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幼馴染Vtuber、暴走するってよ  作者: 日陰浴
シンライ復活編

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後日談はビビットに

 あの後、シング&ライドの社長、一 環太に思い切り頭を下げた。

 地面に頭を擦り付ける俺達に対して彼は「全然!むしろこっちが助けられたようなものなんだから」と首を振った。

 そして彼は、俺達を訴える気なんてものはさらさらないし、なんならこれから仲良くして欲しいと言ってきた。

 拉致られた身でそれはお人好しすぎないかと少々思ったのだが、彼が通報する気だったら危なかったのは俺達だし、首の皮が繋がった、助かったとでも思っておくべきだろう。まぁ、別に少年院の覚悟は出来ていたし、どっちでも良かったのだが。

 ああでも、リスナー(焼き討ち組)の皆を悲しませるのは少し嫌かも。

 そう思いながら、俺は環太社長の表情を伺う。

 彼の顔はどんよりとした表情がすっかりと抜けていて、ある程度の余裕を持ち合わせているようだった。

 その証拠••••かは分からないが、彼は廊下でのたうち回っていた啞我凪さんを見て、ひどくドン引き、もとい驚き、腰を抜かしていた。

 暗い表情のときのままだったら、多分反応すらしていないと思うし、これは多分合っていると思う。それぐらいさっきの彼は憔悴しているように俺には見えたのだ。

 まぁ、それはともかくだ。

 俺達は一 環太社長の好意に全力で甘えることにして、社長と別れる。


 そして、足の方向を変えて、てくとくと事務所の奥へと向かうのだった。


        ◆◇◆◇◆


 俺と美納葉は、とある部屋に向かって歩いていた。

 それは配信室。

 ライバーズの事務所に配置された、その名の通り配信をする場所。

 俺と美納葉は道中の廊下で出会った皆山さんにその部屋を使う旨を一言伝えると、その部屋に入る。

 中には最新のパソコンやマイクなど、充実した機材が揃っていた。因みに、俺達ライバーズ2.5期生がデビューを宣言した部屋がここである。

 パソコンの電源をつけて、諸々の操作をする。この事務所ではライバーの配信用、活動用にスマートフォンが支給されているので、今回はこれをウェブカメラ代わりにして配信をしようと思っている。

 俺達は元が個人勢ということもあって、配信方式は二通りある。ウェブカメラを使って撮影し、それをトラッキングするものと、今みたいにウェブカメラの代わりをスマホで行うというものだ。

 なんでこのタイミングで配信を?となるだろう。俺もそう思う。

 流れとしては雨が止んですぐ美納葉が「配信しよーぜ!」と言ってきて、今ここにいる。

 俺もなんでか妙に配信がしたかったからな。断らなかった。

「よし。••••配信できるぞー美納葉ー」

「ん?おーけーおーけー!早速やろう!」

「配信内容決めた?」

「決まってるわけないじゃん!」

「俺一人で準備させられたのに!?」

 そう。俺はさっきまで全部一人で配信準備をさせられたのである。

 その間美納葉は配信室の椅子をぐるぐると回転させていた。それはもう、目にも止まらぬ速度で。

 せめて配信ぐらいは決めてから「配信しよーぜ!」発言して欲しかったぞ!?

