締め切りはAIKOKUの始まり
どうも!作者の日陰浴です。
今回この作品の問題児、AIKOKUの配信が初めて出ます。国際問題やら戦争やら色々と読む前に覚悟が必要な奴らです。気をつけて下さい。
あと、少し補足をさせて下さい。AIKOKUが誕生した理由なんですけど、普通の配信だったはずが国際問題に発展させられて引退したVtuberが居たんですよ。そこで私、かなり印象を受けまして。その出来事から「例え国際問題だろうが自分のやりたいことを楽しめるライバー」・・・・つまりAIKOKUが誕生しました。
長くなりすみません。
皆さんは学力テストはご存じだろうか?学校でやるテストではなくて、バラエティ的な方の学力テストだ。
自分がよく知る人物がどこまで頭がいいのかをテストして楽しむというあれだ。
これはVtuber業界でも割にある企画で、業界全体からライバーを集めて行われることがある。因みにそこまで大きくなると企業が主催して行うことがほとんどだ。というか、企業が主催しないと纏まらないから基本的に企業が運営する、と思う。
個人の力で行うとしたら、せいぜい仲の良いライバーや同じ事務所に所属しているライバーだけという規模感になるだろう。
本来なら。
俺はとあるSNSアカウントが表示されているスマートフォンを見やる。
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延暦寺 小町@Vtuber・トワイライトプロダクション・ライバーズ所属
Vtuber学力テスト!開催決定!日にちは7月8日!
メンバーは彼ら!
・神凪 ハマ
・影縫 ミナト
・コメ=クエ(個人)
・アトレイア=マルーン(個人)
・景 風(個人)
・アノトガスター・ドラゴンフライ(個人)
・閑居 かむな(個人)
・大和 ムサシ(AIKOKU日本支部)
・あきつ 隼(AIKOKU日本支部)
楽しみだね!
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いつの間にかコラボが取り付けられていた。しかも企業間を跨ぐ割と大規模なものである。おかしいな・・・・?個人の力で行うことは困難な筈なんだが?????
美納葉は本当にこの人数で企画をできると思っているのだろうか?
この際、メンバーが不穏だったり、連絡をいつ取ったのかはどうでもいい。この企画をやり遂げる事の方が大切である。
そう考えていると、部屋に音もなく美納葉が入ってきた。
「部屋、鍵掛けてたよな?」
「ピッキングした!」
「玄関、鍵掛けてたよな?」
「合鍵作った!」
「おいちょっと待て詳しく教えろ」
場合によっては予備罪に問われる沙汰だと思うのだが?
「えっとね!砂型をとって・・・・」
「鋳造してね?」
え、いつそんな技術体得した?というか道具はどこで手に入れたんだ?お前は一体なんなんだ。エイリアンか何かか?
「私はエイリアンじゃないし!天才だし!」
「やっぱりエイリアンじゃないか」
心を読むなんてエイリアンそのものじゃないか。というかナチュラルに心を読むな。そしてどうして読まれた。
「私は長いこと千隼と一緒にいるからね!何考えているかなんてお見通しだ!」
「俺はお前と長いこと一緒にいるが、いまだに何を考えているかが全く分からないよ」
そしてまた心を読むな。
「ふっ、女は秘密に生きるものさ・・・・!」
「ならもっと本性を隠せよ」
「曝け出そう!全てを!」
「思考回路メトロノームかな?」
考えがブレブレなんよ。
「そういえばさー!」
美納葉が唐突に話題を変えてきた。今度は一体どんな面倒ごとを持ち込んできたのだろうか?
