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幼馴染Vtuber、暴走するってよ  作者: 日陰浴
激唱編

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52/159

♪かえるのこえがきこえてくるよ♪

 影縫くんから、曲作りのいろはについて纏められた本を貰ってから、数週間程過ぎた。

 俺はやっとそれに手を付け、読み進める。

 因みに、何故借りてから数週間も期間が空いたのかは学生ならではの理由がある。

 それは誰しもが通る道であり、大きな壁だろう。

 ••••いや、そこまで派手な表現をするまでのものではないか。

 まぁとどのつまり、夏休み前の期末考査ってだけの話だ。

 俺にとって、期末考査の点数はかなり重要だ。これで悪い点を取ってしまったら、夏休み中に補習が決定してしまう。「それぐらい別に大したことないのでは」と思うかもしれないが、大変なのはそこではない。

 補習には問題はないのだ。補習には。

 補習で家を空けようものなら、美納葉は侵入し放題である。何をされるか分かったものじゃない。

 中学時代、休日にも関わらず、「お前の幼馴染、なんとかしてくれない?」と校長に呼び出されて、家を空けた時があった。その後に部屋に戻ったら見事に全壊してたよ。あの時は本当に大変だったなぁ••••。真冬なのに数ヶ月は隙間風に悩まされた。

 そんな前科があるもので、俺は安易に家を空けるような行動、ましてや補習みたいな数日間の拘束なんかを、たとえ甘んじてだったとしても受け入れる訳にはいかないのである。


 さて、そんなこんなで必死に期末考査を乗り越えた俺だったが、どうしたものか、これまたしっちゃかめっちゃかな状況のようだ。

 俺が参加する事になったVOMKとやらにオリジナル楽曲が必要らしいのだ。

 いやこの言い方なら語弊があるな。VOMK自体は別にオリジナル楽曲じゃなくてもいいのだが、我らが理不尽(美納葉)のご命令なのだ。

 俺は開きっぱなしの本を閉じると、髪をぐしゃぐしゃと掻き回す。

「足りないものだらけすぎるな••••特に機材」

 作曲するにも、録音するにも、何もかもが足りなさ過ぎる。作曲はアプリでやるとして、シンセサイザーぐらいは持っていたほうがいいだろうか?

 相場を見てみるが、数千円のものもあればウン十万もするものもあり、ピンキリだ。

 影縫くんに借りるか?••••いや、流石に彼に頼り過ぎはいけないだろ。自分でやらなくちゃ。それに彼に無茶をさせてどうする。

 ワンチャン、歌ってみたなら何とかなると思うのだ。最低限の録音機材もあるし、編集ソフトも買ってあるから。

「うーん••••どうしたもんか••••」

 プロに任せようにもお金がないし、自分で作ろうにも機材も技術も足りない。かといって、歌ってみたに逃げようとしたら、美納葉に襲撃される。

  ••••いや、よく考えたらこれ、お金で全部解決しないか?

 とはいっても、俺達の給料(お小遣い)で買える範囲は限られてる。

 バイトという手段が頭をよぎったが、そういえばうちの高校はそもそもバイト禁止だったのを思い出して頭を抱える。

 まずい、八方塞がりが八面六臂の活躍をしている。

「もういっそ闇金にでも手を出すか••••?」

 俺が机に突っ伏したその時だった。

 俺の部屋の扉がベキッと小気味いい音を立てて真っ二つに裂けた。

 美納葉だ。

「配信だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ••••そういえば、今日は配信の日だった。考査前期間中、配信はお休みしてたから忘れてたわ。

