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幼馴染Vtuber、暴走するってよ  作者: 日陰浴
激唱編

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うたてブートキャンプ

<私の家に来て。曲作りを教えてあげる。>

 そんな羅列が並んでいるのは、俺のSNSの DM欄だ。

 相手は最古参Vtuberのうたて カエルである。

 俺はそれを美納葉と覗き込んでいる。

 うーむ、この文章にどう返したもんか。

 活動してる長さでは先輩に当たるし、失礼にあたらないようにかつ穏便に申し出を断るには••••。

 そんな風に思考を回していると、美納葉がウキウキした様子で叫ぶ。

「よし!行こう!」

「馬鹿野郎炎上するわ!?」

「私は野郎じゃないもん!」

「着眼点そこ?」 

 せめて『馬鹿』の部分に反応して欲しかった。

「兎に角だ。うたてさんの申し出は断るぞ」

「えー!なんで!?うたてさんに曲の作り方を教えて貰ったらいいじゃん!行き詰まってたんでしょ?」

「••••確かに行き詰まってはいたけどさぁ••••••••••」

「なら渡りに船じゃん!」

「いやでも炎上したら•••••」

「炎上ごときで私の心が挫けると思ってるの?」

「別にお前(化け物)の心は心配してない」

「うっそだ〜!私のことを心配してくれてるんだよね?」

 美納葉がごちゃごちゃ言っているが、俺が美納葉のことを心配していないのは正真正銘の事実である。

 何なら炎上自体には全くと言っていいほど恐怖心は無い。

 俺が危惧してるのは別の部分だ。

 俺と美納葉は曲がりなりにも企業Vtuberとして活動している。しかもそこそこ大きめの企業であるトワイライトプロダクションだ。

 そんな所に属している訳だから、迂闊な行動で炎上でもしたら、運営や他のライバー、いつも推してくれてる焼き討ち組にも迷惑をかける羽目になる。それは何としても避けたいものだ。

 あとは••••まぁ、ただの保身だ。

 万が一、やらかして運営から自粛を命じられたとき、十中八九、美納葉は暴れ回るだろう。その時の処理が面倒くさいだけだ。


「ねーねーねーねーねー!心配してくれてるんだよね!?ね!?ね!?ね!?」

「あー!もーうるせぇ!!!!!まだ言ってんのか!?」

「だってさ〜!」

「だってもヘチマもねぇよ!メンタルがゴリラみたいにクソ雑魚なら兎も角!剛毛••••いやアスファルトで舗装してる心臓を持ったバケモンを誰が心配するか!?」

「ひっどいなぁ〜!バケモンだって〜!あー傷付いたー!これは結婚して責任とって貰わないとなぁ〜!」

「結婚なんて絶対にごめんだね!というか、会話レベルが小学校低学年の男子か!それにそもそも結婚出来る年齢じゃねーだろーが!」

「知ってる?女子は16歳で結婚出来るんだよ?」

「男は18歳からだよ!結婚出来てたまるか!何なの!?性転換でもさせる気なの!?」

「千隼、今すぐタイに行こうか••••!」

「やめろ!?それに同性になったとしても結婚は出来ないからな!?」

 男を捨ててまでこいつと結婚する義理はない。というかそもそも、こいつとの結婚なぞこっちから願い下げである。

「えー!結婚しよーよー!」

「死んでもやだよ!」

「つまり死後なら結婚できる••••!」

「ネクロマンサーでもなる気か••••!?やめてくれよ本当に••••!?」

 頼むから死後ぐらいは安寧をくれ。

「そもそも何で俺と結婚したがるんだ••••」

「え、私の見てきた人間の中で一番強いから」

「もうお前ライオンの群れ(プライド)行けよ」

「え、ライオンなんてただの猫っころじゃん」

 猫っころって表現はこの世に存在しねぇよ。あとリズム感終わってるし。というツッコミは飲み込んだ。

「••••どんな結論でそうなった」

「ちょっと前に動物園で威嚇したらびびって逃げたから」

「おい百獣の王」

 頼むから人間如きの威嚇でびびらないでくれ。いくら動物園といえ、牙抜かれ過ぎだろ。

 あと美納葉はナチュラルに威嚇をするな。

「ねーねーねーねーねーねーねー!コラボしよーよー!」

「ここに来て急に元の話題に戻ったな!?」

 忘れてても良かったのに。

 というかこいつと会話をしていると話題が七転び八起きするな••••いや"八起き"はおかしいか。転がってばかりだし。••••それじゃあ七転び八転び••••••••••?語感悪ッ!?

「千隼は拒否ってばかりけど、うたてさんの何が駄目なの?おーしーえーてーよー!あ!『炎上するから』はなしで!それでも炎上を理由にするなら根拠も挙げてね?」

 美納葉が俺の周りを羽虫のようにぴょこぴょこ飛び回る。非常に鬱陶しい。出来るものなら叩き落としたい。問題はその羽虫がジェット戦闘機レベルの火力を誇るという事だ。

 俺は仕方なし、と溜息をこぼす。

「はぁ、理由は『炎上するから』。根拠は••••そうだなぁ••••炎上したら沢山の人に迷惑をかけるだろ?というかそもそも、男女が絡むと炎上するこの業界、『家に来て』とかいう見え見えの地雷を踏む馬鹿がいると思うか?」

