赤上友人大・大・大・大・大集合!
時間の流れというのは早いもので、気付くと、時はどんぶらこっこと流れ、金曜日になっていた。
俺達は赤上さんが運転する車に乗せられて何処かに向かっていた。
俺と美納葉が後部座席で、赤上さんとうたてさんが前の座席
本来の予定なら日曜日だった筈なのだが、何やら事情が変わったらしく、今日に日程が繰り上がったのだそうだ。
俺はそれにあたって『日曜日の配信は通常通りに行い、金曜日の配信は中止する』という旨のツイートを行う。
「ごめんな〜予定変わっちまって〜」
俺達の前の席に座っている赤上さんが申し訳無さそうな顔をするのが、ルームミラーに映る。
「そんな!全然大丈夫ですよ」
本音を言えば、少々ツイートがめんどくさいなぁとか思ったりしているのだが、
「そうか?ありがとな!」
•••••屈託のない笑みを浮かべる赤上さんを見ると、何も言えなくなるんだよなぁ。
これが人徳ってやつなのだろうか?
「あ、そうだ!エアコンが効くまで窓開けときな?暑いだろ?」
彼は思いだしたかの様に言う。••••そういえばエアコンの効きが少し悪いかな?
「もう開けてる」
「お前に言ってねぇよ!」
見ると、うたてさんは一足早く、窓から流れる風の涼しさを享受していた。
「あはは」
俺が車の窓を開閉するスイッチを押し込むと、美納葉と俺の窓が開く。
すると途端に風が傾れ込んでくる。
耳の窪みに風が当たってぱたぱたと音を立てるのを聞きながら、俺は言った。
「そういえば赤上さん、車持ってたんですね」
「まぁね。フィールドワークの時何かと楽だしね。めちゃくちゃ頑張ってお金貯めた」
「新車ですか?」
「まさか!中古車中古車!大学生が買えるわけないって」
ぶんぶんと片手を振る赤上さん。
「新車だったら私、乗らなかった」
「あーうたて、新車の匂い苦手だもんな」
「うん。酔う」
「まぁ確かに新車の匂いは独特ですけど••••」
若干濁す様に会話に参加していると、美納葉が唐突に会話に割り込んできた。
「シーシャの匂い!?」
「水タバコじゃねーよ美納葉!」
どんな聞き間違えだよ。俺は横に座る美納葉を引っ叩こうとするが、重心移動で避けられる。くそう。
「いーけないんだーいけないんだー!DVなんていけないんだー!せーんせーにいってやろー!」
美納葉はメトロノームみたいに身体を揺らす。非常にうざったい。
「小学生のガキかお前は••••いや小学生ならDVの意味分からないか」
「わかるもん!!!!!」
「そんな何処ぞのジブリアニメキャラみたいに言うなよ••••。••••まぁ、一応聞こう。DVの意味は?」
「ドラゴニックバイオレンス」
「竜の暴力ってなんだよ」
そんなんに暴力振るわれたら消し炭になるわ。••••いや、美納葉が竜みたいなものだから案外大丈夫か?
