作戦会議
Floraison
―フランス語で「開花」を意味する―
過去に場面緘黙症を抱えていた霞と仲間たちと一緒にアイドルとして花開く。
栃木県足利市を舞台に
『場面緘黙症×アイドル×足利市』
今までにない繊細でリアルなアイドル成長ストーリー。
次の日の放課後。
廊下の中央に設置してあるテーブルを囲むように3人は座っていた。
「それでは!これから作戦会議を始めます!」
椿が高々と宣言すると、わ〜と霞は小さく拍手をしたところで蘭が突っ込んだ。
「待て待て。普通に仕切ってるけど椿がリーダーなのか?」
「何、不満なの?私が立ち上げたんだから当然私がリーダーでしょ!それに蘭は振付担当なんだから兼任は大変でしょ?」
それはそうだけど…と渋る蘭。
こんなやつにリーダーを任せて大丈夫なんだろうかという心配を余所に話を進める椿。
「リーダーと振付は確保したということで、あとは衣装・作詞・作曲の担当が欲しいところよね…」
と考え込む椿。
ふと、顔を上げて2人に問いかけた。
「…誰か当てはある?」
「結局投げやりじゃないか」
問題を丸投げした椿に呆れる蘭。
「私、友達蘭ちゃんしかいないから…
力になれなくてごめんね…」
しゅん、と落ち込んでしまった霞を見て蘭は椿を睨む。
「そういう椿こそ当てはないのか?それかリーダーの椿が学年全員に片っ端から声かけたら良いんじゃないか?」
椿はえ〜〜とめんどくさそうに声を上げる。
「そんなことしてたら日が暮れちゃうわ!」
確かに知らない人に片っ端から声かけるのなんて私だったら嫌だな…と思う霞は、話しかけなくとも済む方法を思いついた。
「…掲示板にメンバー募集の張り紙をしたらどうかな?」
ボソッと呟いた霞に2人が反応した。
「それ良いじゃん!」
「でも勝手に学校とは無関係のチラシなんて張ったら怒られるんじゃないか?」
「じゃあビラ配りでもする?」
結局は一人一人声かけてビラを渡さないとか…。
良い考えだったのに…と少し落胆していると、
遠くに見覚えのある顔が見えた。
向こうもこちらに気づくと笑顔でこちらに手を振り、優雅な足取りで近づいてきた。
霞は蘭に合図すると、蘭も近づいてきた彼女へ視線を向ける。
蘭と口論していた椿も同じく視線を移すと、昨日の入学式で新入生代表の挨拶をしていた生徒が近づいてきた。
「こんにちは、また会いましたね♪」
にっこり笑って昨日知り合った2人に挨拶をすると、
今度は椿に向き合い会釈をする。
「初めまして。C組の夢眠美萌里です」
丁寧な挨拶につられ、ピシッと背筋が伸びる椿も挨拶を返す。
「初めまして!A組の古川椿です!
…って、2人ともいつの間に知り合ってたの!?
昨日新入生代表の挨拶してた子だよね!
てことは今年の受験の首席ってこと!?
すご〜い!優等生なのね!!」
勢いよく喋る椿に全く動じず、穏やかに接する美萌里はまるで聖女のようだ。
「ごめん、うるさいやつで…」
代わりに申し訳なさそうに謝る蘭に美萌里は変わらず穏やかに答える。
「いえ、賑やかで楽しいですね♪今日は何の集まりですか?」
急にハッとなった椿は前のめりになって美萌里に問いかける。
「そうだ美萌里ちゃん!作詞か作曲か衣装って作れる?もしくは誰か出来る人知ってる?」
「ちょっと椿!初対面でいきなり過ぎるし迷惑だから…」
蘭が止めようと注意すると、
「私、幼い頃からピアノとヴァイオリンを習っていたので作曲は少しお手伝いできるかもしれません」
にこやかに答えた美萌里に椿は目を輝かせた。
「え!本当!?」
ええ、と美萌里は返事をすると、少し考え込み言葉を続けた。
「…それから衣装のことなのですが、お友達が“こすぷれ”…?をする為にお裁縫をしていると伺いました」
コスプレがよくわかっていないのか首を傾げながら少し不安そうに答えた美萌里に、更に目を輝かせる椿。
「コスプレ…ってことは衣装が作れるのね!!!」
「はい。衣装を作ってよく催し物に行くと言っていましたね」
美萌里は微笑みながら返事をした。
「美萌里ちゃん!その子紹介できる?」
「ええ。まだ教室に残っていたので、連れてきましょうか?」
そう言ってC組の教室へ戻っていった。
「こんなトントン拍子に事が進むとは…」
驚いている蘭に椿は問い詰めた。
「てか知り合いなら早く紹介しなさいよ!
なんだったのよこの時間!」
「昨日初めて会っただけだし、楽器をやっているなんて知らなかったんだよ」
またまた口論を始め出したところで美萌里が友達を連れて戻ってきた。
「わ〜!かすみん!らんらん!昨日振り〜!!」
急にハイテンションな声が響き渡り2人の口論が止まった。
「初めましてだよね〜?ひまりでーす!!!」
2人に挨拶をしてから椿にも挨拶をする陽茉莉。
自分よりもテンション高めな陽茉莉に少し仰け反っていた椿だったが、すぐに持ち直し返事をする。
「初めまして!私は椿!よろしくね!