「結構いると思うよ?」

「地雷ごと粉砕するやつがなんか言ってる」

「うたてさん、他の人も教えたことあるらしいよ?」

「マジで?」

 それは初耳だ。

 美納葉はうんと頷きながら言う。

「マジマジ大マジ!マジ過ぎてアルマジロ出来るレベル」

「アルマジロはちょっと分からないけど••••」

 ここに来て、炎上を回避する可能性が出てきた。

 うたてさんの『ウチ来て。曲作り教える』発言が以前にも何度も行われて、かつ、その事が業界で広く知られているなら、無傷で済むかも知れない。

 俺は机の上にあるPCを起動して、うたてさんの行動とその反応について、慣れた手つきで調べ始める。

 自分で「慣れた手つき」とか言うのもなんだが、Vtuberになってからというもの、多方面の反応やら何やらを調べることが多々あった。そのお陰もあって、ネットサーフィンならもうお手のものなのだ。

        ◆◇◆◇◆

 数分後。

「うたてさんの曲作り教室に参加した男性Vtuber、全員もれなく炎上してんじゃねーか!?」

 俺はキーボードから手を離し、宙に向かって咆哮した。

 調べたことによると、うたてさんに誘われてうたてさんの家で泊り込みで歌や曲の特訓をすることを"うたてブートキャンプ"と言うそうだ。

 今までに多くのVtuberが参加していて、その中には、トワイライトプロダクション・ライバーズ一期生であり、ライバーズが生まれるきっかけとなった人物の一人であるかぐやま旭先輩の名前もあった。

 その他にも、Vtuber企業の中のシェア一位を独走する"えととき"のライバーの名前もあった。

「へぇ〜」

「いや『へぇ〜』じゃねーよ!?」

 前例があって、それに先輩方が参加していた、という内容だけならまだいいのだ。

 けれど、その参加した中の男性Vtuberは一部を除いて全員炎上している。

 これじゃあ事務所と視聴者達の心労ががが••••。

「兎に角!参加はしないからな!」

「でも男性Vtuberの先輩も参加してたよ!?」

「多分きっとその人達は怖いもの知らずなやばい人なんだ!」

「熱い風評被害だぁ」

 互いにわーぎゃーわーぎゃーと騒いでいると、


 ピコン。


 スマートフォンの通知音が鳴った。

 どうやらSNSの通知のようだ。

 俺は嫌な予感を感じつつもアプリを起動すると、案の定うたてさんからのDMだった。

 俺は恐る恐るといった様子で画面を見る。

 そこには

<拒否権はないからね。ぜったい来てね。>

 の文字があった。


 俺は「やったやったやったやった!」と、どこぞのはっぱを腰に巻いた人みたいに叫ぶ美納葉を横目に、天を仰ぎ、呟いた。


「先輩方••••怖いもの知らずのやばい人とか言って、本当にすみません••••」


 その声は部屋の片隅に追いやられたのだった。

        ◆◇◆◇◆

 あれから数日が過ぎた。

 高校は夏季休暇に入り、俺達はうたてさんの元へ向かっていた。

 うたてさんの家がある街は、かなり遠くににあるらしく、俺の街から行くのに電車だけで五時間程掛かった。その後にバスや徒歩も待ち構えているので非常に重労働である。

 茹だるような暑さの中、宿泊用の大荷物を抱えて歩く。

 やがて、うたてさんが指定した場所に到着した。

 その場には、

 汗がダラダラ溢れるのをタオルで拭いながら、ガードレールにもたれ掛かっている女性が立っていた。

 その人は俺と美納葉を見るや近づいて来た。

「もしかして、君たち?」

「あ、はいそうです」

「はい!」

「よかった。DMで到着したって連絡は読んだんだけど、ちゃんと着けてるか心配で」

 うたてさんの第一印象は、高校生、いや中学と見間違う程に小柄な方という感じだった。一応、彼女のことを事前に調べたのだが、大量の楽器と声を操る音楽のプロフェッショナルということが分かった。

 ••••一体どうやって馬鹿デカイ楽器を抱えてるんだろうか。

 後もう一つ思ったことが、声と表情に抑揚がない。ひたすらに間延びした声というか棒読みというか。••••よくあんなにいろんな声が出せたな。ギャップが凄すぎる。

「ごめんね••••?私、音楽のことになるとちょっと歯止めが効かなくなるところあるからさ」

「ちょっと••••?????」

 果たして家まで呼ぶのは『ちょっと』で済むのだろうか?

「その分、ぜったい後悔はさせないから」

「よろしくお願いします!うたてさん!」

「あーうん。よろしく」

「すみません。こいつが窓とか扉とか破壊しないよう努力しますので••••。あ、勿論楽器にも指一本触れさせませんので」

「え••••?延暦寺ちゃんってそんなに力あるの?」

「まぁ、はい」

「••••なんの楽器持たせようかな••••力持ちなら筋トレとかも要らないだろうし••••!」

 あ、あれ?うたてさんの表情が変な感じに••••。

 なんか生気?•••••いやどっちかというと狂気?が感じられる表情である。

 そんな俺の内面はさておき、うたてさんは言う。

「とりあえず。ウチ行こっか」

「あ、はい」

「は〜い!!!!!」

 かくして、うたてブートキャンプと呼ばれる、音楽技術強化の場が開かれるのであった。

今回だけを見るとうたてはただのやべー奴ですが、(音楽さえ絡まなければ)美少女ですから!(必死の弁明)

因みにうたては作者がさぶいぼ内でトップクラスに気に入ってるキャラクターです。

無口無表情系ショートヘアキャラっていいですよね••••!


次回はスレッド回ではなく通常回の予定です!

最後まで読んでいただき、感謝です!

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