「学力テストの話だけどさ!」
「なんだよかった。また何かしでかしたのかと思った」
「しでかす・・・・?ああ!不良学校に喧嘩ふっかけたこと?」
「あー俺は何も聞かなかった。いいな?」
それは置いといてだ、と話を切り上げる。不良学校には後で黙祷をしておこう。可哀想に。
「で、結局なんの話?」
「えっとね!問題作ってない!」
その発言が俺の脳の中でエコーのように響く。
数秒の現実逃避の後に、俺は口を開いた。
「・・・・すみません。当日まで後十日なんですが?」
「うん!」
「少なくとも一週間前には問題を渡しておかないと駄目だと思うんですよ」
「そうだね!」
「一週間前って明日よな?」
「せやな!」
「おいお前これ企画したのいつだよ」
「27日!」
「もっと早く言いやがれ!?」
身内だけの企画だけならまだ良かったかもだが、外部とのコラボである。そう簡単に「遅れました〜」なんて言える訳もない。
そう考えていると、美納葉がまた何かを言い出した。
「あ、そうそう!問題は全部千隼が作ってね!」
衝撃の一言に、再度俺の脳がフリーズする。
「今なんて?」
「問題は全部千隼が作るんだよ!」
「Pardon?」
「問題は全部千隼が作るんだよ!」
やばい。キレそう。
枕下のエアガンに伸びる手を抑えながら、俺は問い掛ける。
「・・・・理由を。折檻はそれからだ・・・・!」
「私も問題を解くからだよ?」
さも当然のように小首を傾げる美納葉。
「・・・・ソレガ、理由カ?」
「うん」
「ソンナコトデ・・・・!」
「そうだけど何か?」
「遺言はそれだけか・・・・・・・?覚悟しろや美納葉ァァァァァァァ!!!!!」
俺は枕下のエアガンを取り出し、美納葉の顔に向けて発砲する。
弾道は直撃ルート。ものの一瞬で美納葉にはBB弾が当たる。
対する美納葉は、両足を伸ばした状態で床に座っていた。また、美納葉の腕は体の後ろで組まれていた。
そんな状態での回避は不能。
しかし、美納葉はそれに反応し、後ろに組んでいた腕を眼前に瞬時に移動、発射されたBB弾を掴み取った。
カラン、床にBB弾が落ちると同時、俺は美納葉から距離を取り、エアガンを構え直す。
美納葉は立ち上がり、そのままこちらをゆらりと向く。
両者の間に妙な緊張感が流れる。
俺は天井に向かって数発のBB弾を撃ち込み、美納葉の意識を逸らすと、部屋の入り口まで全力で走り出した。
戦闘に入る振りをして逃走をする作戦、一先ずは成功。
誰が好き好んで何教科も問題を一人で作らにゃならんのだ。そもそも、俺は企画の存在すら知らなかったんだ。手伝わなければいけない謂れはない。俺は降りるね。
そう思いながら、俺は設置してある鳴子トラップの隙間を縫うように階段を降りる。
ちらりと背後を覗いてみるが、美納葉が追いかけてくる様子はない。
少し安心しながら玄関を開けると、
「何で逃げるのー?早く問題作ってよ!」
目の前に美納葉が居た。馬鹿な。どうやって部屋を出たんだ!?そう思い上を見ると、俺の部屋の窓が割られていた。馬鹿な!?中間膜の厚みが90ミル(2.3mm)の防犯ガラスだぞ!?
本当にこいつは何なんだ。戸籍を返納して新種の生物として扱って貰った方がいいのではないのか?
半ば現実逃避のような思考で陥る。
「ねぇ早く!もーんーだーいー!」
逃げられない。それを本能的に確信した俺は、
「・・・・出すテストは三教科だけにしろ」
と交渉を持ち出すことしか出来なかった。
◆◇◆◇◆
俺は速攻でパソコンを立ち上げる。メーカーのロゴが表示される時間すら惜しい。早く休みたい。
教科は国語と英単語の混合、理科、歴史の三種。撮れ高的に数学は除かせてもらった。
某文章アプリを開き、新しい文書を作成していると、美納葉が後ろから声を掛けてきた。
「ねーねー!問題作る前にコラボ相手のアーカイブ見ようぜ!」
「馬鹿ですか?時間ないんだよ?」
「いやさー、コラボ相手のこと知っておいた方が問題作りやすくない?」
「それは俺も少し考えたけどさ?この人数のアーカイブを見るなんて正直一日じゃ無理だろ」
「でもAIKOKUのメンバーは同じ事務所だからコラボしてるアーカイブがあると思うよ?」
「ほかの面々は?提案するぐらいならアイデアあるんだろ?」
「全員見る!」
「知能指数どこいった」
「変化なし!」
「嘘つけ。明らかに脳筋になっただろ。・・・・というか、配信の特徴を見るだけなら切り抜きっていう手もあるだろ」
切り抜き。Vtuberの配信の見所を配信後に切り抜いたものである。そのライバーのファンが作る非公式なものから、企業の社員などが作成する公式なものまであり、配信を見逃した人や時間がない人にとって重宝される。