で、早速なんだけど!
2人とも、私たちと一緒にアイドルやらない!?」
美萌里は“あいどる”…?と首を傾げていたが、陽茉莉はすぐに応答した。
「えーー!面白そう!!やるやる〜!!」
ノリノリで返事をした陽茉莉に椿が飛びつく。
「やった〜〜!じゃあ陽茉莉ちゃんは衣装担当で
お願い!」
「オッケ〜!」
軽いノリのような感じで進む2人はもう別世界へ行ってて私たち3人は置いてけぼりだ。
蘭はピンときていない美萌里に詳しく説明をした。
「アイドルっていうのは、ステージに立ってお客さんの前で歌ったり踊ったりするグループなんだけど、その衣装と作曲が作れるメンバーを探していたんだ」
「そうだったんですね…
皆さん、アイドルの経験が…?」
美萌里は不安そうに尋ねると、
「み〜んな未経験だよ!
私たちでアイドルグループを一から作るの!」
椿が美萌里の不安を吹き飛ばすように言った。
美萌里は目を丸くし、その後少し嬉しそうに目元を下げた。
「それはとっても楽しそうですね。私で良ければ…大きな力になれるかはわかりませんが、ぜひ参加させてください♪」
4人は顔を見合わせ美萌里を歓迎した。
「じゃあ改めてよろしくね!
陽茉莉ちゃん!美萌里ちゃん!」
椿は陽茉莉に手を差し出し、蘭は美萌里に手を差し出す。
「よろしく〜!」
「よろしくお願いします♪」
2人はそれぞれその手を取り握手をすると、陽茉莉はもう片方の手で霞の手を取った。
陽茉莉は霞の目を覗き、よろしくね!かすみん♪と優しく声をかけた。
完全に蚊帳の外だった霞を思いやっての行動だったのか。成り行きを外から見守っていた霞はいきなり手を取られ声をかけられたことにびっくりしたが、気にかけてもらえて嬉しかった。
椿は椅子を持ってきて2人を座らせると、会議を仕切り直した。
「さて!晴れてメンバーが5人揃ったところで改めて担当を発表するわね!私がリーダー、蘭が振付、
美萌里ちゃんが作曲で、陽茉莉ちゃんが衣装!
ということで、あとは作詞担当が必要ね!」
「一気にメンバーが2人も入って作曲と衣装も決まったわけだし、無理に今日全部決めなくても良いんじゃないか…?」
事が一気に進みすぎて不安な蘭は椿をたしなめる。
「でも曲作るにはまず歌詞がないと作曲出来ないもんね〜」
と陽茉莉が口を出す。
みんなが思い悩んでいると、
美萌里がふと何かを思い出したように口を開いた。
「そういえば私…、霞ちゃんの作文を拝見した覚えがあります」
「え…?」
霞はびっくりして美萌里を振り返る。
「名字は相沢さんでしたよね?中学生の頃、作文コンクールの入賞者に名前が入っていたのを思い出しました」
「へ〜霞ちゃんすごいじゃん!!」
「かすみん天才〜!」
「それは知らなかったな…」
椿と陽茉莉は霞を褒めると、蘭も驚いたように答えた。
一気にみんなから注目され挙動不審になる。
「あ…私、話すの、あんまり得意じゃなくて…文章を書くほうが、得意だったから…でもあんまり上手じゃないよ」
霞は遠慮がちに答えると、美萌里は優しく声をかけた。
「いえ、霞ちゃんの文章は清らかで
読んでいて優しい気持ちになります。
大変だとは思いますが…
ぜひ作詞をしてみてはいかがですか?
作曲担当として、私もサポートしますので♪」
美萌里の提案にみんなが賛成する。
「え〜良いじゃん!!霞ちゃんお願い!」
「私もサポートするよ〜!」
「霞、不安なら私も手伝うからやってみないか?」
急なプレッシャーを向けられ身体が重くなったように硬直した。責任重大な作詞を任されることに大きな不安が拭えなかった。
私だけ何もしないのはさすがに気が引ける…。
けど作詞なんてやったことがないし、そもそも私が作った歌詞をみんなに歌わせるなんて…。
色んな思考が頭を駆け巡る。
何も担当がない私に良かれと思って美萌里ちゃんは提案をしてくれたのだと思うけど、正直究極の選択を差し向けられこの場から逃げ出したい気持ちになった。
だが、みんなの優しく温かな眼差しが。
この穏やかな居心地の良い空間が。
今まで孤独だった過去が報われるようなこの幸せな状況が嬉しくて…。
「…作詞、やってみます!」
霞は覚悟を決めたように強く答えた。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
大人数になると途端に口数が少なくなってしまうのはあるあるですよね。(理解者求む…!!)
メンバーが増えてきましたね…!
あと1人加入するのでお楽しみに♪




