「言ってみろ」


俺はグローブを握り締めた。


あの日。


最後の大会。


俺の渾身のストレートは、スタンドへ運ばれた。


あの景色は、今も忘れられない。


「右は完成形です」


静かに言葉を紡ぐ。


「でも、それだけじゃ届きませんでした」


監督は何も言わない。


「だから、もう一つ武器が必要だと思いました」


一歩踏み出す。


「左はまだ未完成です。でも完成させます」


もう迷いはない。


「右も左も、どっちもエースにします」


静寂。


隣で銀が笑う。


「俺が全部受けます」


監督が視線を向ける。


「右でも左でも、勝たせます」


しばらく誰も話さなかった。


風だけが三人の間を通り抜ける。


やがて監督は小さく息を吐いた。


「……いいだろう」


その一言で胸が熱くなる。


「ただし」


俺たちは顔を上げた。


「遊びで終わらせるな」


「はい!」


「中途半端になるくらいなら、今すぐやめろ」


「はい!」


「やるなら誰にも真似できないところまで行け」


その言葉は命令ではなく、期待だった。


「全国で通用する武器にしてみせろ」


「はい!」


監督は満足そうに頷いた。


「次の練習試合で試す」


「ありがとうございます!」


監督は背中を向ける。


歩きながら一言だけ残した。


「楽しみにしている」


夕日に照らされながら去っていく背中は、どこまでも大きかった。


その数日後。


秋季大会初戦。


球場には朝から多くの観客が集まっていた。


スタンドには応援団の太鼓が鳴り響き、鷹浜中の選手たちがベンチからグラウンドへ飛び出していく。


整列を終え、俺たちはベンチへ戻る。


アナウンスが静かに響いた。


「一回表、鷹浜中学校の攻撃を開始します」


球場の空気が引き締まる。


続いて、打順が読み上げられる。


「一番、キャッチャー、中尾くん」


スタンドがざわついた。


「やっぱり今日も一番か」


「鷹浜の主砲がトップバッターなんだな」


銀はゆっくり立ち上がる。


バットを肩に担ぎ、軽く首を鳴らした。


「流れ、取ってくる」


「頼んだ、キャプテン」


「任せろ」


背中を向けて歩いていく。


その背中は、夏よりずっと頼もしく見えた。


打席に立つ。


相手エースが大きく振りかぶる。


「プレイ!」


初球。


鋭いストレート。


銀は静かに見送る。


「ボール!」


一球見ただけで軌道を頭に刻む。


二球目。


今度はストライクゾーンへ。


銀のバットが鋭く振り抜かれた。


乾いた快音が球場に響く。


打球は三遊間を真っ二つに破る。


ショートが飛び込む。


届かない。


「セーフ!」


先頭打者ヒット。


ベンチが一気に盛り上がる。


銀は一塁上で拳を握った。


「流れ、持ってきたぞ」


続くアナウンス。


「二番、セカンド、波田くん」


波田が打席へ向かう。


一塁を見る。


「行くよな」


銀は小さく頷く。


リードを広げる。


投手がセットに入る。


牽制はない。


その瞬間だった。


銀がスタートを切る。


キャッチャーが立ち上がる。


「走った!」


送球。


しかし銀は迷わない。


全力で滑り込む。


「セーフ!」


盗塁成功。


スタンドがどよめく。


「速い!」


「流れを完全に引き寄せた!」


ベンチから歓声が上がる。


波田は静かにバントの構えを取った。


投手は明らかに動揺している。


監督がベンチから静かに頷く。


「いいぞ。そのまま揺さぶれ」


鷹浜の攻撃は、まだ始まったばかりだった。

伊能(いのう) (ただし)

年齢61歳

ポジション:ピッチャー(?)

噂:愛知の名門・安条高校で甲子園優勝に導き、プロで活躍した後は母校である、安条(あんじょう)高校の監督したあと、今に至るようだ。


花田(はなだ) 蓮一(れんいち)

年齢13歳(中2)

誕生日:11/9

ポジション:外野(ライト)

右打ち

ミート⑥

走力⑥

守備⑦

噂:嶋口が守備交代するときの相手が彼らしい。


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