元はラジオ配信や生放送を視聴者が切り抜いたものが始まりだった気がする。
顔出し配信者にも切り抜きという概念はあるが、個人的にVtuberの方が盛んな印象がある。
最近ではこの切り抜き、手軽で多くの人に見てもらえることから新規の方を集めることができ、中々侮れないものとなりつつある。かくいう俺たちの配信も、何度か切り抜かれていて集客の一つの指標となっており、正直有難い。
俺の提案を聞いた美納葉はイマイチ納得がいかない様子だった。
「切り抜きには当たり外れがあるからなぁ・・・・」
「ああ・・・・明らかに収益目当てのやつとかあるもんな」
「そうそう!無編集のやつ!」
「まぁ切り抜きはある意味一種の無断転載だし、そういう輩がいるのは仕方ない」
そこの所賢い人は自分で公式の切り抜き師とやらを募集するらしいが。
まぁ俺はやらないけどな。そんなの雇ってしまったらVtuberを辞めるに辞められないじゃないか。俺は"どれだけ楽に引退できるのか"を常に考えているのだ。
その後結局、美納葉の圧(拳)に負け、俺はコラボ相手の一番新しいアーカイブを見ることになった。
◆◇◆◇◆
<アーカイブが再生されました>
配信画面が開かれる。
程なくして、海軍の第二種軍装を現代風にした様な姿の女性と、白襷隊の姿をした男性が現れた。
前者が大和 ムサシ、後者があきつ 隼である。
「ニイタカヤマノボレ!やぁやぁ諸君!大和魂は猛っているか?大和 ムサシだ!」
「臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます。AIKOKU大日本帝国支部所属のあきつ 隼であります。今日は同じ大日本帝国支部でのコラボです」
『ニイタカヤマノボレ!』
『!レボノマヤカタイニ』
『!レボノマヤカタイニ』
『Ich bin gekommen, um es mir anzusehen(視聴しに来ました)』
『日本果然應該滅亡(日本はやはり滅ぶべきだ)』
『忘記南京事件了嗎(南京事件を忘れたのか)』
『↑南京での虐殺は誤情報であろう。皇軍が殲滅したのは貴様らの卑劣な便衣兵である』
『독도는 우리 영토(独島は我が領土だ)』
『一端のVtuberのコメント欄に書くところから底が知れてる』
『怒涛の中国語と韓国語で草』
『lol』
「うん!いつも通りだな!」
「そうですね」
「ところで先程『コラボ』と言ったな?敵性言語ではないか?」
「婦人会が勝手に言ってるだけでしょう。それに海軍学校では英語を教えていたのでは?」
「試しただけだ。しかしながら現在のフェミニストといい婦人会といい、厄介な事ばかり!そう思わないか?」
「全くです」
『婦人会w』
『流石はムサシ殿。現在の不甲斐無いこの国を憂ているのですね。どうでしょう?一つこの國を変えませんか?』
「国を変えるか・・・・そう思い足掻き、国を変えた者がこの歴史でどれほど居ただろう?私の様な小さなものが変えられるものなど少ないのだよ」
「まぁ、それは同意します。我々が幾ら声を発しようと、止められぬものがあります。だからといって強気に出たとて、新たな諍いを生むだけです」
「うむ。強気に出た連中というのは関東軍の馬鹿どもとかがその最たる例だな。所で今日の配信はFPSゲームをするんだったな」
「はい。私のお気に入りのゲームでして「歴史上の戦いが忠実再現されているだったな?」
「・・・・まさか被せられるとは」
「もう五十回はこれを聞いたからな!」
『ここ数少ないAIKOKUのまともポイント』
『なんなのこの配信・・・・?』
『!え囲え囲!か殿規新↑』
『↑先ずはムサシ嬢の硫黄島解説を視聴することお勧めする』
『↑いやいやあきつ殿の実写実銃解説だろう』
『↑ Die Lieferung von Miss Toggle ist auch interessant!(トグル嬢の配信も面白いぞ!)』
『↑ Я рекомендую вечернюю доставку напитков Алефтины(アレフチーナの晩酌配信はお勧めだぞ!)』
『あ、うん・・・・』
『新規殿が引いておるではないか!』
『そうだぞ!自重しなさい!』
『↑草』
『lol』
「では始めて行こうか?」
「そうですね。まずは『ガダルカナル島』ステージでいきましょうか」
「・・・・それ玉砕しない?物資足りてる?」
「ドラム缶輸送すれば大丈夫ですよ!」
「そのドラム缶、戦闘機に狙われそう」
