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幼馴染Vtuber、暴走するってよ  作者: 日陰浴
企業編

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31/159

嵐の前の配信

 私立羽瀬山高校。昼休み。

 配信が控えていたとしても、今日も今日とて学校である。

 俺は机に頭を押し付けた状態で寝ていた。

「起きろやワレェ!」

 耳元で聞き馴染みのある声が聞こえた。ついでに鼓膜が破れた。耳鳴りと鋭い痛みが流れた。

「・・・・美納葉か」

「起きとったんかワレェ!」

 人の鼓膜が破れる音は100〜140dB(デシベル)以上と言われている。

 これはジェット機が真横で離陸するくらいらしい。因みに人が聴力を失う可能性のある音量は85dBである。

 何故こいつはこの音量で発声できるのだろうか。というかクラスメイトは何故これに耐えられるのだろうか?

 そう思い、周りを見渡してみると、どうやら全員耳を押さえていた様だ。無事な様子で何よりである。

「何だ?」

「ねーねー!次の配s「はーいお口閉じましょうねー」

 学校でなんてこと口走ろうとしてやがる。

 俺は美納葉の口を塞ぎ、手足の関節を外す。そのままこいつの椅子に縛り上げた。

 俺は自分の席に戻り、腰を下ろした。

 再度突っ伏して眠ろうとしていると、前方から前の席から声が聞こえてきた。

「千隼さんや?流石に今寝るのはまずくないか?」

「・・・・野洲国(やすくに)か」

 野洲国(やすくに) 利憲(としのり)。前の席に座っている男子で、俺の数少ない"まともな"友人である。

 そいつは親指をクイと動かして、教室の入口を指す。

 その先には丁度、ドアのレールを跨いだ教師が教卓へ向かう所だった。

「黒板消してー」などと言っている教師を横目に、利憲は言った。

「もう授業始まるぜ?教科書とか用意したらどうだ?」

 机の上は勿論すっからかん。「授業?んなもん知るか」状態である。

「あー・・・・・・取りに行ってくる」

「そうしとけ。いくらうちの教師がマイペースとはいえ、注意ぐらいはされるぞ」

 むくりと鈍い動きで起き上がると、廊下にある教室後方にあるロッカーへ向かう。

 俺の席は前から三番ほどの場所にあるので、そこそこ歩く必要がある。今回みたいな時間がない時、「後ろの席だったらいいのにな」と常々思う。

 ロッカーまで向かう途中に美納葉の横を通ったが、いつの間にやらロープは解かれ、外した筈の関節は治っていた。馬鹿な。一分も経っていないぞ。

 ガチャガチャとうるさいロッカーを閉じ、席に戻る。

 机に盛大に頭を押し当てる俺に、野洲国が口を開いた。

「まぁまぁ。疲れてるのも分かるけどさ?もう金曜日だ。あと二限耐えたら土日だぞ?」

「そこが問題なんだよ・・・・」

 まもなく、授業が始まるのであった。

        ◆◇◆◇◆

 家に着き、俺は自室に戻る為に階段を登る。

 鳴子トラップをくぐり、設置する場所を変える。定期的にロープの位置を変えなければ美納葉の侵入に気付けないからだ。・・・・まぁ、そんなことした所でほとんど意味はないのだが。