 溜息をこぼす俺に美納葉が言う。

「ま、いいじゃん!きっとなんとかなるって!」

「なるかなぁ••••?」

 ぼやきながら俺はヘッドホンを頭につけた。


        ◆◇◆◇◆


     <配信が始まりました>


「ご機嫌いかが皆々様!延暦寺 小町です!」

「どうも。ノープランで配信が始まって絶賛混乱中の本能寺 我炎です」

「ほんとにノープランだから話題もクソもないよ」

「急募 こいつをはっ倒す方法」


『ゲリラ配信ってやつやな』

『なんかノイズが入って配信が終わってぶりか』

『結局何があったんやあの後••••』

『↑延暦寺のことだし、またなんかしでかしてるんだろうなぁ••••』


「確か••••アッ」


『おいどうした!?何があった!?どんな面白いことがあったんだ!?』

『↑最後の一言で全て台無し』

『何ということでしょう!心配そうに駆け寄る真摯な表情から、他人の不幸を楽しむ下衆の顔に!』

『↑どこぞのリフォーム番組のナレーションやめい』

『リフォームできたどころか悪化してるんですがそれは』

『惨劇的ビフォーアフター』


 コメント欄で視聴者が喋る中、俺の脳裏には事実の現状が浮かび上がってくる。


「••••砕けたパソコン••••割れた二枚の窓ガラス••••消えるお年玉とバイト代••••ダンボールの窓から吹き込む夜風••••」


『うわぁ••••』

『うわぁ(歓喜)』

『↑同じ文面なのになんでこんなに後者は悪辣なんだ』

『日本語は複雑怪奇なり』

『最近焼き討ち組が本能寺不憫タイム作ってない?』

『↑分かる。アホほどいじり倒してるよな』

『本能寺のセリフでなんとなく現状が察せられるの酷い』

『要約 延暦寺がパソコンと窓ガラスを粉砕』

『↑理解』

『また本能寺が払うんだろうなぁ••••』

『保証書とかないんか?』


「ホショウショ?••••はっ!?その手があったか!?」

「よかったね!本能寺!」

「他人事にも程があるぞ延暦寺貴様ァッ!?」

「だって私のパソコンじゃないし」

「お前も使うパソコンだろーが馬鹿!?」


『本能寺がごもっともすぎる。』

『因みにどんな感じに粉砕されたん?』


「液晶パネルに拳を貫通されて••••」

「綺麗な風穴空いたよね」


『呑気に配信してる場合かぁ!?』

『いやそうはならんやろ』

『↑なっとるやろがい!』

『逆になんで延暦寺は無事なんや••••(戦慄)』

『↑それな。絶対破片とか刺さると思う』


「知ってるか?こいつの身体は鉄より硬いぜ?」

「女子に対して失礼では?」

「女子というよりキングコングだし••••」

「失敬な!せめてゴジラにしろや!」

「ゴジラとキングコングも大差ねぇだろうが。お前のそのこだわりはなんなんだよ」

「いやノリで」

「ノリで変なこだわりを作るな」


『キングコングよりかは核兵器の方が近いのでは?』

『↑分かる。コングみたく一人の人間に執着するというよりは、無差別に襲ってくる災害みたいな感じだもんな』

『↑コング映画多すぎて分からんのよその例え』

『↑多分初代』

『そういえばちょっと前にコング系出たばっかだよな』

『今2018年だし、つい去年やな。』

『キング・コング•••アメリカ合衆国の映画。1933年3月2日にニューヨークにて公開されて大ヒット。リメイクや亜流作品が多数存在する。初代のストーリーはコングがヒロインに愛情を持つという描写が存在する』

