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沖谷幸生にしあわせを  作者: 椋木美都
第3章『与えられるのは――』

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プロローグ『沖谷幸生と沖谷幹人』

沖谷被りでの不本意ランキング

1位『双子?』

2位『兄妹?』

3位『親戚?』

沖谷「じゃあ佐藤さんとか田中さんでもそー聞くんか」

幸生「仕方ないよ。これが選ばれし苗字の宿命なんだ……」

沖谷「ちょっチェンジ!何で初めて会った同じ苗字の奴がお前なん!」

大学1年の春。私はガイダンスの説明より、先程配られた名簿を見ることに集中していた。


――分かってたけど女子少な!私結構後ろの席なのに華が数えるくらいしか見えない……。


前も後ろも斜め前も男男男。理系学部が多い大学ではあるあるの現象である。


大学でも友達は必要。例え1人でも自分が受けたい講義を履修するというスタンスは覆らないが、必修科目など……経営学部1年生しかいない講義室でぼっちなのは想像するだけで少々堪えた。ただえさえ女子は固まるからね!


――せめて1人……!欲を言うなら同じ講義でも学籍番号で教室振り分けられる時あるから、私と近いあ行の苗字の子……!


「……!?」


そしてある重大な事実に気づく。なんと私の後ろの男子生徒は――私と同じ『沖谷』だったのだ!この苗字はありそうで無い。やや珍しい部類の苗字だと自負している。彼が背後に座っているということは、名前の頭文字は私より後ろということなんだろう。勝った←?


――いやでも分かんない。『おきや』かもしれないし『おきだに』かもしれない。これは……。


彼の風貌と姿勢が私と同じ波動を醸し出しており、遥か遠い席にいる陽キャピキャピ女子より万倍話しかけやすいのもあった。友達作りの予行練習兼、前の席に座る者として――この苗字を話題に話しかけてみようと思い至る。


――休み明けのオリエンテーションとかね。なにかと公的な場では学籍番号順に座らされがちだし。ちょっと話しかけてやるか!


そして10分休憩が始まった瞬間、私は勇気を出して振り向いた。ここの勢いって本当大事だよね。相手がトイレとか飲み物立ちに行くかなってタイミング図ってるともう腰が引けて無理になっちゃうし。


「ねぇ。沖谷っておきたに?おきや?」


「……おきたに」


「同じかぁ……もうこの4年、先生から女の沖谷って呼ばれること確定した」


「いや自分の名前分かっとる?『幸生』……さちおとしか読めんのじゃけど」


「さちな。だよ。あ、今流行りの男の娘とかじゃないからね。ちゃんと女だよ」


「もう古ぃわ!てか俺と喋っててええん」


はっと正気に返ると、既に少ない女子が塊を作りつつあった。マ、マズイ!


「ツッコミ沖谷君に時間を取られた所為で友達が……!どうしよう。沖谷君みたいにぼっちになっちゃう」


「うるせークソ沖谷が!俺は同じ内部進学のダチおるし。あーもう名前のややこしさもあって俺がお前と勘違いされること確定したわ」


「こっちの台詞だぁ!一瞬親戚かなって思ったけど違うね!私の親戚は人格者しかいないから!」


「(自分を除く)」


「注釈つけるな!もういい!この勢いで友達1人作ってやる……!」


「勢いの割に目標しょぼ……頑張えー」


こうして、前の前の席にいた(前の席の男子が邪魔で見えなかった)由衣ちゃんとその向こうに1人でいた梅ちゃんと仲良くなり、後に身体測定で話しかけてきた高橋さんとグループを組んだのだった。


そして私が経営学部で最初に話した沖谷君とは――


「……あれ。沖谷君もSIG入ったの?」


「先生に勝手に入れられた。てかどーするん俺らダブル沖谷で」


「呼び方で区別付けてもらうしかないよ。私が沖谷SSRで沖谷君が沖谷R」


「ざけんなどう考えても俺がURじゃろ!」


――経営学部のイベントサークル『SIG』で他の男子より濃い繋がりとなるのだった。

安井「えー2人共苗字同じなん?ヤバ」

沖谷「ほんまよ。しかもコイツ真面目そうに見えてかなりイカれとる」

幸生「沖谷君も大概だけどな(ボソッ)」

菜々緒「もー沖谷で争わんで。ややこしいからこっちで呼び名分けんと」

安井「(幸生を見て)下の名前なに?」

幸生「さちな」

安井「ならさっちゃんじゃろ!」

菜々緒「さっちゃんで」

藤脇「さっちゃん……ええな!じゃあ男の方は普通に苗字で」

沖谷「なんか俺の扱い雑じゃないすか?別ええっすけど」

幸生「(きゅ、急に下の名前のあだ名で呼ばれるのか!緊張するけど……)リーダーが決めたのならそれで」

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