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幼馴染Vtuber、暴走するってよ  作者: 日陰浴
企業編

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24/159

門出と影の覚悟

投稿が遅くなってしまい、申し訳ありません。理由と致しましては新学期の課題考査でばたついてしまったことが挙げられます。

 会議室の中。

「揃いましたね。・・・・それでは話を始めましょうか」

 マネージャーさんが頷く。

 室内には頭上から薔薇の花が降り注ぐ人、ガタガタ怯える少年、猿轡を嚙まされた少女がいる。

 カオスである。

 そして廊下には人としての何かを失った女性がいる。

 改めて言おう。カオスである。

 そんな中、少年がおずおずと手を挙げた。

「あの・・・・とりあえず自己紹介しません?」

「そうですね。皆さん誰が誰か分からないと思いますし」

 マネージャーさんは鷹揚と頷くと、視線で「なんか喋れ」と俺達に促して来た。

 美納葉の方を見やると、「んー(お前がやれ)」と言って来た。

 ええ〜・・・・俺から?

「・・・・はい。どうも、個人Vtuber本能寺 我炎をさせてもらってます。涼森 千隼と申します。あ、横にいる猿轡の生物は延暦寺 小町をやっている天野宮 美納葉です」

「はい。分かりました。では次の方」 

「え、猿轡はスルーなの?」

「早く」

「あ、はい」

 サラッと流すマネージャーさんにツッコミを入れた少年は、あえなく撃沈した。

 少年は席を立つと、口を開く。

「あ、えーと・・・・。影縫 ミナトの中の人をやってました」

「「はい?(んー?)」」

 衝撃が俺達二人に走った。

 まさかこんな少年が影縫だとは思わなかったからだ。

 少年を凝視していると、彼は困惑したような表情を浮かべる。

「な、なんだよ?」

「・・・・ぷは、こんなショタとは思わなかった」

「あ、お前いつの間に」

 美納葉が猿轡を噛みちぎっていた。コイツいつもそんな力技で抜け出していたのか。どうりで毎回布が破けている訳だ。今度から丈夫な布を買おう。ケブラーとかどうかな?

「ショタじゃない!立派な成人男性28歳だ!」

「「「「え、合法ショタ!?」」」」

「そんな皆さん声を揃えなくても!?というか、山田 太郎さんもですか!?」

「いやー・・・・まさか歳上とは思わなかったからさ」

 山田 太郎が頭の後ろを掻きながらにへらと笑った。

「あ、因みに僕も27歳なのでここでは影縫さんが最年長ですね」

 そうマネージャーさんが言うと、影縫が目をひん剥きながら叫んだ。

「嘘ォ!?」

 それもそのはず、マネージャーさんは30代ぐらいの外見をしているのだから。 

「まぁまぁ、若々しくていいじゃないですか。私なんて近所の子供にジジイって呼ばれてるんですから。あ、皆山 柳と申します」

 そんな年齢トークから会議は始まった。

        ◆◇◆◇◆

「えー、皆さんを今日呼んだのは理由があります」

「理由がなきゃ呼ばないよね普通」

「黙っとけ美納葉」

「はいそこ少し静かにして下さい」

「すみません。丁度今替えの猿轡がないんですよ」

「そういうことじゃないです」

「なんなのこの人達」

 鞄の中を漁ったが、そこに長年の相棒である猿轡の姿は無く、現在の美納葉を止める術は無くなった。

「まぁいいです」

「いいんだ」

 皆山さんは一つ咳払いをすると、話を元の路線へ戻した。

「貴方達には今回の件で責任を取ってもらうために呼びました」

「責任・・・・ですか」

「はい、責任です。今回の一件で我々はかなり炎上しており、大きな迷惑を被っています。具体的には、今回の炎上を抑えるために、ライバーズに所属している配信者の全員の活動を休止させる処置を取っているのですが、それにより各ライバーの収益が大幅にに落ち込んでいます」