『↑知識人さんくす』

『相変わらずえげつない知識量』


「俺が軽い気持ちで言ったキングコングの解説を始めるなよ••••」

「私達の視聴者、やっぱり謎存在がたまに湧くよね」

「知識人とかね」

「その内異世界人とか現れたりして」

「ありうるのがなぁ••••」

「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、トワイライトのところに来なさい」

「おいやめろ叱られるぞ!?てかVtuberにする気満々じゃねーか」


『謎存在が多いのは否めない』

『視聴者は配信者に似るって言うし••••ね?』

『↑待ってそれ聞いたことない。え、ヤダなんだけど。本能寺と延暦寺に似るの』

『↑さらっと拒否されるの酷い』

『異世界人ねぇ••••?』

『むしろお前らが異世界人側だろ••••』

『↑ここに本能寺と延暦寺が異世界人説が誕生しました』

『↑卒論のテーマ決まったな』


 なんてもん卒論にしてるんだ。

 やめてくれ。俺たちは人間だ。

 美納葉の放った「異世界」と言うワードでコメント欄は勝手に勢いを増していた。

 仕方ない、その話題に乗るとしよう。••••いやまぁ棚ぼた的に生まれた話題の流れに飛び乗っただけなんだけど。


「異世界ねぇ••••?俺達が異世界に行ったらどうなるんだろ?」

「絶対歴代最強の勇者だよね」

「延暦寺、お前は絶対魔王ポジだろ••••」


『本能寺と延暦寺が転移してくる異世界が不憫でならない』

『絶対延暦寺が今代の魔王を倒して次代の魔王になるよ』

『↑その世界ゲームなら絶対ハードモードだろ』

『↑勇者の剣獲得イベで勇者の剣朽ちてそう』


「延暦寺はともかくなんで俺まで!?」


『そりゃあ••••本能寺ですし』

『割とこいつ常識ないよな』

『お似合いのぶっ飛びコンビだよお前らは』


「え••••••••••••やだ•••••••••••••••••••」


『いやマジトーンじゃねーか』

『本当に嫌がってるの面白い』

『まさか自分がまとも枠だとでも思ってんのか?』


 コメント欄では、視聴者が俺のことを散々に言ってくる。ひどい。

 その後もこんなノリが続いていく。

 そんな割と酷い部類の配信だったのだが、俺の内心は妙であった。


 俺はふっと視線を逸らして、自身の心根を探そうと考える。

 あーだめだ。ふわっとしたことしか考えられない。気持ちが気楽で、晴れ模様だからかな。

 ただ、なんかこう。楽しいなぁとそう思ってしまったのだ。

 ただ気楽に皆と関わっているだけの、この空間が。

 これは先輩方に教えてもらったからなのかはよく分からない。

 