 自室の鍵を閉めたことを確認すると、俺はベッドに飛び込む。

「・・・・疲れた」

 何しろ今週は忙しいのだ。死ぬ程。

 本来なら学校の課題だけで済む筈なのに、日曜日に控える企画の採点もしなければならなかった。

 企画の台本も考えなければならないし、進行方式も決めなければならない。

 俺はベッドからむくりと起き上がると、テーブルへ向かい、パソコンを立ち上げた。採点をする為である。

「何とか日曜日までは間に合いそうだ」

 ライバーの中には時間にルーズな方もいる様だが、不幸中の幸いと言った所だろう、今回のコラボ相手の方々はちゃんと期日を守ってくれた。

 コラボ相手の半数分の採点は終わった。

 俺は軽く伸びをし、パソコンを閉じる。

「・・・・それにしても」

 提出された回答用紙を思い出す。

「何故あんなに珍回答が連発されるんだ?」

 いやね?撮れ高的は100点なんだけど、教養的には(マイナス)100点の回答だらけなのよ。正直、「大丈夫かこいつら」って思ったね。

        ◆◇◆◇◆

 作業の合間に学校の課題を進めようとしていると、唐突にドアが倒れて来た。美納葉だ。今回は丁番が弾け飛んだらしい。

「配信しよーぜ!」

「また扉を壊しやがって。一体誰が修理すると思ってる」

「千隼!」

「即答するなよ・・・・はぁ。で?配信だっけ?」

「今日は金曜日だから雑談配信の日だよ!」

 俺達は常に突発的している訳では無く、一応だが日程を決めている。

 基本的には金曜日に雑談、日曜日にゲーム配信を行う。まぁ、配信内容は美納葉の気分で決まるから正直意味ないけど、大体そんな感じ。

「お前の雑談配信は雑談配信じゃないんだよなぁ」

 パソコンを起動し、配信用のアプリを開く。俺達はwebカメラを通して表情をトラッキングするという方法を取っている。他にもVRやらモーションキャプチャー器具やら色々あるが、こっちの方が値段が安いのである。学生に優しいね!やったね!

