ハッコウ→イチウ
先にお知らせです。
先週に「20万PV記念に再編集版をカクヨムで投稿する」と活動報告をさせていただいたのですが、それをもう一週間延期させてください!
理由は、自分でも思っている以上に編集点が多過ぎたことが挙げられます。
何卒よろしくお願いします!
例の活動報告のURL→ https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2609818/blogkey/3386679/
俺は配信画面に映されている惨状に呆れるしかなかった。
待合室の椅子に腰掛け、ライバーズの皆と覗き込むパソコンの画面。
そこには、参加人数の許容量越えとかいうアホみたいな理由で近くの広場にドナドナされて行った、うたてさんと赤上さん、彼ら率いる愉快な集団がサンバを踊っていた。
それも、予定していた人数を大きく超えて。
一応、さっきの合唱までは150人程度で収まっていた。けれどそれが終わり、サンバになった途端もっと多くの人数が画面に飛び出てきたのだ。
どでかい山車を数十人で押しながら、煌びやかだったり、ラフだったり、どんな衣装も限らずに登場してきたのだ。
挙げ句の果てには、感極まった赤上さん本人が現れる始末。この『本人』というのはパネルに映っている『Vtuberの青下 不透』じゃない。正真正銘、生身の『赤上 透』だ。流石、身バレVtuberである。••••Vtuberとしてそれはどうなんだとは思うけれど。
そんな無敵の人である彼は今、自分のVtuberとしての姿が投影された等身大の液晶パネルをスタントマンさながらぶん回している。
ぐるぐると頭の上、腕や腋、股の下、その隙間を通している。
因みにうたてさんは、ちゃんとVtuberの姿でイベントに参加している。ちゃんと良識があってよかった。
「えぇ••••」
「あの子達、なんなんだろうね?」
「私が知りたいです」
それを観ながら、うちの先輩方は軽く引いた様子だ。
今回ライバーズから参加するメンバーは俺と美納葉、そして夕を除くと3人。
二期生からは鞘形トウ先輩に、バレンタイン=シルフィ先輩。一期生からはかぐやま旭先輩だ。
因みにこの場にいない山田 太郎先輩については『何故か降ってくる薔薇の花弁が邪魔過ぎる』という至極ごもっともな理由で運営から出禁を食らっている。風の噂で聞いたのだが、彼は去年のVOMKの会場を薔薇で埋め尽くしたという話だ。
••••あの人は本当に現実世界で生きているのだろうか。何だか世界線が違う気がする。
空中、それも何もない空間から生成される薔薇の花弁とかただのホラーだ。
今この場にいないライバーズの異能力者に思いを馳せていると、鞘形先輩が困惑した様子で俺の方へ向く。
俺はパソコンから視線を外して、先輩の問いかけに応えた。
「ねぇ、本能寺くん?さっき司会が紹介した参加人数150人だったよね?」
「そうですね」
頷く俺に、鞘形先輩がさらに言う。
「••••何で増えてんの?」
画面に視線を戻した。
そこには明らかに150人じゃない数の人々が踊り狂っている。
ざっと1000人は軽く超えて居る。
ぱっと見、本場のカーニバルと見分けがつかない。
「••••さぁ?」
「いや『さぁ?』じゃねぇよ!?」
「俺が分かるわけないじゃないですか」
「確かにそうだけど!?それでも困惑せざるおえねぇだろこんなん!」
「まぁその気持ちは分かりますよ。一桁は違いますもんね」
ツッコミをしなければいけない、そんな使命感からか取り乱している鞘形先輩を落ち着かせる。
「だよね!?俺の感性おかしくないよね!?本能寺くんとか視聴者のコメントとかが『まぁあの人達だし』みたいに妙に慣れた感じだったけど間違ってないよね!?」
「大丈夫ですよ。合ってます」
けどまぁ、何であんなに人数が増えたのかは何となく分かる。
大方、『本番が会場よりもっと広い広場になったんだからもっと呼べるじゃん!』と言った感じで他の友達も呼び出したのだろう。
「あーもう!全くわからん!」
鞘形先輩はまだ少し混乱した様子だ。
そんな彼に、バレンタイン先輩も言葉を投げかけた。
「赤上さんの異常さはこの業界じゃ常識よ。ほら、私達がストリーマーだったの時だって『変なVtuberがいる』って有名だったでしょ?」
「ライバーズ唯一のツッコミ担当の俺に言わせれば、それが常識になってることがおかしいと思うけどね!?何なの日本の配信界隈!?」
彼のツッコミに、俺は心底同意した。
◆◇◆◇◆
うたて カエルと、青下 不透によるパフォーマンスは終わり、司会者達のいる場所にマイクが戻される。
背景が夏の日差し注がれる原っぱから、ワインレッドのカーテンへと変わった。
「「以上!第一陣、第一番『愉快な友人達』でした!」」
「はい!ありがとうございました!」
司会進行のアキレス 健と粟国 あなは『パチパチパチ』と拍手を鳴らす。
「いや〜••••素晴らしい発表でしたね!••••途中『あれ?そんなに人数いたっけ?』とは思いましたが」
「あはは••••」
アキレス 健の言葉に粟国は苦笑を漏らす。
「でも演奏のレベルが桁違いですよね!ね、粟国さん」
「あー分かります!私、今回の司会のお仕事をお受けした時に、去年のVOMKのアーカイブを見返したんですよ」
その言葉に、アキレス 健は何やらパラパラと資料を捲り、頷く。
「ほうほう!確か••••去年もうたてさんと青下さんは一緒にイベントに出てましたね!」