 今回、ライバーズの配信者全員が影縫の配信に登場したというのは業界全体に激震を走らせた。やはり、全配信者の敵という扱いだった影縫と業界大手のライバーズとの間に関係があったのは、話題性が高かったのだろう。

 また、今回の一件では影縫に同情する意見や、やや過激に反発する意見など、賛否両論であった。

「なので、皆さんには我がトワイライトプロダクション ライバーズに所属していただきます」

「急に知能落ちたな」

「わーい!」

 大丈夫?脈絡が異世界転生してない?というか『なので』はどこから来た。

「仕方ないんですよ。配信が出来ないことに不満を持ったメンバーが全員ストライキを起こしたのですから」

 死んだ魚のような空気を纏った皆山さんは濁った瞳で横にいる山田 太郎を見やる。

「あはは。いやーたかが無断コラボで謹慎させられるなんて納得がいかないなぁ!あとコラボした相手が活動しているのも納得がいかないなぁ!こうなったら事務所に入ってもらって、一緒に謹慎してもらうしかないなぁ!そうしないと辞めちゃうかもなぁ!」

「少女漫画スマイルでなんてことを言ってんだこの人」

 軽く引いている俺に対して、皆山さんが補足するように言った。

「ライバー全員がこう発言しておりまして。・・・・今後事務所の独立を考えているの思うとここでライバーを失うのは痛すぎると言いますか・・・・・・・・つまりはい。そういうことです」

「あー・・・・胸中お察しします」

 ニコ、と力のない笑顔が全てを物語っていた。

 は、儚い・・・・。

        ◆◇◆◇◆

「ということで、(ライバーズ)と契約して企業Vtuberになってよ!」

「死亡フラグを感じるんだが」

「な゛っ゛ て゛よ゛ !」

「強い強い圧が強い」

 こえーよ、ホセ。そんなキュ◯ベイやだよ。それに某太陽の子もびっくりの濁点だよ。ゆ゛る゛さ゛ん゛!!

 そんなしょうもないことを思いつつ、俺は"もし企業に入ったら"を端倪(たんげい)する。

 正直、企業に入るのは反対だ。勿論、感情的に言っている訳ではなく、ちゃんと理由がある。

 その中の一つがお金だ。企業として活動するとなればお金が発生するだろう。現在、俺達は収益化をしていない。

 理由は2つある。一つは収益化をするというのはつまり、Vtuberでの活動を"仕事"にするということだからだ。お金を貰って"働く"のだ、それ相応のものを視聴者に届けなければならない。もう一つは税金関係が面倒だからだ。一高校生が行うには些か荷が重い。けれどこれはさほど問題ではない。企業ならこれらの作業は不用となるからだ。

 話が逸れた。一旦本題に戻そう。

 俺が危惧しているのは一度企業に入ってしまったら後戻りは出来ないということだ。興味の移り変わりの激しい美納葉のことだ、きっと「飽きた!」とか言い出すだろう。

 もし仮に俺達がライバーズに入ったとしよう。企業Vtuberなのだから迂闊なことは出来ない。更に、企業コンプライアンスやら何やらで、今までのように好き勝手行うことも出来なくなる。それはひたすらに自由人な美納葉にとって足枷のようなものだろう。

 俺は重い口を開ける。

「えーと、誠に光栄ではありますが今回は辞退を「やる!」

「ファッ!?」

 即断即決しやがった。

 恐る恐る山田 太郎の方を向くと、鬼の首取ったりと不敵に笑っていた。

 彼の隣の皆山さんは淡々とした様子で書類を茶封筒から取り出していた。

「分かりました。ではこの契約書に署名を」

「分かった!」

 速攻でペンを取り名前を書く美納葉。

 こうなったらもう誰にも止められない。昔からそうなのだ。やろうと思ったらすぐにする。

 俺はため息を一つ吐くと、美納葉に確認をする。

「最後まで投げ出さないか?」

「うん!当たり前だろ!」

「本当に理解しているのかは怪しいところだが・・・・分かった」

 俺もペンを取ると自分の名前を記入する。

 

