14
その辺に散らばった服やざるなどを急いで回収して、朝日の中ずぶぬれで重たくなった服を少しだけ絞って、雨音ちゃんは俺の手を引いたままどこかに歩き出す。
どこ行くのと声をかけても答えない。先を歩く雨音ちゃんの顔が見れないまま、スンスンと鼻をすする音だけが聞こえてくる。獣道のようなところをかき分け、高い木の枝や草花を抜けた先に、ログハウスのような家が見えた。
これは…?というと雨音ちゃんはずんずん進み、入って。と声をかけてくれた。中は整頓されて清潔感のある部屋で、簡単な椅子と机もある。とりあえず、新しい服着てと言って服を渡してくれてそのまま家の外にでてしまった。服を広げてみるとよくRPGで見るような初期装備の布の服のようだ。考えてみれば雨音ちゃんも簡単なワンピースにエプロンだけを着ていたように見えた。
とりあえず濡れた服はどうしようもないので、服を変えさせてもらう。濡れた服をまとめてそっと家の外に出てみると雨音ちゃんも着替えて濡れた服を木と木の間に通した紐にひっかけて乾かしていた。
しまった。女の子に外で着替えさせてしまった。
「………雨音ちゃん、怒ってる?」
「ううん、怒ってない。でも悲しい。どうしたらいいかわかんない」
そういいながら、俺の濡れた服をさっと回収して手早く紐にひっかけていく。こんなふうに困らせるつもりじゃなかったんだけど、意外な反応にこちらもどうしたらいいかわからない。
「………俺、雨音ちゃんに会いたかったよ。だからここに来たんだ」
「………私のせいで」
「そうじゃない!そうじゃないんだ。俺が自分で決めたんだ!」
とりあえず、家に入ろうかと言って、ドアをあけてくれた。ここで騒いでも仕方ない。椅子に座ると、雨音ちゃんがキッチンからポットとお茶を出してくれた。普通の緑茶のように見えるけど、口を付けるとなんだかさわやかな香りがする。ふうと一息つくと口を開く。
「………もしかして、あのくじらのぬいぐるみに願ってしまったの?」
「うん、こいつが一瞬だけ、雨音ちゃんの姿を見せてくれたから」
そう言って持ってきた荷物をごそごそと探り、クジラのぬいぐるみを見せる。
「………ここまでついてきたのね、君も」
そうして、ゆっくりと俺は雨音ちゃんに俺たちのいた世界では雨音ちゃんのいた記憶が消え去ってしまったこと、流星群の日にぬいぐるみに願ってここに来たことを説明した。
「………そう、私のことはなかったことになってくれたのね」
「意外と落ち着いてるね、雨音ちゃん。もっとショック受けちゃうかと思ってた」
「自分なんていなくなればいいと思ってここに来たから、多分そうじゃないかなと思ってた」
「そっか………。とりあえず、ここはどこなのか雨音ちゃんはわかってるの?状況が全く分からない」
「ここは、ヤマノ村っていう村のはずれにあるの。ここに来た時に、村の人にやさしくしてもらってここの家を貸してくれたのよ。そうだった、そろそろ村の人が来るわ」
そういって、キッチンの方に向かうと、なにか草のようなものをたくさんざるに盛り付けていく。それを見ながら、お茶をすすりつつ、考え込む。
ヤマノ村。もしかしたら元の世界にもありそうな名前だったけど、服や恰好から多分今までいた世界じゃないと思う。とりあえず、雨音ちゃんに会う目的は果たされたけど、ここからどうしていこうかもう少し情報が欲しいところだった。
村人のひとに、俺は受け入れてもらえるのだろうか。




