『疑惑』からの解放
今回の「○○○○○○○○○○○○」の部分はのちに明かす予定なのでご安心ください!
ぼすっ。
気の抜けるような音が部屋に響く。
音の主はベッドの上に置かれたクッションであった。
俺は自室に一人、絶叫をする。
「あ゛〜〜〜〜〜〜〜!?」
俺はクッションに埋まった拳を持ち上げ、頭をがしゃわしゃとこねくり回す。
「な〜にが『任せて!』だ!?何にも作戦が思いつかないじゃねぇか!?」
喚き散らしてもアイデアが湧くわけでもない。虚無である。
こうしてる間にも時間は過ぎ、ラリアーさんは困っているのだ。不甲斐なくて消えたくなる。
いや、一応作戦自体は思いつくのだ。
思いつきはするのだがそれはことごとく法に触れるものばかりなのだ。
「いや〜ままならないねぇ〜」
「そうなんだよ•••••」
俺は隣から聞こえてきた"声"に返答する。
•••••。
「!?」
横に美納葉がいた。
馬鹿な、まるで気付かなかったぞ。
俺は自室を見回す。
扉は勿論、壁にも無理矢理入ったような痕跡はない。
窓は、うん。風でカーテンがたなびいているだけだな。そもそも割ったら音がするだろうし。
俺は美納葉を向き、問い掛ける。
「どうやって入った•••••!?」
美納葉はにやりと笑うと、何ということはないという風に言った。
「窓を割った!」
「馬鹿な!?割れた音は無かったはずだ!それに、破片も落ちてないじゃないか!?」
「割れた音は知らないけど、破片は飛び散ってる時に掴んだよ」
そう言った後、「こんな風に」と言わんばかりに、美納葉は腕を目にも留まらぬ動きで動かし、空中で何かを掴むようなジェスチャーをした。
嘘だろ••••。こいつ、割れた破片を空中で掴み取って破片が飛び散らないようにしたってのか••••!?
というか、こいつ「割れた音は知らん」って言ってたな?俺、その音に気付かなかったのか!?••••そっちの方がショックなんだが。
首を垂れる。
そんな俺に美納葉が言う。
「で、作戦がないんだよね?千隼」
「••••••••ああ、そうだ。このままじゃどうやってもシング&ライドの上には掛け合えないんだ」
美納葉は首を捻る。訳が分からない、というように。
「なんで?」
「••••何でって、そりゃそうだろ。俺達はシング&ライドとは他企業、そもそも中にすら入れて貰えねぇ。けど、ラリアーさん達をなんとかするにはそれを突破しないと」
「突破、ねぇ?」
「突破するには出来る、出来るけれど。それは"やっちゃいけないこと"をしなけりゃあならない」
「で?」
美納葉は淡々と続きを促す。
「••••分かってるのか?美納葉。法を越えなきゃならないんだぞ!」
美納葉は少し黙る。
何も言う事もなく、少しの静寂が通り過ぎる。
そして。
「それで何か変わるの?千隼」
「••••でも」
「千隼。千隼は『けど』『ない』『しかし』ばかりだ。それじゃあ前と何も変わってないよ」
前••••ああ、そうか。あの時のまんまだったのか。俺は。
変わってなかったのか。俺は。
感情を分からない化け物のままだったのか。俺は。
そうなのか?
美納葉は続ける。
「千隼は変わったんでしょ。法?常識?規則?••••出来るでしょ。ラリアーさんの時の感情は偽物?それとも本物?」
そう言うと、再度美納葉は口を噤む。
静寂の中、俺は思考を回す。
偽物?あの感情が?あの熱が?
