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幼馴染Vtuber、暴走するってよ  作者: 日陰浴
VOMK編

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ビリーヴ

知らない人が出てきました。困惑してます。

まぁそれはそれとして、さぶいぼを年越しのお供にしてくれたらめちゃくちゃ嬉しいです!よろしくお願いします!



追伸:歌詞は、思い浮かべてください。

 『ブー』という開演ブザーが空気を揺らし、バーチャルの世界のステージで緞帳(どんちょう)が上がる。


 2Dの世界と、3Dの世界。二つの画面が交互に切り替わった。


 その二つの世界では背景として同じ劇場が壮観にそびえ立っている。


 しかし、幕が上がったとはいえ、薄闇は未だヴェールとしてこの場を包んでいた。


 その時。


 それに降りるはスポットライトから発せられる一筋の光。


 光の下には二つの人影があった。

 片方は男性、もう片方は女性のシルエットだ。

 いずれもVtuberで、男性はシルクハットに燕尾服、女性はドレスを身に纏っている。

 二人は同時に頭を下げる。

 少しの間の後、シルクハットの男は首をもたげて高らかに声を上げた。


「レディース!エーンド!ジェントルメン!さぁさ今宵は宴!Vtuber(ブイチューバー) original(オリジナル) music(ミュージック) karaoke(カラオケ)!開幕ですッ!」

「今宵じゃねーだろ真昼だわ馬鹿」


 女性のツッコミが男性に突き刺さり、少々冴えない形でVOMKは始まった。


        ◆◇◆◇◆

 