ゲーム画面が配信画面に投影されると、あきつ 隼が嬉々とした声を上げた。
「見て下さい!この三八式実包のグラフィック!ディティールが素晴らしいですね!」
「この様に戦争を遊戯まで昇華させる時代が来たのだな・・・・感慨深いものを感じるな」
『着眼点が怖いのだが・・・・?』
『流石はトリガーハッピーの異名を持つお方』
『この人達、本当に戦争経験してそうで怖い』
『↑流石にないぞ。両方23歳らしいからな』
『↑うせやろ!?』
少しずつ、思想的に普通な視聴者が入ってくる。その間にも、彼女らの配信は続いていく。
「はい。弾丸がなくなったので、味方の死体から銃を剥ぎ取ります」
「倫理観・・・・と言いたい所だけど、悲しいかな。これ戦争なんだよね」
「皇国の神銃でアメリカを抹殺します」
「大丈夫?相手多分ガーランドよ?連射くるよ?」
「ガーランドは弾切れの際にクリップが音を鳴らすから大丈夫」
「それ敵も弾切れと分かるから。援護射撃されると思うんだけど?」
「ヨシ。ヘッドショット」
「サラッと一人仕留めてる・・・・」
「あ、あそこに動けない味方兵が」
「可哀想に今楽にしてやろう」
「蒙古襲来時の鎌倉武士団みたいなこと言うじゃん」
「そうこう言っている内に味方の元に着きましたよ、大和さん」
「ワシらが来たけん、もう安心バイ」
「十日もたたないうちに同じ姿にならないといいですね。あと流石に不謹慎」
「申し訳ない」
「ヒャッハー!キツツキは最高だぜー!」
「君ほんとに銃持つと性格が変わるよね」
「撃ってみな?飛ぶぞ?」
「首が?」
「おっ味方がいるではないか!」
「立って動けるな!あと30日!」
「流れる様に余命宣告をするのはやめなされやめなされ」
「試合が終わったみたいだね」
「次は・・・・硫黄島かな!」
「流れる様に激戦区を選ぶのは悪癖だと思うよあきつくん」
「大和さんだって歴史解説の時の思想の強さは悪癖だと思います」
「まぁ、お互いそれが売りどころだからな!」
といった形で配信は進行していった。
その後、計六試合程した頃に締めに入った。
「はい。ということで今回はあきつ君が絶賛しているFPSゲームをしたぞ!」
「いやー・・・・やはり銃はいいですね・・・・!」
『しみじみととんでもないことを言っているのだが・・・・?』
『いつも通りの濃さでした!』
『この人達に日本の代表になって貰いたい』
『そういえば、最初の中国・韓国のアンチはどこ行った?』
『↑毎回最初に同じコメントをしていくだけやで』
『今回はどちらかというと"戦跡を辿る"的な感じだった』
『Vielen Dank für Ihre harte Arbeit! Ich habe viel über die japanische Geschichte gelernt!(お疲れ様でした!日本史の勉強になりました!)』
『今回は割と普通の配信だったな』
『↑普通の配信者はFPS中に共産党を批判したりしないと思うんだ』
『引用"奴らに政は分からぬ"』
『↑おいやめろ』
「そろそろ終わりましょうか」
「うんうん!では次回の配信でも会おう!トラトラトラ!」
<アーカイブは終わりました>
◆◇◆◇◆
俺はAIKOKU日本支部の配信を見た後、スマートフォンの電源を落とした。
俺は目の前で両手を組むと、叫んだ。
「全然参考にならん!?」
何でだ!?何故こうも扱いに困るVtuberとコラボをしようと思ったんだ美納葉ァ!?
リアル志向のFPSで史実を解説するだけならまだしも、何故コメント欄で国際問題が起こっている?訳がわからないよ。
もうなんだろ、普通に問題を作りたいわ。こんなやべー奴らに合わせて問題を作ったら、自分でもドン引くような問題ができそうで怖い。
その他にも色々ツッコミたいことはあったが、余りにもそれが多すぎて混乱するという意味の分からない状況に陥った。
頭を抱える俺に、美納葉が声を掛ける。
「参考になったね!」
「どこが?」
「じゃあ次の人のアーカイブを見ようか!」
「おい待て!俺は普通に問題を作りt「じゃあサムネイルポチィ!」
正直、もう配信は見ずに問題を作りたかった俺だったが、美納葉によって強引に動画を再生させられた。
結局、その後も何名の配信を見ることとなり、問題が完成したのは夜が明けてからだった。
因みに美納葉はアーカイブを見たら早々に帰った。糞が。
最後まで読んでいただき、感謝です!
弁明をさせて下さい。今回の話でかなり過激な事を書きましたが、作者がそんな思想な訳ではありません。私は平和主義です。ご了承下さい。