 かくして、俺と美納葉がライバーズの仲間になった。

        ◆◇◆◇◆

「影縫さんはどうですか?」

 皆山さんが俺と美納葉から目を逸らし、影縫の方を向いた。

 影縫は自分に言われていたとは毛ほども思ってなかったのか、ひどく驚いた様子だった。

「え、俺?」

「勿論です。我々は貴方にもライバーズに来てもらいたい」

「俺、てっきりそこの二人だけに言ったのかと思ってました」

「どちらかと言うと貴方の方がメインですね。実は貴方が入院してからも我が社では貴方を起用したいという意見が多く出まして。貴方が個人でデビューしたと気付いた時は『・・・・しまった!遅かったか!』と歯軋りしたものですよ」

 皆山さんがそこまで言うと、影縫がおずおずと口を開いた。

「あの、」

「何ですか?」

「俺、結構やばいことしましたよ?」

「しましたね」

「訴えられてもおかしくないですよ?」

「ですね」

「じゃあ、」

 影縫は勢いを付け、自分を否定する言葉を吐こうとする。

 が、

「ですが、それが何ですか?」

 皆山さんがそれを塞ぐ。

「全ての元凶は我々ですし、貴方がリーク系になったのも貴方の責任ではないでしょう」

「いや、ライバーズさんは何も悪くは・・・・」

 尚も食い下がる影縫に、皆山さんはため息を吐いた。

「・・・・まだ言いますか。貴方は卑屈過ぎる。もっと堂々としなさい」

「え、あ、はい」

「貴方が悪質な行動をしたのは確かだ。しかし、我々はそれを踏まえて貴方をスカウトしている。・・・・どうか、我々の手を取ってはくれないだろうか。それとも、我々では不満だろうか」