 シルクハットの男とドレスの女の奇妙な掛け合いから少し経つと、一部だけ照らされていた劇場の全体が明るくなった。

 すると、特有のそわそわとした様子と一転し、気の抜けたソーダのような穏やかな空気が流れ始める。

 いわゆる雑談のムードとなったそこでは、ついさっき開幕宣言をした二人の独壇場となっていた。


「と、言う訳で!始まりましたVtuber original music karaoke、通称VOMK(ヴォンク)!」

「司会進行はこの俺、実況解説キャスター系Vtuber、アキレス 健と」

「アナウンサー足抜けVtuber、粟国(あぐに) あなとでお送りします!」

 二人が丁寧に頭を下げ、それが上がると、『パラパラパラ』とした拍手だったり『ひゅーひゅー』と騒ぎ立てるような効果音が鳴る。


『始まった!?』

『始まり始まり!』

『幕が上がる演出すご!?』

『2Dと3D世界を交互で映すの芸コマやなぁ』

『楽しみだ!』

『このコメントは削除されました』

『待っていたぜェ!!この瞬間(とき)をよォ!!』


 イベントの明るい空気感によって背を押され、コメント欄の空気も明瞭な方向らしい。

 いや寧ろ、当日を待ち望んだ視聴者の想いこそが、この場をさらに明るく向かわせいるのかもしれない。


 アキレス 健は自己紹介用の丁寧な声音を、この場のテンションを後押しするように一転させる。

「いやー!まさかまさかこんなでっかいイベントで司会させていただけるなんて思ってもみませんでした」

「分かる••••!めっちゃ分かる••••!私達、実はデビューしてまだ二ヶ月も経ってないんですよ?」

 そう言うと、二人の司会は互いに頷き合い、それぞれの意見の同意を伝えた。


 ややあって、話題が移る。

 アキレス 健と名乗った司会の男は独特の喋り方で進行を始めた。

「さて、そんな私達のことなんてのは今回はどうでもいい!そう!どうでもいい!」

「何でどこぞの逆境で無頼なギャンブルアニメに出てくるナレーション!?••••けど確かにどうでもいい!」

「そう!今回のメインは雑談ではなく、歌!現在集まる最大にして最高のオールスター。彼ら彼女らが紡ぐ音楽祭をどうぞお楽しみください!」

 勿論そんなおふざけは、すぐに横に座る粟国のツッコミによって回収される。

 初めてとは思えない軽妙なやり取り。それはこの二人が実力で司会進行を任されたという事を如実に示していた。


「このVOMKは第一陣の個人勢、第二陣の企業勢に分けられており、どちらも見所目白押しでお送りしますよ〜!」

 アキレス 健が手を振り、イベントを盛り上げるべくアピールをする横で、粟国はその催しに関する注意を落ち着いたトーンで述べた。

「さてそこで一つご注意を!今回、沢山の面子が揃いました。その為、それぞれが歌うことのできる上限が二曲までとさせていただいています。ご了承ください」

 そこからそのままの口調でイベントのルールを述べていく。


 上がりきったテンション、釘を刺せばそれは勿論縮小する。

 普通ならここで多少会場が盛り下がるところだが、そうはならなかった。

「二曲といえば、粟国さん!今回一番初めの参加者さんも二曲での参加だそうですよ!?」

「はい!存じてます!個人勢ではありますが、複数人での登録をしたあの方ですね?」

 即座に話題を転換し、ルールが視聴者の頭に残しつつも、意識をイベントに戻す。

「そうですそうです!なんと150人以上の規模での参加だとか!」

「4管編成のオーケストラと同等がそれ以上の数!そうそう集まりませんね••••!」

「お陰で会場からはみ出しちゃって••••彼ら彼女らには特別措置として他の場所での撮影なんですよ••••」

「是非とも生で聴きたいところではありますが、致し方ありません。中継に移るとしましょう!」

 二人の司会者は掛け合いを終えた後、せーのと声を揃えて叫ぶ。


「「第一陣!第一番!登録ネーム『愉快な友人達』さんの音楽が開幕です!」」


「「いってらっしゃい!」」


        ◆◇◆◇◆


 場面が転換し、初っ端に映ったのは緑に薄いぐらい陰が差している画面だった。


『あれ?』

『ちょっとくらい?』

『緑?』

『緑だけどグリーンバックではないよな』


 多少困惑気味にコメントが流れる。


 その時、唐突にカメラが陰から離れた。

 どんどんと空へ空へと上がっていくような独特のカメラワーク。

 それは、ドローンに取り付けられたもののそれだろう。

 つまりここの撮影はドローンにて行われるのだ。

 やがて視点が変わり、映ったのは••••草原。


 実際にはただの原っぱと表現されるかもしれない場所かもしれないが、そこには沢山の色がある。


 浅緑(あさみどり)に、深緑(ふかみどり)若緑(わかみどり)に、薄緑(うすみどり)

 様々な緑色だけでなく、

 (すい)に、萌葱(もえぎ)に、(ひわ)若苗(わかなえ)若草(わかくさ)千草(ちぐさ)に、千歳緑(ちとせみどり)

 沢山の色がある。

 同じ緑なのにこんなにもカラフルだ。

 

 そんな場とあるものが映った。


 二つの液晶パネルである。


 自然に包まれるこの場に不釣り合いなほど人工的なそれに人影が映る。


 無表情に、されど楽しそうに立つ、カエルをモチーフにした雨具(ポンチョ)を纏う小柄な女性。

 野生味がある無造作な髪を軽く纏め、Tシャツとジーンズという至極ラフな格好の男性。


 いずれも二次元の姿だ。


 二人は液晶の中で目を合わせ、口を開く。


「うたて カエル」

「赤上••••じゃなかった。青下 不透!」


 二人が自身の名を口にしたその瞬間、ざかざかという足音が大量に聞こえてくる。


 ドローンがさらに高度を上げる。


 映った映像は二つのパネルへと駆け寄る数百人の人間だった。

 グランドピアノを数名で押していたり、楽器をその手に持っていたり、はたまた何も手に持っていなかったり。そんな人々だった。

 細かくみても、年齢、性別、外見、特性、それどころか次元すら違う。そんな全てが異なる実に異様で多様な集団だった。


 彼ら彼女らは一斉に空へと叫ぶ。


「「「「『愉快な友人達』ですっ!!!」」」」


「「「「互いを信じる思いを込めて!」」」」


「「「「合唱しますッ!!!!」」」」


        ◆◇◆◇◆


 一人、二人、三人、何人もの指が鍵盤を撫で、ピアノから伴奏が流れ出した。


 朗らかで、柔らかい響きだ。


 穏やかな音のせせらぎが場を満たす。

 その間に、歌う面々は空を見透かす。


 そして伴奏が終わると、全員が同時に息を吸い込み、歌う。


『 "                 " 』


 歌うはただの合唱曲。

 幼い時、教科書に載っていて、そして歌ったであろう合唱曲。


 そこには『誰かが苦しむときは支える』。たったそれだけの希望が記されている。

 お互いに助け合う『優しさ』が伸びやかに描かれている。

 それが悲しみや苦しみを喜びに転換する希望だと。

 この曲が伝えたいのは、周りくどい言葉ではなく、ただひたすらストレートな思いだ。


『そんな希望を信じたい』。


 そんな意図で彼ら彼女らは歌う。


 身近なことだけで良いから、思いやりの心をほんの一滴だけでも持つだけでそれは幸福につながると。


 それは彼ら彼女らが今まで体現してきたものの象徴のようなものであった。


 故に。


 朗らかに、穏やかに。


 柔らかく、そしてなにより優しく。


 全てが違う個性を持った彼らの音色は素直に重なって、草原に満ち満ちていった。


 このとき、彼ら彼女らの歌を聴き、目の当たりにしたものは思っただろう。


『自分も何気ないことから繋がる希望を信じたい』と。




 少なくとも、いま。

 彼ら彼女らの友情は、見たものの心に足跡を確かに残したのだった。

最後まで読んでいただき、感謝です!

一年間ありがとうございました!

来年もよろしくお願いしますね!

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