そうだ。薄っぺらい。
けれど、そんなんじゃない。
人からの感情だ。薄っぺらいのは当たり前だ。
しかし彼女の感情は違う。
彼女のは、本物の感情だ。
薄っぺらい義憤とは違う。
ならば、俺がするべきは後ろ向きになるんじゃなく———————————。
決意を持って、美納葉を向く。
その視線は俺ではない何かを見ているようであった。
そして、先程の言葉は、俺だけでなく、自身にも向けているものに見えた。
今も自分が成長したのか、確信が持てていないのだ。
その確信に対する不安感、疑惑が、俺達を縛る鎖となったんだ。
それは俺も同じで、だからこそ、俺は躊躇した。
他企業だなんだ、法だなんだと逃げ道を作ったんだ。
それを踏まえ、俺は美納葉に言う。
「俺達の感情はニセモンだ。薄っぺらの紙屑だ」
「••••!」
「••••けどな」
偽物と言った時、美納葉は崩れそうな顔をした。
自覚があるのだ。俺もだ。しかし、俺が言いたいのはそこではない。
「それを本物にしたい気持ちは本物だ」
ありがとよ。
考えるきっかけをくれて。
吹っ切れるきっかけをくれて。
「「行こうぜ!全部ぶっ飛ばしてよ!なぁ、相棒!」」
俺達はまだ成長過程だ。感情を多少理解できた?それがなんだ。まだまだ先があるんだよ。
それは、その先のことは、いつか俺が思った『Vtuberは受け皿』ということ、そして、『Vtuberの一つ方向性』だということ、これが教えてくれる気がするのだ。
そしてこの二つは、今俺達が進んだ先にあると思うのだ。
だからこそ。
「作戦、んなもんねぇよ。正面突破だ」
吐き捨てる。
一切合切を踏み倒し、露聊かも寄せ付けず、完膚なきまでに叩き潰す。
そんな意図で、そんな意志で、そんな意思で。
進もう。
ストッパーとなる『疑惑』はもうない。
◆◇◆◇◆
夕方、茜色が血に見える。
私は、足をだらんと布団からフローリングに伸ばし、顔を枕に埋める。
お喋りを興じる口も、何かをする気力も、何もかもが皆無だ。
ぶぶぶぶぶぶっ。
部屋の隅の私は、一つの通話を受け取った。
名義を見ると、友人の悪戯好きだった。
≪もしもし?≫
「••••••はい。こちらラリアー、どうしたの?」
≪いや〜•••••萎んでるとこ悪いんだけど、話があってさ≫
「何?」
≪うわ、すっごい口数減ってる••••まぁいいや。話があるのは私じゃなくてウチの幼馴染だからちょっと待ってね≫
友人は通話を変わる。
聞こえた声は男の人のものだった。確か、本能寺って言ったっけ?
≪変わりました≫
「••••はい」
≪すみません、こんな時に悪いのですが、一つお願いしたい事があるのですが••••≫
「••••何でしょうか」
彼は言った。朗らかに。はっきりと。
≪○○○○○○○○○○○○を取ってきてくれませんか≫
それはそれは、チャレンジを楽しむように。
◆◇◆◇◆
「よし」
俺は通話終了ボタンをタップし、スマートフォンを夕に手渡す。
夕はそれを受け取ると、首を傾げた。
「なんだってあんなもの欲しがるのさ?」
あんなもの。
俺がラリアーさんに頼んだ物のことだろう。
「聞きたい?」
その質問に、隣にいた美納葉が不敵に笑いながら夕に言った。
「うわ!めっちゃ悪巧みしてる顔してるよ••••!楽しそうだから教えろ!」
美納葉の顔を見て夕がにやにやと笑みを浮かべた。
あーあ••••悪戯にワクワクしてる顔だよ••••とんでもないなこいつら。
けれど、こうなったこいつらが一番頼りになるのは確かだ。
俺達はその日に備えて準備を進めるのであった。
最後まで読んでいただき、感謝です!
今回は、『自身の感情が本物なのか』、『自分達は成長出来ているのか』に疑問を持ってしまった千隼と美納葉が、それを振り切るまでの話でした!
次回は、はてさてどうなることやら、乞うご期待です!
さぶいぼキャラの日常を切り取った小説「幼馴染Vtuber、暴走するってよ はいしんがい!」もよろしくお願いします!さぶいぼが投稿できない際はこちらで投稿することになります!
(URL→ https://ncode.syosetu.com/n3371jj/)
また「はいしんがい!」では略称募集中ですので、思いつきましたら「はいしんがい!」の感想などにお願いします!