 神妙な面持ちで影縫を見つめる皆山さんと山田 太郎。

 影縫は蒼白で、汗がスゥと頬を伝った。泳ぐように瞳が回っている。


 ぽたり。


 場に一雫の静寂が零れる。


 影縫はひどく歪に縁取られた表情をした。

「・・・・俺なんかでいいんですか?」

「はい。貴方が必要なんです」

 先程まで逸らされていた瞳が正面を向いた。

 影縫の手が静かに伸び、ペンを握る。

 ぎこちない動きではあったが、確かにペンは契約書に軌跡を描いていた。

 ペンが机に置かれる。


「これから、よろしくお願いします」

 影縫 ミナトの新たな門出の瞬間であった。

        ◆◇◆◇◆

 帰路、俺達三人は共に歩いていた。

 街路樹が頭上でゆったりと過ぎ去る。

「影縫くん、本当に良かったのか?」

 俺は少し前を歩く彼に問い掛ける。

 影縫は両手を後頭部に当てるといった気の抜けた姿のまま言った。

「ん?何のこと?」

「・・・・名前のことだよ」

「ああ、それ?そうだなー・・・・気にしてない、と言ったら嘘になると思う」

 頭の裏を掻きながらにへらと笑う彼は、どこか吹っ切れた様な雰囲気があった。

 俺が何故こんなことを聞いたのか、それは少し理由がある。

 俺達がデビューする際のVtuber名を決める会話があったのだ。

 結論から言うと、俺達はそのままの名前、モデルでのデビューが決まった。急遽新しいモデルの用意が不可能だからだ。

 幸い、ライバーズは2Dモデルが主流の企業だったので話はスムーズに進んだ。

 けれど問題はここからだった。そう。影縫 ミナトはそう簡単にはいかなかったのだ。

そんな時、彼は言った。

『どうせいつかバレて炎上するし、今の名前でいきます』

 彼は"影縫 ミナト"として生きていくことを決めたのだ。


「これから大変だよ?」

「いいさ」

 影縫は俺の方を振り向くと、くしゃりとした笑みを浮かべた。

「俺が悪事を働いたは本当だし、これは背負ってくべき物だから」

「影縫くんは、すげえな」

「どーも。・・・・なぁ今の会話めっちゃラノベみたいじゃない?」

「おーおー台無しィ。雰囲気ファイアトルネードしてるゥ」

 いきなり雰囲気がシリアスからほんわかしたな。

「ま、これから悪堕ちVtuberの逆転劇が始まるのだ!むしろやり甲斐しかないだろ!一回死にかけた男の力見せてやるぜ!」

 ぐっ、と力強くサムズアップをする影縫。・・・・うーむ正直、見た目がショタだからか背伸びしている子供にしか見えん。

「・・・・ここがイケメンなら絵になったんだろうなぁ」

「あ゛!?今なんて言った!?」

「おっとしまった本音が漏れた」

 小さな歩道から大きな空に声が響いた。

        ◆◇◆◇◆

 余談。

「あ、定期忘れた」

 駅の前で鞄を漁ると、そこには普段あるはずの交通系ICカードが見当たらなかった。どうやら事務所で猿轡を出した際に落としたみたいだ。

「んー?まだ時間に余裕もあるし取りに行ったらどうだ?俺は待ってるぞ?」

「そうですね。ちょっと行ってきます。あ、美納葉のこと頼みます。もし困ったら猿轡を噛ませたら大体何とかなるんで」

 影縫さんがそう言ってくれたので、俺は事務所に向かうことにした。

 幸い事務所は駅から徒歩数分の距離なので、すぐに着くことができた。

 磨りガラスの自動ドアが開く。

 すると、

「ウェヒヒアベヌッチョンカナヒラヒエルナザザバラマナガヂッヅババナヤワラカナヌモキャッサンポコォナリナキェェェサラヌパシポラポナパガザアラナタシダナガウヌエポポポォォォォッ!!!!!」

「くそっ!正気に戻らない!おいそこ!左足を抑えろ!」

「分かった!右もやばそうだ!早く!」

「誰かエナジードリンクを!それを掛ければ何とかなります!」

「何言ってんだ皆山さぁん!?このエナドリ狂め!?」

「主の名の元に!貴様の名を言え!言え!」

「ウェヌッジョンアギエエェェ!!!!!」

「強情な!」

「かんじーざいぼーさつ ぎょうじんはんにゃーはーらーみーたーじー。しょうけんごーうん かいくう。どいっさいくやく・・・・」

「祓え給い、清め給え、神ながら、 守り給い、幸せ給え・・・・」

「元柱固具、八隅八気、五陽五神、陽動二衝厳神、害気を攘払し、四柱神を鎮護し、五神開衢、悪鬼を逐い、奇動霊光四隅に衝徹し、元柱固具、安鎮を得んことを、慎みて五陽霊神に願い奉る・・・・!」


 俺は振り向いて、元来た道を歩き始めた。

 なんか悪魔祓い的な場面が繰り広げられてた。本当に現実世界なのだろうか。


 一方その頃。

「助けて千隼くん!?この子ダンボール食べようとしてるゥ!?路上生活者さんのお家食べようとしてるゥ!?助けて!?」

「うまうま」

「いやァァァァァァァ!?ばっちい!?ほらぺっしなさいぺっ!」

「うまうま」

「もう駄目だ!おしまいだぁ!・・・・そうだ!猿轡!って使い方分かるかァァァァ!」

 現代日本の何処に猿轡の使い方を熟知した一般人がいるのだ、と影縫は思いながら頭を抱えるのだっだ。

最後まで読んでいただき、感謝です!

窓口の女性の謎言語は本来は半角です。なろうでは半角が全角になるんや・・・・。

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