エピローグ『そして愛は持続する』
威弦が友人に『幸生のことなんて好きじゃない』と言わなくなったのはいつだったのか――正確な日を覚えている者はいない。ただ彼は口癖のように『幸生は可愛い』発言を連発していたため、周囲の人間は急速に拗れていく恋情を調節する方を優先した。
時折見せる笑顔の可愛さが不安に変わる。小さくて細くて滑らかな手首に独占欲が生まれる。
――今どこにいる?誰といる?何時に終わる?
幸生が数少ない友人と飲む日は束縛したくて仕方がない。それでも彼は事実確認が精一杯で、常に嫌われるのが死ぬほど怖いと怯えている。
「――篠木基準で測られても困るよ。私にとっては本当にただの友達だから」
幸生の言葉が信じられない。何故なら彼女は自他共に認める嘘つきだから。
「男女の友情とかねぇよ。俺だって幸生のこと友達と思ってねーし」
「へー」
――ペットみたいなもんか。じゃあやっぱり篠木は私を恋人にしたいなんて思ってない?
「…」
「…」
――いやなんか言えよ!呑気に厚切りポテトフライ食ってんじゃねぇ!
たった二文字と感情の読めない顔に振り回され、期待していた自己満足が与えられないストレスに気が狂いそうだった。
いつ袖にされるか気が気じゃない。幸生の一挙一動が気になって仕方がない。大切にしたい。壊したくない。猛省して後悔して自分に呵責を覚えて――
「よくうんざりしないよね。今日も私3日連続で財布とスマホ(引かれる為にあえて)家に置いてきちゃったのに……いつもこんな色々と終わってる私と夕ご飯食べてくれてありがとう」
「……嫌なんて思ったことねーよ。あんま自分下げんな」
――そんな愚かな威弦を救うのは、いつだって哀愁を漂わせた幸生だった。
第一章はこれで終わりです。次章から前作の続きとなる物語が始まります。まだ未読の方は『100万円を置いた猫』に移ってからまた戻ってきてください。