 俺は配信の段取りを済ませると、待機時間を流す。

 さて、じゃあ俺も椅子に・・・・あっ。

「扉直してないじゃん・・・・。近所迷惑確定やんけェ!?」

        ◆◇◆◇◆

      <配信が始まりました>

「ご機嫌いかが皆々様!延暦寺 小町です!」

「・・・・あ、始まった?・・・・どうもぉー!日曜日の企画のほとんどの仕事をやらされた本能寺 我炎ですー!」

「私だって仕事したもん!」

「・・・・データをコラボ相手に渡しただけだろうがー!」


『始まりました寺達のオールライトジッポ!』

『↑和訳 大丈夫さジッポライター』

『↑いつの間にそんな呼び名が?』

『今日っすね』

大和ムサシ『実包!?』

『↑こ な い で』

『なんか本能寺声遠くない?』

『本能寺声小さいぞ!』

『延暦寺はこんなに大きいのに』

『↑何を言っている延暦寺は貧乳族だろう』

『おいやめろ!焼き討ちされるぞ!』

『ひえっ・・・・平重衡(たいらのしげひら)・・・・』

『ひぇっ・・・・松永久秀・・・・』


「誰が貧相な胸だ!Cはあるもん!多分!」

「・・・・なぁ延暦寺ィー!油差しあるー?」


『会話がカオス過ぎる』

『乳の会話、かたや油差し』

『油差しってあの揚げ物の?』

『↑それはさし油』

『油差し•••機械や工具の潤滑油に使用される油を入れた容器のこと』

『本能寺は何をしとるんや』


「本能寺はねー今私が壊した丁番を直してるの!・・・・で、油差しだっけ?ないよ!」

「まじか。無くしたかな?」

「コールタールならあるけど?」

「・・・・何で持ってんの?ミイラでも作る気?」

「防腐剤じゃないよ!コレラ対策だよ!」

「お前は近代のロンドンなの?」


『あ、声近くなった』

『何でコールタールはあるんだよw』

『防腐剤w』

『コレラ対策w』

『何でだよw効果ねぇだろ!』

『↑コールタールはコレラ消毒液の石灰酸の材料なんやで』

『↑でもそれ明治の頃の話じゃね?今は経口補水液か点滴と抗生物質じゃないのか?』

『コールタールとコレラ•••近代ロンドンではコレラには煙が効くとされ、煙草が義務となっていた。また、街にはコールタール入りの樽が配置され、煙が焚かれていた。』

『ちょくちょく出て来る知識人何者だよ』


「知は力なりですぜアニキ」

「お前なんかにその言葉使われるフランシス・ベーコンが可哀想」

「んだと私は知識人だぞ!」

「知識人はドアを蹴破らないと思うの」

「特殊部隊は蹴破るじゃん!彼らは知識人じゃなかったのか!」

「お前には蹴破る理由がないだろ」

「あるもん!」

「言ってみ?怒るから」

「そこに扉があるから!」

「よし殺す」


『フランシス・ベーコン•••16、17世紀のイングランド王国の哲学者。イドラの概念、知は力なりで有名。主な著作はノヴム・オルガヌム』

『出たよ・・・・知識人ニキ』

『仕事はえーよ、ホセ』

『はえーよ、ホセ•••元ネタは遊○王のキャラクターであるプ○シドの台詞「おせーよ、ホセ」。語感が良く、「はセ」とも略される。』

『↑あんたネットミームも解説するのかよ』

『知は力なりニキこえーよ』


「なんか、凄い知識量の人がコメ欄にいるんだが?」

「いやー!私達のお陰だね!」

「どこが?」

「知識をひけらかすことのできる場所を作ってあげたんだ!感謝しな!」

「おいやめろ!ファンが減るゥ!・・・・ん?減ったらVtuber引退できる、かも?・・・・いいぞもっとやれ!」


『あかん!燃えるゥ!?』

『↑こいつらなら大丈夫』

『おいw』

『手の平返しはっや』

『草』

『手の平電動ドライバーかよ』


「あ、電動ドライバーといえば、俺が前貸したやつどうしたの?」

「ん?今ガトリング砲に改造してるよ?」

「返せ。今すぐに。お前が法の一線を越える前に」

「やだ!」

「くそ、どうすれば」


『マジかよ、犯罪者予備軍じゃん』

『頼んだ本能寺!』

『がんばえー本能寺ー!』

『↑どこぞのプリティでキュアキュアなやつやんけ』

『ガトリング砲•••「一人で大量に敵を殺せたら戦死者減るやろ!」という考えの下、医者兼発明家のリチャード・ジョーダン・ガトリング(Richard Jordan Gatling)が発明。』

『まーた出て来たよ知識人』

『あーもうめちゃくちゃだよ』


「そういえばさ!」

「どした?」

「今回のコラボでの司会、全部任せた!」

「知ってた」

「何で!?」

「薄々気付いてた。台本作ろうともしないし」


『い つ も の』

『本能寺不憫タイム』

『待ってました!本能寺不憫タイム!』

『本能寺不憫タイムがリスナーの楽しみになってて草』

『ノルマ達成』

『頑張れ♡頑張れ♡』

『台本w』

『企画の裏話など知りとうなかった』


 いつの間にかリスナーは俺が困っていると『本能寺不憫タイム』と言うようになった。マジでやめて欲しい。某バジリスクなタイムみたいにネタにしないでくれ。というかそんなに面白いか?このタイム。

 それから何度か会話の応酬が続いたが、美納葉に言語が通じるはずもなく。

 そのまま時間が過ぎて行き、ついには締めの予定の時刻となっていた。


「はい!ということで寺達のオールライトジッポ!エンディングの時間です!」

「あ、それ定着するのね?」

「今日だけだよ!」

「どっちだよ。お前は本当にいつも思考回路の株価大暴落してるな」

「いやーもっと褒めろや讃えろや足りねぇよ」

「褒めてねぇ・・・・とかそれ以前に欲望が溢れすぎだ。セルなメダル大量発生案件だよ。どこかのハッピーバースデー会長がケーキ持って出て来るぞ」

「俺が変身する‼︎!」

「懐かしいパンフレットの単語だなぁおい。2010年のライ○ーだっけ?」


『定着されちゃった!嬉しい!』

『↑おめでとう!』

『取り下げられちゃった!悲憤!』

『↑残念!あとさりげなく憤ってんの草!』

『こいつら仮○ラ○ダーネタ好きだよな』

『なっつ』


「では次回は日曜日。Vtuber学力テストで会いましょう。時間は多分昼なので。見てくれたら嬉しいです。それじゃ、まーたのー」

「またね!!!!!」

「アッ・・・・コマクヤブレタ!?」

      <配信が終わりました>

最後まで読んでいただき、感謝です!

次回はスレ話ではなく、普通の話となります。


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