 けど、今はそれよりも言いたい事がある。




「••••ドア••••••••••••修繕費••••」


 俺にお金が必要な理由のもう一つを知ってしまった気がした。

        ◆◇◆◇◆

     <配信が始まりました>


「ご機嫌いかが皆々様!延暦寺 小町です!」

「どうも、VOMKに参加する事が決定したはいいものの、オリジナル楽曲を作ることに苦労してる本能寺 我炎です」


『久しぶりの配信だあ!』

『↑ゆーて一週間の休みやぞ』

『↑それでも推しに会えないのはつれぇんだよ!••••って、ん?』

『おいちょっと待て』

『さらっと爆弾発言しやがったぞこいつw』

『☆オリ曲決定☆』

『そういうのは重大発表と銘打って言うものだろw』

『※まだ冒頭です』

『情緒のかけらもねぇw』


「情緒を俺に求められても••••というか延暦寺に言ってくれよ。こいつが勝手に決めたんだから••••」

「不服そうだな本能寺!そんな貴方に!」

「お、なんかあるのか妙案が!?」

「そう!そんな貴方に"おはしもて"」

「避難訓練じゃねぇんだぞこの野郎」


『まーた延暦寺が勝手に決めてるよ••••』

『はいはい、いつものいつもの』

『もっと衝撃的なのをくれよ』

『↑視聴者が慣れ過ぎて新たな刺激を求めてるの笑う』

『唐突な"おはしもて"で草』

『"押さない、走らない、喋らない、戻らない、低学年を優先"、だっけ?』


「違うよ!作曲の"おはしもて"だよ!」

「ほう••••言ってみろ」

「なんか冷たくない!?」

(はな)から期待してないからな」

「ひどい!?••••けどこれを言ったら本能寺は絶対納得してくれるよ!」

「え〜••••」

「信じてないね!?••••じゃあ行くよ!"オラァ!泣き叫べェ!、ハハハハハ!なんて脆いんだ!、死ねぃ!、もっとだ!もっと俺を楽しませろ!、低レベルの屑が俺に意見するなァ!"」