「そうなんですよ!その時のお二人?の演奏も見たんけど、何というかクオリティというか、もう涙が出てきちゃいまして」
「そこまで感極まることあるんですね••••!?」
「ええ。やっぱり音楽は心の栄養だと思います。••••さて!話はここで一区切り致しましょう!さぁさぁ健さん!次の方の説明ですよ!」
「お任せあれ!」
◆◇◆◇◆
◆◇◆◇◆
それから数曲が過ぎ、プログラムの第一陣、つまり個人勢の全てのパフォーマンスが終了した。
劇場で音楽を聴く時にある特有の余韻が宙に漂い、そして溶けていく。
粟国 あなはその余韻が適度に薄くなったタイミングで、視聴者に呼びかけた。
「それでは!以上で第一陣は閉幕となります!第二陣は30分程度の休憩を挟んだ後を予定しています!」
「この間にトイレだったり、軽食だったりを取っておくことをお勧めするぞ〜!」
そんなこんなで連絡を終えると、二人の司会者は雑談モードへと移行する。
休憩中、30分も場を無音にするのは些か勿体無い、そんな意味での雑談だろう。
けれど音楽の祭典にはそぐわないイメージだ。
そこで運営は二人はちょっとした一芸をしていた。
「私もお花摘みに行こうかな••••?」
「じゃあ俺も雉撃ちに行ってくる」
「雉撃ち?」
「お花摘みの男性版って所かな?」
「男性にもトイレを恥ずかしがる概念あるんですね!?」
「流石に酷くない?」
「いやぁ〜、うちの学校の男子、下ネタばかりでしたから」
「まぁ学生の内だからね••••」
ボケ、ツッコミ、笑い、そんな雑談を行うのは最初こそ。
この一連のやり取りは予定調和だ。
二人は会話からとある話題に繋げる。
「と、いう訳で!俺と粟国さんの二人の司会は花摘み雉撃ち等の理由で、この場から離席します!」
「その間の空白時間は、超有能な運営さんがミニコーナーを設けてくれました!」
「はい拍手!」
ぱらぱらぱら、と効果音が鳴る。
「そのミニコーナー、題して『参加者の歌ってみたベストセレクション』••••は今回の参加者が投稿している歌ってみたの中で、『今回のVOMKでは歌わないもの』をBGMとして流すというものです」
「いい感じに息抜きになると思いますので早速行ってみましょう!それでは、30分後にまたお会いしましょう!」
◆◇◆◇◆
30分と少し過ぎた時、それは唐突に流れた。
先程までミニコーナーが流れていた画面がプツリと切れて、その後に映された先では新たな会場へと映像が変化していた。
近代の歴史の絵画で見るかもしれない、広間が広がっている。例えるのならば、勲章授与を行うような風景だろうか。
そんな場所で、音が響く。
勇壮に、かつポップな音楽が背景で鳴る。
カツカツカツ。
ザッザッザッ。
何かが歩いてくるような音が聞こえた。
それは普通の足音にしては重苦しく会場に響いている。
『ん?』
『ミニコーナーは何処へ?』
『おい待てまさか第二陣に移行したのか!?』
『そんな唐突に!?』
『↑この流れは多分、曲とか歌ってるグループとかの紹介は後でするタイプだぜ』
『と、いうことは••••AIKOKU••••?』
『↑そういうことになるな••••(戦慄)』
コメント欄では視聴者が唐突な変化に驚きつつも場に適応、その後プログラムの流れを確認して絶望するという、世にも奇妙な状態になっていた。
視聴者の考察は合っていて、VOMKのプログラムは既に第二陣へと移行していた。
つまりは企業勢Vtuberの発表が始まる訳である。
そしてその一番槍を務めるのは———。
「「AIKOKU日本支部であります!」」
このVtuber業界人気ランキング、企業2位という圧倒的成績を残すAIKOKUであった。
そのメンバー、大和 ムサシとあきつ 隼は高らかに宣言する。
「「我々は、この栄誉に満ち満ちた素晴らしい場にそぐう様な發表を行ふ事を誓います!」」
その口上の後、場は暗転し、幕は開いた。
『お前らが一番場にそぐわねぇよ』
『そぐえよ』
『何でこんなんが2位なんだ』
視聴者からの総ツッコミに逢いながら。
◆◇◆◇◆
先程まではAIKOKU日本支部の面々の声の後ろに潜り込んでいた音が前に出てくる。
そう。彼ら彼女らが入場した際に流れた『勇壮かつポップ』な音楽は前奏であった。
カッカッカッ。
ドッドッドッ。
大和 ムサシ、あきつ 隼は音のリズムに合わせて足を踏み鳴らす。
絵面を読むなら、皇帝を前に音高く足を揃える儀仗隊のそれ。
しかしそれは彼らの鳴らす軍靴の様で、そうではない。
タップダンスのような軽妙さも感じられる独特なリズム感。そして何よりカジュアルだ。
前奏が終わる直前、二人は息を吸い込んだ。
「「" "」」
そうして発した曲はとてもAIKOKUらしいものだった。
自身の信じる考え、それのみを突き進む彼ら彼女らそのものを表した曲だ。
どれだけ尖った思想を持っていてもその先端に立つ事に誇りを持つAIKOKUの歌である。
二人に似合うのもそれもその筈、この曲はオリジナルソングだ。
AIKOKU日本支部の二人のためだけに書かれ、音を乗せ、魂を込めて生み出されたものなのだ。
そしてこの曲は二人にとって初めてのオリジナルソングであった。だからこそ、曲に対する思い入れは計り知れない。
「「" "」」
二人はこの曲への思いを精一杯込めて歌う。
視聴者はどんな思いかは分からない。
分かりたくもない。
しかし少なくとも、二人の曲に対する熱量は凄まじかった。
そして。
最後までAIKOKUの彼ら彼女らは自身を押し通したのだった。
最後まで読んでいただき、感謝です!




