すまねぇ、狂人語はさっぱりなんだ。
新章「AIKOKU炎上編」始まりです!
青い空。広がる白雲。爽やかな彩りを添える海———————、そして、
パァン!
香ばしく薫る硝煙。
「来 な き ゃ よ か っ た」
◆◇◆◇◆
今回コラボした人の内の、誰かとグアムに行くことになった。
何言ってるか分からねぇと思うが、俺も分からねぇ。
けれど、とんでもないことにに巻き込まれてしまったということだけは分かる。
出発は三日後、随分とせっかちな予定だ。ま、どこぞのラピュ○王大佐の「三分間待ってやる」よりは長いからマシだろう。というか、よく飛行機の席取れたな。
因みに、誰と行くかはまだ知らない。だが、行くとしてもアノトガスターさんやアトレイアさん辺りだろう。AIKOKU組は活動があるし、そもそも企業勢だから身動きが取りにくいはずだから。
まぁ、修学旅行の予行練習だと思っておこう。
そんな風に考えながらも、俺はスーツケースに荷物を詰め込むのだった。
◆◇◆◇◆
翌日。学校からの下校中、電車の中でそれは起こった。
「「あっ」」
影縫くんとばったりと遭遇したのだ。
「珍しいね?この電車に乗るなんて。家の方向違うでしょ?」
「まぁ、ちょっとね。レコーディングに」
「レコーディング?こんな夕方から?」
「そう。昼はバイト入ってたからね。夜の内にしとかないとね」
Vtuberとカテゴライズされるといっても、ただの動画配信者の一角だ。動画や投げ銭機能で得られる収入なんてたかが知れている。ましてや影縫くんみたいな、つい最近まで嫌われ者だったVtuberにとっては雀の涙程度だろう。
「影縫くんも色々大変だな」
「そっちの方も色々大変そうだけどね」
「まぁ、お互い様ってことで」
二人して乾いた笑い声を上げる。
「そういえば美納葉ちゃんは一緒じゃないの?」
「今日は旅行の準備で休み」
「よかったね・・・・ほんと」
「・・・・いや、全然良くない。俺がいない間に何をやらかすか分からないし」
「確かに。例えばだけど、指名手配犯とか探し始めたら困るもんね」
「それは幼稚園の頃にもうやった」
「え?」
影縫がこほん、と咳払いをする。そして少しの間が空いたのち、再度口を開いた。
「そうだ千隼くん。ちょっと話題変わるんだけどさ」
「何ですか?」
「AIKOKUの本社、炎上したらしいねー」
「いつも炎上してません?あそこ」
あの人達が思想の強さで炎上するなんて、別にいつものことだろう。
俺がそう伝えると、影縫くんは違うと言わんばかりに、手をひらひらと宙に踊らせる。
「あら?知らなかった感じ?うーん、そうだなぁ・・・・まぁ簡単に言うと物理的に炎上したんだよ」
へ?物理的に?ネット的な炎上じゃなくて?