そんな風に思考していると、突然に前の席にいた二人が笑い出した。
「はははははははっ!!!!!」
「••••••••••っ•••••••ふふふふ!」
一体どうした?とばかりに俺が怪訝そうな表示を浮かべていると、
「いやね、二人とも、素で配信のノリなんだと思ってね」
「素?」
「うん、素。大体の人は、ある程度キャラ作りするし」
そんなものなのだろうか。俺の知っている人物の中で、キャラ作りをしている人って少ないような••••。••••いやでも確か夕もキャラ作りしてたな。
赤上さんが鏡越しにこっちに向かって言う。
「まぁ、なんだ。裏表がない事はいい事だぜ」
「は、はい?」
どういう返答をすればいいのか分からず、ぎごちなく頷く俺。
そして赤上さんは鷹揚と頷く。
そしてまた口を開いた。
その声音はさっきとは少々違い、錆びついたようになっていた。
「あとな、このタイミングかは分からんが」
彼は若干冷や汗を流しながら、ちらり。美納葉の方を見やる。
「延暦寺ちゃんの拘束••••••••••••いる?」
いる(断固たる意志)。
◆◇◆◇◆
暫くして、車が停車した。
車の扉を開け閉めすると、バタン!と鈍い音が鳴った。
「着いたぞー!」
赤上さんは運転席から飛び出す様に降りて、ぐぐぐっ、と伸びをする。
「運転お疲れ様です」
「ひゃっはー!じゆーだー!」
俺が赤上さんにお辞儀をしている横、美納葉がロープで簀巻きになっている状態から解放され、走り回っている。その開放感の矛先が俺にならない事を願うばかりだ。
「ここって?」
「ちょっとしたグラウンド!レンタルしてきた!」
赤上さんの言う通り、目の前には、砂浜の様な色をした土が敷き詰められたグラウンドがあった。
「でも一体何で?」
そう問うと、赤上さんは側頭部の髪を掻き、言う。
「いやぁ〜まぁ、普段なら俺の実家でするんだけど、今回は結構な人数が来るからな」
「へぇ〜•••••••」
相槌を打っていると、ざわざわと割と大きめの声が響いてきた。
一体何事かと音の方向を向くと——、
「おっ!来たか!」
「透〜遅いぞ〜!」
「久しぶりに参加できたぜ!おっ彼女さんも久しぶり!」
「と、透くん!こっちもう準備、は、始めてるよ〜!」
数十人、いや数百人はいそうなレベルの大人数が赤上さんの方に向かって声を張り上げたり、手を振ったりしていた。
よくよく見ると、ナナヤさんもその人の輪の中に混ざっていた。という事は、ここにいる人全員、赤上さんの友人なのだろう。•••••それにしてもおかしな量だな。流石人望の塊。
赤上さんは彼ら彼女らに軽く腕を振ると、口の周りを手で作ったメガホンで覆い、叫ぶ。
「すまん!!ちょっと遅くなった〜!!!!!」
若干冷やかしの様な声が返ってきた。
「重役出勤か〜?」
「彼女といちゃついてたのか〜?」
赤上さんは笑いながら叫び返す。
「俺に彼女はいねぇよ!?」
「「「「「「「「「はぁ••••••」」」」」」」」」
その台詞を聞くや、全員がため息を吐いた。
何だろう。あそこの人達の気持ちが一瞬分かったかもしれない。
その後何度か応酬が繰り返された後、赤上さんは俺達の方を振り返り、言う。
「さ、叫んでても平行線でなんだし、行こうか?」
「あっ、はい!••••••あの?」
「ん?」
「結局これって何なんですか?運動会でもするんですか?」
赤上さんはそういえば、といった風な顔をする。
「あー、まだ言ってなかったな。••••ちょっと前、週一で集まって何やかんやしてる的な事言ってたろ?」
「はい」
「それの拡大版、って感じだ!」
こうして、何かとドタバタになりそうな予感と共に事が幕を開けたのだった。
◆◇◆◇◆
本能寺と延暦寺を友人達に任せ、赤上は「トイレに行く」と言って、場を離れた。
車の近くまで行くと、彼は徐にスマートフォンを取り出し、メッセージアプリを起動する。
「『あとは手筈通り!よろしく頼むぜ!』っと!」
そして、ととととと、と軽い音を鳴らしながら液晶画面をタップして文体を作り、トークルームに送る。
たちまちに何百人から既読がつき、「おう!」だの「やるぞー!」だのやる気に満ち溢れた返信が返ってくる。
それを見ながら赤上は頷き、どことなく真剣な表情をした。
「俺のできる全力かな、これが。•••••はてさてどうなるかは神様次第ってことで」
彼は気合いを入れるかの様に頬を叩き、本能寺と延暦寺の方へ歩き出した。
少し宣伝です!
活動報告にも書いたのですが、さぶいぼのハッシュタグタグができました!
もし、今後Twitterでさぶいぼのツイートをする場合は#さぶいぼ_物語とつけて投稿してもらえるとありがたいです!
最後まで読んでいただき、感謝です!