 そして、それと同時に「やっぱり懐が深いなぁ」とも思った。勿論。この業界のことだ。

 俺達みたいなのも迎え入れてくれる。そんなこのVtuber業界をもっと知りたいと、そう思った。


 そして俺は、配信画面に視線を戻す。

 画面にはやはり俺達を迎えてくれる世界があって。


 俺はそこに飛び込んだのだった。


        ◆◇◆◇◆


 所、時変わり。


 株式会社シング&ライド、本社。


 二代目社長、一 環太は株主を集めて会議を行なっていた。


 •••••••••••••••••••••。


 俺は株主達に向かって声をかけた。


「俺は、この会社の方針を大きく変えたいと思っています」

 そう言うと、ざわりざわりと話し合う音が聞こえる。

 その声の主はもっぱら古参の株主達だった。

 やっぱり、今回の方針変更は彼らの思いからなるものなのだろう。


「アイドルという方針は、継続いたします。けれど、収益重視という方針は撤回したい」


 俺がそう言うと、一人の株主、能登川さんが立ち上がる。

 彼はひどく焦った様子だった。


「それではこの会社の存続が!?」

「いえ、むしろ今の方針のほうが存続が厳しいでしょう」

「••••そんな••••収益がなければこの業界では生き残ることが厳しく••••」

「現在の方針ではライバーたちの心に大きな負担がかかっています。収益重視ではこれまでのやり方での活動が厳しくなる方もいるんです」

「••••!?••••だから、今の方が存続が難しい、ですか」

「はい」


 能登川さんは一度食い下がろうとしたが、少し考えたのち、ハッとしたような表情をした。

 分かってくれたのだろう。

 俺は彼に向かって再度口を開く。


「貴方が会社の、いえ、父の形見が生き続けること心から願っているのは知っています。••••しかし、だからと言って過度な方針の強制は重荷になってしまいます」

「••••調べたんですか」

「ええ」


 彼ら古参勢の思いというのは、私利私欲というものではない。ただただ、この会社の存続、親父の形見であるこの会社を生かそうというものだ。

 調べると、彼ら古参の株主達のほとんどは、親父と深い友人だったそうだ。


 能登川さんは、会議室のデスクに腕を付き、顔を伏せた。


「だったら分かるでしょう••••。この会社ができたばかりの頃、大引退で経営難に陥った。••••巌さんの忘れ形見は、不安定で儚い。まるっきり彼と同じだ」

「••••」

「だから収益を選んだ。だからアイドルの方針にした。ここを残すために」

「••••••••」

「この気持ちは、私だけじゃない。他の古参の株主達も同じです」

「••••••••••••」

「けれどその思いからしたことが、間違っていたなら、私達はなんのために••••!」

「••••••••••••••••」

「無駄のまま、勝手にことを進めて、その挙げ句、人様に迷惑をかけて••••!」


 苦しそうに、言葉を吐き出す能登川に、俺は近づく。


「大丈夫です。少なくとも、無駄じゃない。••••確かに沢山の人に悲しみを与えたかもしれないですけど、まだ取り返せます。貴方はもう知っているのだから。ここから変えられます」


 『ここから変えられる』。あの時私に言葉を投げかけた二人のライバーのうちの一人、ラリアーの言葉の受け売りだ。

 彼女の全身全霊の言葉がどれほど重いか、やっと気付いた。

 それをそのままぶつけた。


「••••!」


 能登川さんは、俯いたまま言った。


「••••貴方は、本当に巌さんそっくりだよ」


 そうして顔を上げて、くしゃりと微笑んだ。


        ◆◇◆◇◆


 会議室、私達株主と巌さんの息子は対峙していた。

 「ここから変えられます」

 その言葉に、ふと光景がよぎる。


 巌さんには何度も助けられた。

 学生の頃、会社員時代の頃。

 失敗をするたびに、挫けそうになるたびに、彼は親身に、真摯に力を貸してくれた。

 だから彼がいなくなった時、彼の作ったこの居場所を残さなくてはならないと思った。不安だったから。彼を忘れたくなかったから。

 だから私達はそのために、調べて、動いた。

 残したいからと、無理矢理に意見を通して、勝手に暴走した。


 それを、今、目の前に立つ彼の息子は否定した。


 間違っていると、諭した。

 その上で変われると、言った。

 彼の息子は確かに、彼と同じような優しさを備えているように思えた。

 私の心の中に安堵が溢れる。


 もう大丈夫だと。


 彼の息子、いや、次代の社長の一 環太へと。


 任せよう。


 そう思えた。


        ◆◇◆◇◆


 そしてこの日から、シング&ライドは新たなる道を歩むことになる。


        ◆◇◆◇◆


 数日後。


      <配信が始まりました>


「お花畑にいらっしゃい!今日も蜜が欲しいなら、対価が必要そうだよね?お話聞かせてくださいな!ラリアーさんですよ〜!」


「群雀蘭 マイ!今日はコラボでレッスンだ!」


「こんこん〜!トワイライトプロダクション、ライバーズ所属!今日はコラボだわっしょい!そんなぼくの名は神凪 ハマ!」


『おしゃべりしにきた!』

『こんこん〜!』

『この3人のコラボって珍しい』

『二人が2Dなのに一人だけ3Dなの何で!?』

『↑踊る気満々なだけやで』

『↑そんなこと言ってるうちにもう踊ってるぞ』

『さっすが群雀蘭さん、ダンスのキレがバケモン』


「今回は最近の出来事についておしゃべりしていくよ〜!どんどん話していってね〜!勿論!ハマちゃんも!」

「最近の出来事かぁ••••そうだなぁ••••VOMKに向けて準備してるぐらいかも?••••あーでも!」











「本能寺と延暦寺は最近3Dをゲットしたよ!」

最後まで読んでいただき、感謝です!

今回で長かったシンライ崩壊編、シンライ復活編は終了となります!


能登川さん達の過去描写をもっと加えたい所ですが、流石に長過ぎることになってしまうので、これぐらいに縮小しました。

彼らにも秘める思いがあったことを少しでも分かっていただけたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
普通に所属演者が脱退、移籍して経営安定しなくなって終わりじゃろ
2025/06/25 06:11 うーん、メアリースー
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