混乱する俺に対し、影縫くんが続ける。
「AIKOKUって特殊でね?日本支部、ドイツ支部、ロシア支部って事務所が本社の中に分けられて配置されてるらしいんだ。で、ライバーはそれぞれの事務所の配信部屋で配信をするんだって」
「え?機材を借りて自宅で配信って感じじゃないの?」
「そうなんだよね」
「ウチにも配信部屋はあったけど、使うのはトワイライトのチャンネルで配信するときだよね?」
「そう。でもAIKOKU組はそこで全部するんだよ。で、その配信部屋やら何やらが全部入ってる本社が燃えた」
「うわぁ・・・・大分やばくない?」
「だね」
そこからは「これからどうするんだろうな」「どうするんだろうね?」と生産性の全くない会話を繰り返していた。
やがて、
ぷしゅー。
そんな気の抜けた音と共に電車の扉がスライドする。
「じゃ。またねー」
「また。レコーディング頑張れー」
「おう」
影縫くんは小さく手を振ると、扉を跨いだ。
◆◇◆◇◆
そして時が過ぎ、旅行当日となった。
学校に連絡は事前にしてあるし、衣服類もしっかり纏めた。
勿論、猿轡とロープ類は大量にストックを用意した。模造刀は流石に凶器と判断されかねないから持ち込みはしていない。
俺は美納葉と夕と荷物を片手にバスを降りた。
「ついたー!」
「も☆が☆が」
「暴れるなこら」
空港行きのバスはとても静か・・・・という訳ではなく、旅行でテンションの上がった美納葉が道中暴れてうるさかった。発情した猿かこいつは?何とかシートに縛り付けて押さえ込んだのだが、運転手さんに変な目で見られた。恥ずかしい。
通路を進んで行き、集合場所に到着した。
暫くすると、六名程が集合場所に現れた。
「やぁやぁ皆の者!」
「こんにちは」
「Guten Morgen!(おはよう!)」
「Es lebe diese Begegnung.(この出会いに万歳)」
「Доброе утро(おはよう)」
「おはようございます」
おかしいな?俺の予想だったら二人ぐらいのはずなのだが・・・・?
俺が困惑していると、美納葉が猿轡と縄を引きちぎった。・・・・この旅行中、猿轡足りるかなぁ?
「・・・・ぷは・・・・・・・・おはよう!」
きな臭い空気の中、美納葉が衝撃の一言を放つ。
「遅いよ大和さん!」
今何つった?
困惑の渦中にいる俺だったが、そんな中でも一つだけ分かったことがあった。
(今回の旅行相手AIKOKU組やんけェ!?)
である。
魔法棒で殴られる気分ってこんな感じなのかなぁ、と俺は思った。
◆◇◆◇◆
石のようになっている俺に夕が耳打ちをして来た。
「・・・・ねぇ!もしかして今回の旅行相手って・・・・」
俺は綿雲みたいに霧散している意識を必死にかき集めて、夕の耳元に口を寄せた。
「・・・・多分夕の想像通りだ」
「だよね・・・・・・・・アレってさ?アレだよね?」
「ああ、アレだ」
もう言葉はいらない。
俺達の表情は既に無かった。
一方の美納葉だが、
「グアム旅行誘ってくれてありがとう!」
「喜んでもらえて嬉しいよ!」
「正直、来てくれるとは思わなかったであります」
「Du solltest an Wochentagen in der Schule sein.(平日は学校があるはずだろ?)」
「学校はお布団ですから!」
といった風に、和気藹々とAIKOKUの面々と会話をしていた。というか何でコイツはさらっとドイツ語を理解してるんだろうか・・・・?
この旅行中、AIKOKU組は美納葉に任せとこうかなぁと、甘っちょろいことを考えていると美納葉がこちらを向いた。
「千隼?夕?どうしたの?早くこっち来なよ!自己紹介とかしないと!」
俺と夕は死んだ魚の様になった顔を見合わせると、一つ頷き、一歩踏み出した。
◆◇◆◇◆
「どうも。本能寺 我炎の中してます、涼森 千隼といいます。この旅行、極力引きこもりたいです」
「旅行なのに引きこもりとはこれいかに。・・・・あ、神凪 ハマの中の人してます、下凪 夕です」
「あ、どうも!大和 ムサシと申します!」
「あきつ 隼であります」
「Schön, Sie kennenzulernen!・・・・おっとしまった・・・・初めまして!ルガー トグルだよ!」
「トグルちゃんが止まってくれて助かったぞ。バルツァー・タッフェローグだ」
「バルバヤット・トビリャーヴィチです。・・・・ごめんね?濃い連中で」
「カラーシュニコフ・アレフチーナよ!20歳過ぎたら一緒にお酒飲みましょうね?」
あれ・・・・案外まとも?
最後まで読んでいただき、感謝です!