「漫画の敵キャラの台詞じゃねーかよ」

「ねーねー本能寺?期待して損した?」

「期待しなくてよかった」

「ちぇっ」


『草』

『オラァwwwwwこれ作曲要素どこだよwww』

『こ れ は ひ ど い』

『悪役テンプレートってこれもう分かんねぇな』

『脈絡is何処?』

『↑脈絡は死んだ』


「そんな『神は死んだ』みたいに言われましても••••」

「脈絡はいい奴だったのに!」

「お前が殺したんよなぁ••••」


『Gott ist tot』

『おまいう』

『おまいう』

『バガモ○はいい奴だったのに!』

『↑エグゼ○ドなっつ』

『もう一年前か』


「あーもうほんとにどうしよう。マジで。なーなー延暦寺、もうお前への怨念を込めた曲でいい?それならいくらでも作れるわ」

「いいよ!」

「いいのかよ!?」

「怨念も愛情表現だから!」

「••••急募、こいつが嫌がる曲の作り方」


『怨念込めんなw』

『何故だろう、本能寺のガワからドス黒いオーラが見える••••』

『怨念なら何十曲も作れそう』

『↑呪いのミュージックテープ作るのはやめて』

『残念、延暦寺は嫌がらなかった』

『延暦寺が嫌がる曲なんて作れる訳ないだろ』

『延暦寺をそもそも人と同じベクトルで考えるな』

『↑つまり、延暦寺は自然現象••••••••!?』


「大体合ってる。コイツの扱いは地震とかハリケーンとかそんなモンだと思う」

「酷い!ただのプレートのエクササイズと熱帯低気圧と一緒にしないでよ!私は本能寺がいることで動くんだよ!」

「それこそ心のないロボットじゃねーか」

「コレガ••••ココロ••••!?」

「わーシンギュラリティだ。乗っ取られる前にスクラップにするんだ」


『延暦寺が自然現象扱いなの草』

『地震のことプレートのエクササイズっていうのやめよ?普通に大災害だからね?』

『コレガココロwwwww』

『力の入ってない「わー」草』

『雑ぅ』

『本能寺の対応よw冷静過ぎるw』

『↑本能寺なら「やったぜ!厄介者を体良く始末できる!」ぐらいに考えてそう』


「俺への理解度高いな」

「私の方が本能寺のこと知ってるもん!」

「••••聞きたくないけど、例えば?」

「本能寺がお風呂に入る時どこから洗うかとか?」

「何で知ってんの!?ストーカー!?」

「ちっちゃい頃一緒にお風呂に入った時に見た!」

「マジでいつの時代!?」


『一緒にお風呂!?まずいですよ!』

『何がまずい、言ってみな?言っとくが赤ん坊の身体やぞ』

『本能寺と延暦寺の裸!?(ガタッ)』

『↑赤ん坊の裸に欲情すんな』

『マジでやばいのが来た、と思ったらただの幼馴染ストーリーで草』

『本能寺の記憶がない頃って何歳だよ••••!?』

『物心がつくのが2〜4歳ぐらいだから、少なくともそれ以下』

『延暦寺が怖い』


「うん俺も怖い。••••と話はさておき、最近の出来事でも話すか」

「唐突だね?」

「早くあの恐怖体験を忘れたいからな」

「どんな恐怖体験なの?聞きたい!」

「••••無自覚なのが怖えよ•••••••••」


『本能寺はん本能寺はん。あんさんも脈絡忘れてますよ』

『この人の配信よく脈絡消えるよな』

『脈絡「わすれないで」』

『最近の出来事かぁ••••また壮絶なんだろうなぁ••••(遠い目)』


「えーとな、数週間前のことだっけな?影縫くんの家に行ったんよ」

「あ〜行ったねぇ!」

「いやまぁ、延暦寺に無理矢理引き摺られていっただけなんだけど」

「だってあの時の本能寺、テコでも動きそうになかったじゃん」

「どう見てもそんな状態じゃなかったと思うんだけど!?」

「話が平行線だっただけじゃん!」

「それはテコでも動かないとは違くない!?」


『影縫くんの家に!?羨ましい••••!』

『同期てぇてぇですか!?』

『そーいえばコイツらライバーズだったわ』

『引き摺られて、ですか』

『知ってた』

『んーなんかワイらを置いてけぼりに話が進んでない?』

『おーい!戻ってこーい!』


「••••おっと、ごめん。状況説明出来てないな。まぁ要するに、延暦寺が俺の部屋に侵入してきて、またいつもの思い付きで連れ去られたんよ、影縫くんのところまで。••••ほんっと、いい加減にして欲しい••••そして欲を抑制することを学んで欲しい••••」

「抑制して何かいい事があるの?思いついたら即行動でしょ!そうしないと自分を殺されるんだよ?自殺だよ自殺!そんなの生き方無駄だから!」

「流石に限度があると思うけどね!?お陰で俺の部屋の窓が段ボールになったんだぞ!?」


『お、おう••••どーゆー状況やねん••••?』

『いつもの』

『︎欲を抑制する事は自殺と一緒ねぇ••••まぁ真理っちゃあ真理か』

『窓が段ボール?????』

『もしかして、延暦寺って窓ガラスに体当たりして本能寺を連れ出したんじゃ••••?』

『えぇ••••(引)』


「影縫くんの爪を煎じて飲んで欲しいくらいだ••••ほんと。どうやったらあんな聖人が生まれるの?」

「さぁ?」

「ちょっとは悪びれるかなんかしてくれよ••••他県に放置された身にもなってくれ••••」


『影縫は聖人••••?????』

『↑事実やで、"大引退"前では沢山の配信仲間を助けたりしてた兄貴分やったんや』

『↑ショタなのに?』

影縫ミナト『俺はショタじゃないよ!?』

『影縫くんだ!?』

『影縫くんもようみとる』

『というか本能寺?今他県って言った?』

『他県まで引き摺られていったのか••••(戦慄)』

『他県までダッシュで行く女、延暦寺』


「そうなんだよ!延暦寺が勝手に連れられて、帰りはその場に放置だぜ?ひどくない?しかも後から調べたら二つぐらい県が離れてたし」

 その時は、日本はもう一度関所を作って、美納葉だけを取り締まったらいいと切に思った。


影縫 ミナト『悲しい••••事件だったね••••』

『あまりにも現実と乖離し過ぎて頭おかしくなるわ』


 現実と乖離って言われましても••••これ事実なんだけどなぁ••••。

        ◆◇◆◇◆

 それから配信も終盤に入った頃、デスクの隅に置いてあった俺のスマートフォンが振動した。


「ん?なんか通知来てる?」


『通知?』

『誰?』

『トワイライトからじゃねーの?』


「いや、トワイライトは有り得ないと思う。イベントはなかった筈だからさ」


 スマートフォンを起動して、通知欄をスワイプする。••••どうやら通知の主はSNSからの様だ。


「SNSだねぇ〜!何だろうね?」

「配信中にごめんだけど、ちょっとこれ読んでもいい?」


『ええで』

『どうせもうすぐ配信は終わりだしな』


 リスナーに感謝の言葉を軽く述べてから俺はアプリを開いた。

 ••••ふむ、どうやらDMが来ていたらしい。


「DMみたいだね••••誰だろう?」

「トワイライトのメンバーと以前コラボした人ぐらいしかフォローしてないもんね?案件とか?」

「いや〜流石にそんなに唐突ではないだろ?」

 そもそも俺達に案件を持ち込む会社がいる訳ないだろう。

 もしあったとしたら、そこはとんでもなくトチ狂った会社なのだろうな。

 俺は美納葉とDMの主の名前を覗き込んだ。


 そして、二人して叫んだ。


「「うたて カエルぅぅぅぅぅぅッッッ!?!?」」


 一方()は、驚愕の感情から。もう一方(美納葉)は、好奇心の感情からであった。

最後まで読んでいただき、感謝です!

少し宣伝をば!

私、Twitter(現X)にて日常風景やらさぶいぼの裏話やらをぽつりぽつりとこぼしております。

もし「見てやってもいいかな?」といった風に軽い気持ちで寄っていただけると幸いです!

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